ウェルビーイングに取り組むメリット
ウェルビーイングの実現に取り組むと、企業にはさまざまなメリットが発生する。その中でも経営者が押さえたい3つのメリットを解説しよう。
離職率低下や定着率アップにつながる
ウェルビーイングが実現されると、従業員はストレスフリーな状況で働けるようになる。つまり、会社に対する不安が薄れるため、ウェルビーイングは「離職率低下」や「定着率アップ」につながりやすい。
この効果を高めるには、従業員ひとり一人の不調をすぐに察知することがポイントになる。特に精神的な不調は気づきにくく、不満として周りに広がるリスクもあるので、日頃から強く意識することが重要だ。
生産性がアップする
従業員のモチベーション向上によって生産性がアップする点も、ウェルビーイングに取り組むメリットである。
施策を進めるためにはコストや手間がかかるものの、ウェルビーイングが実現されれば労働環境が改善される。その結果、やりがいや働きやすさを感じる従業員が増えるので、最終的には生産性のアップひいては大きな利益につながるはずだ。
優秀な人材を確保できる
すでにウェルビーイングは多方面から注目されているため、積極的な企業がメディアから評価されるケースも多い。「働きがいのある企業ランキング」や「ホワイト企業ランキング」などは、分かりやすい例と言えるだろう。
このような形で外部から評価されれば、入社に興味をもつ求職者や転職希望者が増加する。つまり、優秀な人材が集まりやすくなるので、ウェルビーイングは人材確保力の強化策になる。
ウェルビーイングの取り組み方や手法
ウェルビーイングにはさまざまな手法があり、企業によって取り組み方には違いがある。ここからは具体例を交えて、ウェルビーイングの基本的な手法を紹介する。
【STEP1】従業員が自身の不調に気づける制度を導入する
いくら注視していても、外見から他人の健康状態を判断することは難しいだろう。本人でなければ気づけない不調もあるので、ウェルビーイングは以下のような制度を導入するところから始めたい。
○従業員自身で不調に気づける制度(例)
・全社的な健康診断
・人間ドックや歯科検診などの補助制度
・予防接種の補助制度
精神的な不調をチェックする制度としては、従業員50人以上の事業所において「ストレスチェック」が義務付けられている。ストレスチェックは厚生労働省が推奨する「職業性ストレス調査票」を活用できるため、手間やコストをかけずに導入することが可能だ。
もちろん、条件を満たさなくても実施は自由なので、これを機に導入を検討してみよう。
【STEP2】労働環境の見直しと改善
必要な制度を導入したら、次は現場などの労働環境を見直そう。このプロセスでは業務内容や労働時間のほか、業務に使用するツールや環境、雰囲気などの改善も意識したい。
○労働環境の改善方法(例)
・残業や長時間労働を減らす
・休憩時間を増やす
・パソコンやタブレットを新しいものにする
・休憩専用のスペースをつくる
・外の景色が見えるデスク配置にする など
業務内容によっては、テレワークやリモートワークの導入も効果的な施策になる。ただし、自宅での業務にストレスを感じる人材もいるため、導入前には従業員の意思を確認することが重要だ。
業務環境は従業員のモチベーションにも関わるため、これを機に徹底した見直しや改善を実施しよう。
【STEP3】コミュニケーションの円滑化
従業員のストレスは、上司と部下の関係性によっても変わってくる。業務に最適なツールがそろっていても、部下が自由に発言できない環境や、上司から仕事を押し付けられる環境ではストレスが溜まってしまう。
そのため、社内の人間関係を整理し、コミュニケーションを円滑化させる施策も必要になる。
○コミュニケーションを円滑化させる施策(例)
・オープンスペースや休憩スペースの設置
・1on1ミーティングを開催する
・メンター制度を導入する
・シャッフル形式の食事会を開催する など
また、上記のような施策に取り組んでも、すべての従業員が気軽に相談できるわけではない。自分から話しかけることをためらう人材も存在するため、経営者や上司側から話しかけることを意識しよう。
【STEP4】福利厚生の充実
福利厚生の充実も、ウェルビーイングの実現に役立つ施策だ。福利厚生にはさまざまなものがあるため、うまく活用すれば従業員のプライベートまでフォローできる。
ただし、福利厚生の種類が多すぎるとコストだけではなく、担当部門の業務負担も増えてしまう。その結果、労働環境が悪化してしまう恐れもあるため、新たな福利厚生の導入は慎重に検討したい。
【STEP5】実施状況のデータ化
ここまでの施策をすべて実施しても、確実に効果が表れるとは限らない。方向性を誤るリスクもあるので、ウェルビーイングの実施状況はすべてデータ化することが重要だ。
○実施状況をデータ化する方法
・社内の人間で評価し合う
・従業員にアンケートを取る
・健康診断やストレスチェックの結果を活用する
もともと、ウェルビーイング関連の施策は成果が分かりにくい傾向にある。従業員を観察する方法では、経営者や上司の主観が入り込んでしまうため、明確な実施データをまとめることが望ましい。
また、実施状況をデータ化した後には、課題の洗い出しやブラッシュアップも忘れないようにしよう。