返済中のアパートローンよりも金利が低い他の金融機関のローンに借り換えると返済負担が軽くなる可能性がある。しかしアパートローンの借り換えの際にかかる費用や手続きの流れについて細かく知らない人もいるのではないだろうか。そこで本稿では、アパートローンを借り換える際の具体的な手順や費用をわかりやすく解説していく。
借り換えの最大のメリットは返済総額の圧縮
アパートローンを借り換える最大のメリットは、金利が下がることで返済総額を圧縮できることだ。具体的にローン金利が1%違うと毎月の返済額や返済総額にどれくらいの差が生じるかを確認してみよう。借入残高3,000万円、金利2.5%、残りの返済期間が20年のアパートローンを借り換えて、金利が1.5%に下がった場合のシミュレーション結果は以下の通りだ。
項目 | 金利2.5% | 金利1.5% | 差額 |
毎月の返済額 | 15万8,970円 | 14万4,763円 | 1万4,207円 |
年間返済額 | 190万7,640円 | 173万7,156円 | 17万484円 |
20年間の返済総額 | 3,815万3,008円 | 3,474万3,269円 | 340万9,739円 |
借り換えで金利が1%下がると毎月の返済額は1万4,207円、20年間の総返済額は約340万9,739円の減額となる。ただし借り換えには、さまざまな手数料がかかるため、実際に得られる返済軽減効果は上記シミュレーション結果よりも少ない。具体的な手数料内容は後述するが、大別すると「現在のローンを一括返済するための費用」と「新たなローンを借りるための費用」が発生する。
借り換えにかかる費用の目安は、借り換えるローン金額の3~5%程度と見ておくといいだろう。まとまった費用はかかるものの、より一層金利が低いアパートローンに借り換えることによって返済負担が軽くなる可能性がある。
借り換えするための6つの手順
アパートローンを借り換える際は、どのように手続きを進めればよいのだろうか。ここでは、金利が低いローンに借り換えるための6つの手順を紹介する。
1金利を比較しシミュレーションする
アパートローンの金利は、金融機関によって異なるため、インターネットなどで複数の金融機関の金利を調べて以下のように返済額をシミュレーションすることが大切だ。
【例】借入残高3,000万円、金利2.5%、残り返済期間20年のアパートローンを借り換える場合
項目 | 借り換え前 | 借り換え後 | |||
金利 | 2.5% | X銀行 2.0% | Y銀行 1.5% | Z銀行 1.0% | |
毎月の返済額 | 15万8,970円 | 15万1,765円 | 14万4,763円 | 13万7,968円 | |
返済総額 | 3,815万3,008円 | 3,642万3,600円 | 3,474万3,269円 | 3,311万2,390円 | |
返済総額の差額 | - | 172万9,408円 | 340万9,739円 | 504万618円 |
複数の金融機関を比較検討することで借り換えが自分にとってメリットがあるのかどうか把握することができる。ただしこれは、あくまでも事前調査をもとに行う試算であることを忘れてはいけない。実際に適用される金利は、申込者の属性や物件の状況などによって借り換えの可否や借り入れ条件が変わることを念頭に行おう。
2借り換え先となる金融機関を決める
次に借り換え先となる金融機関を決めよう。一口に金融機関といっても以下のような種類がありそれぞれに特徴が異なる。
金融機関 | 金利の目安 | 対応エリア | 特徴 |
都市銀行 | 1~2%程度 | 全国 | 低金利で借入が可能だが、融資審査は厳しい |
地方銀行 | 1.5~3%程度 | 営業地域内 | 地域密着で幅広い物件に対応しており、個人でも利用しやすい |
信用金庫、信用組合 | 2~4%程度 | 営業地域内 | 地域密着で個人でも融資を受けやすいが、アパートローンの取り扱いは少ない※個別に相談することは可能 |
ネットバンク | 1~9%程度 | 全国(店舗なし) | 手数料が比較的安く、インターネット上で手続き可能 |
ノンバンク | 3~5%程度 | 全国 | 融資に積極的で審査に通りやすいが、金利は比較的高め |
都市銀行は、金利が低い傾向にあるが、その分審査は厳しく取引実績がない個人の借り換えが難しい傾向だ。一方で地方銀行や信用金庫、信用組合、ネットバンクなどは、個人への融資も積極的に対応しているため、相談しやすいだろう。ノンバンクとは、預金業務を行わず融資に特化している金融機関のことだ。ノンバンクは、審査が比較的緩やかで融資を受けやすいが金利は高い傾向にある。
どの金融機関で借り換えする場合でも相談する前に借り換え効果を得られるかを慎重に判断することが大切だ。
3必要書類を用意する
金融機関へ相談に行く前に必要書類を用意しておくとスムーズに手続きを進めることができるだろう。アパートローン借り換え時の主な必要書類は、以下の「物件情報」「賃貸経営の状況」「賃貸経営以外の収入・資産」「本人確認」の4つに分けられる。
書類の内容 | 具体例 |
物件情報 |
|
賃貸経営の状況 |
|
賃貸経営以外の収入・資産 |
|
本人確認 |
|
物件情報が分かる書類として、購入時の売買契約書や重要事項説明書、登記簿謄本などが必要だ。賃貸経営の状況については、物件や部屋ごとの契約状況や賃料などをまとめた「レントロール(家賃明細表)」を準備しておきたい。また賃貸経営以外の収入がある場合は、証明書類として源泉徴収票や確定申告書などを用意しよう。
