この記事は2022年10月20日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「貿易統計22年9月-7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.3%程度のマイナスに身」を一部編集し、転載したものです。

貿易統計
(画像=Mulin/stock.adobe.com)

目次

  1. 年率20兆円台の貿易赤字(季節調整値)が続く
  2. 輸出は低迷が続く見込み
  3. 7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.3%程度のマイナスに

年率20兆円台の貿易赤字(季節調整値)が続く

財務省が10月20日に公表した貿易統計によると、22年9月の貿易収支は▲20,940億円の赤字となり、赤字幅はほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲21,673億円、当社予想は▲22,681億円)通りの結果となった。輸出が前年比28.9%と8月の同22.0%から伸びを高めたが、原油高、円安の影響で輸入が前年比45.9%(8月:同49.9%)と輸出を大きく上回る伸びを続けたため、貿易収支は前年に比べ▲14,571億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比3.7%(8月:同▲1.1%)、輸出価格が前年比24.3%(8月:同23.4%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲1.8%(8月:同2.8%)、輸入価格が前年比48.6%(5月:同45.9%)であった。

貿易統計2022年9月
(画像=ニッセイ基礎研究所)
貿易統計2022年9月
(画像=ニッセイ基礎研究所)

季節調整済の貿易収支は▲20,098億円と16ヵ月連続の赤字となったが、8月の▲23,378億円からは赤字幅が縮小した。輸出が前月比3.2%と2ヵ月ぶりに増加する一方、輸入が同▲0.6%と9ヵ月ぶりに減少に転じた。貿易収支(季節調整値)は22年5月以降、5ヵ月連続で年率▲20兆円台の大幅赤字となっている。

9月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=111.0ドル(当研究所による試算値)と、8月の112.7ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は、90ドル程度で推移しているが、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金を含めた通関ベースの原油価格は100ドル前後となること、ここにきて円安が急進していることから、円ベースの原油の輸入金額は高止まりすることが見込まれる。

貿易統計2022年9月
(画像=ニッセイ基礎研究所)

貿易赤字のピークは22年夏場となる可能性が高いが、輸入価格の高止まりが続くこと、海外経済の減速を背景に輸出が数量ベースで低迷することが見込まれることから、貿易収支は当面大幅な赤字が続くことが予想される。

輸出は低迷が続く見込み

22年9月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比17.9%(8月:同10.5%)、EU向けが前年比11.2%(8月:同▲1.5%)、アジア向けが前年比▲2.5%(8月:同▲4.0%)、うち中国向けが前年比▲7.8%(8月:同▲9.1%)となった。米国向けの伸びが高いのは、21年夏場に供給制約に伴う自動車の落ち込みを主因として急速に落ち込んだ裏が出ているためである。

22年7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲3.9%(4-6月期:同6.9%)、EU向けが前期比2.9%(4-6月期:同1.2%)、アジア向けが前期比▲0.6%(4-6月期:同▲0.4%)、うち中国向けが前期比5.3%(4-6月期:同▲10.2%)、全体では前期比0.6%(4-6月期:同▲0.7%)となった。

貿易統計2022年9月
(画像=ニッセイ基礎研究所)

EU向けは堅調を維持しているが、ロックダウンの影響が和らいだ中国向けは持ち直しているものの、ゼロコロナ政策継続の影響もあってそのペースは緩やかにとどまっており、景気が減速している米国向けは弱めの動きとなっている。輸出数量全体としては一進一退の動きが続いている。

先行きの輸出は、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。

7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.3%程度のマイナスに

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、22年7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比2%台前半の増加、輸入が前期比3%台半ばの増加となった。財は輸出入が同程度の伸びとなったが、サービスは輸入の伸びが輸出の伸びを大きく上回った。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.3%(4-6月期:同0.1%)のマイナスとなることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、10/31のweeklyエコノミストレターで22年7-9月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需は成長率を押し下げるものの、高水準の企業収益を背景に設備投資が高い伸びとなることなどから国内需要が増加し、前期比年率1%程度のプラス成長を予想している。


(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
消費者物価上昇率は約30年ぶりの3% ―― 当時と大きく異なる物価上昇の中身
鉱工業生産22年8月 ―― 7-9月期は大幅増産へ
雇用関連統計22年8月 ―― 対面型サービス業を中心に新規求人数の大幅増加が続く
消費者物価(全国22年8月) ―― コアCPI上昇率は10月に3%へ
2022・2023年度経済見通し ―― 22年4-6月期GDP2次速報後改定