この記事は2022年12月9日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「つみたてNISAの買付は計画的に~2022年11月の投信動向~」を一部編集し、転載したものです。
資金流入がやや鈍化
2022年11月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として外国株式を投資対象とするものを中心に多くの資産クラスのものに資金流入があった【図表1】。ただ、国内株式ファンドで資金流出に転じたこともあり、ファンド全体で5,600億円の資金流入と10月の6,000億円からやや減少した。
11月も投信販売を牽引したのは、やはり外国株式ファンドであった。外国株式ファンドには11月に3,500億円の資金流入があり3カ月連続で3,000億円を超えており、販売は堅調であったといえるが、10月の流入額3,800億円と比べるとやや減少した【図表2】。外国株式ファンドをタイプ別にみると、SMA専用のものには200億円と10月から同規模の資金流入があった。市販されているファンドでは、アクティブ型のものに600億円の資金流入があった。あくまでも新設ファンド(【図表3】赤太字)への資金流入で膨らんだのが大きいが、10月の400億円から増加した。
インデックス型の外国株式ファンドには、年末に向けた駆け込みの買いもあった?
その一方でインデックス型の外国株式ファンドは11月に2,800億円の資金流入と10月の3,200億円からやや減少したものの高水準であった。そもそも10月は月前半に米国株式の下落を受けて資金流入が底上げされていたのにもかかわらず、11月は10月からあまり鈍化しなかった。
インデックス型の外国株式ファンドへの資金流入が、11月も高水準でであった要因として2つのことが考えられる。まず、円高の進行である。11月は世界的に株式が上昇したが、その一方で為替市場では月初に1ドル148円台であったのが月末には139円になるなど、円高が急速に進行した。それに伴って、為替ヘッジしていない外国株式ファンドの基準価額は下落したため、これまで円安を嫌気して購入を控えていた投資家などから、円高を機に積極的な買いが入った可能性がある。
それに加えて、11月は年末に向けて駆け込み買付が発生することも、2つ目の要因としてあげられる。実際に2021年11月、12月(赤囲い)はインデックス型の外国株式ファンドへの資金流入が膨らんだ【図表2】。つみたてNISAの1口座あたりの平均買付額をみても、毎年、10-12月の第4四半期に買付が増える傾向があり、特に2021年は急増した【図表4】。つみたてNISAは年間40万円の買付枠を翌年以降に繰り越すことができない。しかも年途中に始める人も多いため、買付枠をできる限り使い切ろうと年末に買い増しする人が多く、この11月も買い増しする人がいた可能性が高い。
積立投資家の増加は2022年に鈍化
インデックス型の外国株式ファンドへの流入額は概ね2,000億円を上回っているが、その一方で流入が多かった5月、10月でも3,200億円程度と2021年12月と同規模であった。つまり、2020年後半あたりから資金流入が急増してきたが、2022年に入ってから増加自体は一服してきている。このことから2021年までに積立投資を始めて2022年も続けている人が多いが、2022年に新たに積立投資を始める人自体は減ってきている可能性が高そうである。つみたてNISAの口座の増加数をみても2022年4-6月に制度開始以降で初めて前年同期を下回り、口座数の増加に鈍化の兆しがみられる(*1)。
11月末に決定された「資産所得倍増プラン」では、目標として「5年間でNISA総口座数(一般・つみたて)を現在の1,700万口座から3,400万口座に倍増」が掲げられた。具体的な数値目標が掲げられたこと自体に大変意義のあることであり、実際に目標が達成できるかどうかは置いておいて、ぜひとも投資促進する政策を実現して、個人投資家のすそ野を広げて欲しい。ただ、2022年に入って資金流入の増加が一服しているインデックス型の外国株式ファンドの資金流入の推移をみても、やはり目標達成は簡単ではないといえる。特に関心が高い人ほど既にNISA制度を利用していることを踏まえ
*1:詳しくは「数値目標は気にせず投資促進を~どうなる資産所得倍増プラン~」ご参照。)
一部で外国債券を見直す動き?
また、国内株式ファンドは11月に400億円の資金流出に転じた。11月は株価が上昇する中、インデックス型を中心に利益確定売りが膨らんだ。特に日経平均株価が2万8,000円を超えた翌営業日の14日の資金流出が大きく、2万8,000円という水準が意識されていたことがうかがえる。
その一方で外国債券ファンドには11月に700億円の資金流入があり、10月の100億円の資金流出から転じた。あくまでもSMA専用ファンドの影響が大きかったが、SMA専用を除外しても11月は300億円の資金流入と10月の50億円から増加した。一部では外国債券投資が見直される動きがあるのかもしれない。
中国関連株ファンドが好調
11月に高パフォーマンスであったファンドをみると、中国でゼロ・コロナ政策の見直し期待が高まり株価が特に上昇したため、その恩恵を受けた中国関連株ファンド(赤太字)が総じて好調であった【図表5】。
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前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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