本人確認は、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書を提出する。現在のアパートローンを借りてから転職などで仕事が変わっている場合は、職務経歴書を用意しておくとよいだろう。また、金融機関によって必要となる書類は異なるので、ホームページを見るなどして事前に調べておこう。
4必要な費用を準備する
冒頭で記載した通りアパートローンの借り換えでは、大別すると「現在のローンを一括返済するための費用」と「新たなローンを借りるための費用」が必要となる。
<現在のローンを一括返済するための費用>
- 一括返済手数料
- 抵当権抹消費用
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 違約金 など
<新たなローンを借りるための費用>
- 事務手数料
- 保証料
- 登録免許税
- 印紙税
- 司法書士報酬 など
実際にかかる費用は、金融機関によって異なるがローン残高の約3~5%を概算費用として準備しておくといいだろう。
5金融機関に相談する
必要書類と費用が準備できたら借り換え先の候補となる金融機関に相談する。窓口に直接訪問しても構わないが、電話や公式サイトから連絡したうえで訪問するほうがじっくりと話を聞いてもらえる可能性が高いだろう。相談時には、借り換える理由や物件情報、経営状況など担当者からさまざまな質問をされる。
必要書類を見れば分かることもあるが、オーナーが自分の言葉で丁寧に説明できれば担当者に好印象を与えられるだろう。あわせて金利の希望なども伝えておこう。借り換えの相談では、同じ書類を準備して同じように説明しても金融機関によって反応が異なる。融資に前向きな金融機関もあれば、話がうまく進まない金融機関も考えられるため、複数の金融機関に相談することが大切だ。
相談先のなかから条件のよい金融機関を絞り込み融資審査に申し込みをする。契約前であればいつでもキャンセルはできるため、複数の金融機関に審査を申し込みしても問題ない。
6借り換え実行
審査に通過したあとは、アパートローンの借り換え実行に移る。借り換え先の金融機関で契約手続きを行う。借り換え融資日当日は現在のアパートローンの一括返済や諸費用の支払い、抵当権の抹消や新規設定などの手続きが融資担当者や司法書士などの立ち合いの下で行われる。完了すると借り換え後の新たな金利でローン返済が開始する。どのくらいの期間で全ステップが終了するのかは、金融機関によってケースバイケースだ。
例えば審査の場合、以下のように「事前審査→約1週間」「本審査→約2週間」を想定しておくといいだろう。全ステップとなると1ヵ月以上かかることは見積もっておきたい。
A.事前審査の結果は、通常約1週間で回答します。本審査の結果は、正式な申し込みをいただいてから約2週間でお知らせします。
受付状況や申込内容により、さらに時間がかかる場合があります。
引用:オリックス銀行「よくあるご質問(Q&A)」
https://www.orixbank.co.jp/faq/(2022年9月22日時点)
覚えておきたい借り換えする前のチェックポイント
アパートローンを借り換える前には、以下の2つのチェックポイントを確認しておきたい。
自分の属性
アパートローンの借り換えでは、審査の際に給与収入や勤務先、勤続年数、現在のローンの返済状況、信用情報といった申込者の属性が重要視される傾向だ。例えば転職したばかりで勤続年数が短い場合は「返済能力がない」と判断される可能性がある。またローンの延滞歴があると審査に通過するのは難しい。借り換えを検討する前に自分の属性を整理して融資審査に通過できるかを判断しよう。
自分の属性を整理したい場合は、以下の記事を参考にしてほしい。 【関連記事】不動産投資における属性とは?融資で金融機関が見るポイント
物件の状況
所有物件の経営状況を把握することも重要だ。物件の資産価値や収益性は、担保評価や返済能力の判断に関わってくる。金融機関に相談する前に経営状況を把握し物件情報を分かりやすく伝えられるように準備しておこう。
<確認しておきたい主な項目>
- 資産価値
- 実質利回り
- 空室率の推移
- キャッシュフローの推移 など
なお不動産投資では、定期的に売却価格を把握しておくことが大切だ。専門家に試算してもらうのが賢明だが、どのような計算方法なのかは知っておいて損はないだろう。
- 積算評価:土地価格+建物価格
- 収益還元評価(直接還元法):1年間の収益(年間賃料収入-必要経費)÷還元利回り
詳しく知りたい方は、以下の記事を読んでみてほしい。
【関連記事】不動産投資を始める前に知りたい売却の基本 売却タイミングとポイント
借り換えには事前準備が必要
アパートローンの借り換えで最も大切なのは、費用を払ってもトータルで得になるかをリサーチすることだ。借り換えにより返済総額を圧縮できれば物件の収益性が向上し安定した賃貸経営が可能となる。まずは、複数の金融機関の金利を調べたうえで借り換え効果を得られるかについてシミュレーションをしてみよう。
(提供:manabu不動産投資 )
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