2022年の超円安相場は、FX投資家ではなくても広く知られていることです。数十年に一度あるかどうかの極端な相場だけに、FXの世界ではロスカットによって「退場者」が続出。阿鼻叫喚の様相を呈しています。

ベテラン投資家であっても大きな損切りを余儀なくされている話がSNSなどで散見される中、「退場」になってしまうのは極端な相場展開だけでなく、投資家自身のリスク管理の甘さも原因のひとつです。FXはレバレッジを効かせられるのがメリットのひとつですが、極端な相場に捕まってしまうとレバレッジが牙をむき、一発退場になってしまうこともあります。

FXだけでなくCFDや先物取引など、レバレッジを効かせられる投資商品は他にもあります。このFXの出来事を教訓とするためにも、今一度レバレッジの仕組みと正しいリスク管理について解説します。

2022年の超円安相場で退場者が続出した理由

【FX】超円安相場で退場者続出!今一度確認しておきたいレバレッジ投資のリスク
(画像=NaypongStudio/stock.adobe.com)

2022年の超円安相場では、1ドルが149円台を付ける局面もありました(2022年10月18日時点)。これが約32年ぶりの水準として大々的に報じられたため、FX投資をしていない人であっても目に留まったのではないでしょうか。

この極端な相場では、ドル売りのポジションを持っている投資家が大きな含み損で苦しんでいます。1万通貨分のポジションを持っている場合、ドル円が1円高くなるごとに含み損が1万円拡大します。10万通貨分を持っている人であれば、1円の円安で10万円も含み損が拡大してしまいます。

100万円でFX投資を始めた人が「さすがにもうドル円は高すぎだろう」と思って売りポジションを保有するのは、それほど不思議なことではありません。何せ32年ぶりのことなのですから、この異常事態は収束するだろうという考えです。

しかしこの人が1ドル=140円の時に10ロット(10万通貨分)のドル円売りポジションを保有すると、144.23円になった時点でロスカット(資金が枯渇して強制的にポジションを決済されること)になります。この計算方法については次項で解説しますが、この想定事例は決して極端な架空の出来事ではなく、これに似たトレードをしてロスカットになってしまった人は実際に多く存在するでしょう。

レバレッジの仕組みをおさらい

国内FXでは最大25倍までのレバレッジを効かせることができます。これはつまり、実際の運用額に対して25分の1の資金(証拠金)があればポジションを建て、トレードができるということです。

ドル円が145円の時に1万通貨分のポジションを保有しようと思うと本来は145万円が必要になりますが、25倍のレバレッジを効かせるのであれば25分の1の証拠金があればよいので、5万8,000円です。

もしドル円の売りポジションを建てた後で145円から144円になったら、1万円の利益です。5万8,000円を投じて1万円の利益を得ることができるのですから、とても投資効率が高いことがお分かりいただけると思います。これが、レバレッジを効かせたFX投資の魅力です。

相場が思惑どおりの方向に進めば含み益となるためロスカットの危険はないのですが、問題は相場が逆行した時です。含み損が拡大すると、証拠金維持率が低下します。証拠金維持率は口座残高を必要な証拠金で割って求めるため、含み損が拡大して必要な証拠金が増えると分母が大きくなり、その分、証拠金維持率が低下するのです。

少々難しく感じるかもしれませんが、「相場が逆行して含み損が増えると証拠金維持率は低下する=ロスカットの危険が高まる」と理解しておいてください。

こうした計算は、FX会社が提供しているシミュレーターを使うと瞬時に行うことができます。例えばトレイダーズ証券の「みんなのFX」には証拠金シミュレーションがあるので、予定しているポジションの情報を入力すると「いくらになったらロスカットになるか」を算出可能です。

前項の計算も、このシミュレーターを使用しました。シミュレーターを使って色々な数値を入れてみると、どれだけの資金で始めるべきか、どの程度のリスクがあるのかといったイメージを掴むことができます。

適切なレバレッジとは

ロスカットはFX投資において最も避けるべき事態です。それでは適切なレバレッジとして、どれくらいを目安にするべきなのでしょうか。

スイングトレードといって中長期的にポジションを保有するトレードの場合は、最大でも10倍程度が目安になります。高金利通貨などのスワップを狙って長期的にポジションを保有し続ける場合はさらにリスクを下げて、レバレッジは5倍程度にして急激な相場変動に備えるべきでしょう。

レバレッジを目一杯まで効かせられるのはFXのメリットですが、それをやってもよいのはスキャルピングやデイトレードといった短期トレードだけです。ポジションを長く保有するほどリスクが高くなるのがFXなので、ポジションの保有期間が長くなるほど推奨レバレッジは低くなると理解しておきましょう。

これはFXだけでなくレバレッジ投資が可能なCFDなど他の投資商品にも同じことがいえます。株価指数のCFDでは10倍といったレバレッジを効かせられる証券会社がありますが、これも最大の10倍を使ってよいのは短期トレードのみとお考え下さい。

レバレッジのありがちな誤解

レバレッジは「〇〇倍」と表記されるため、レバレッジの倍率がそのまま投資の倍率になると誤解している人がいます。FXの場合だと最大で利益や損失が25倍になる、といった具合です。しかし、レバレッジは少ない証拠金で投資が可能になる倍率のことで、投資効率を高めるための仕組みです。

レバレッジが高くなるとハイリスクだといわれるのは、損益が大きくなるのではなく、「レバレッジが高いほどロスカットが近くなる」というのが正しい理解です。

レバレッジがあるがゆえに2022年の極端な相場では一発退場となった投資家が多かったわけですが、これはレバレッジを高くすることで大きな利益を狙った結果、逆行のリスクに耐えられなかったからです。

レバレッジは天使か?悪魔か?

ここまでの解説を読んで「レバレッジは怖い」と感じる人もいるかもしれません。しかしこのレバレッジはFXだけでなく、不動産投資でもメリットとされている概念です。一部の自己資金だけを用いて残りは金融機関からの融資で資金を調達すればわずかな自己資金で不動産を運用できるので、FXに似た仕組みが出来上がります。

不動産投資であってもローンを多用して物件を買いすぎるとレバレッジが高くなってしまい、行き詰ってしまうリスクがあるのですから、投資におけるレバレッジは味方につけることがとても重要です。うまく味方につければ天使、使い方を間違えると悪魔になり得る諸刃の剣というわけです。

特にFXでは少額から始めたいと考えている人にとって、レバレッジは有益な仕組みです。レバレッジや証拠金、ロスカットの仕組みをしっかりと理解してから取り組めば、レバレッジをうまく活かして資金増につなげることができます。

FX会社の口座照会の画面には、実効レバレッジという数値があります。これからFXを始める場合は、実効レバレッジが何倍になっているかを常にチェックしながら、当記事で解説した推奨レバレッジになるように調整するとFX投資のリスクを軽減できるでしょう。

(提供:Incomepress



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