この記事は2022年12月12日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「海外投資家が2カ月連続の買い越し~2022年11月投資部門別売買動向~」を一部編集し、転載したものです。

投資
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2022年11月は、米国の金融政策の動向に左右される展開となった。米FOMCの結果を受け、警戒感がやや強まり、日経平均株価は4日に2万7,199円まで下落した。

その後は米経済指標の結果を受け金融引き締め姿勢が和らぐとの見方から米国株指数は上昇し、それに伴って日経平均株価も24日には2万8,383円まで上昇した。

月末にかけては、中国のゼロコロナ政策を巡る抗議活動などで中国リスクが意識されたこともあり、日経平均株価は上昇幅を縮め、2万7,968円で終えた。11月はこのように日経平均株価が推移するなか、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、個人が売り越した。

2022年11月投資部門別売買動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

2022年11月(10月31日~12月2日)の主な投資部門別売買動向は、海外投資家が、現物と先物の合計で1兆1,470億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。

2022年11月投資部門別売買動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

特に、11月第2週(7~11日)は7,349億円、第4週(21~25日)は9,869億円を買い越した。背景には米国の経済指標の発表等により、米国の金融引締め姿勢が和らぐとの期待が高まったことがあげられる。

11月10日夜に発表された米消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.7%と市場予想の7.9%を下回った。また、23日発表のFOMC議事要旨では、多くの委員が利上げ鈍化ペースが間もなく適切になるとの見方を支持したことが好感され、米国株指数は上昇した。それに伴って日本株式も海外投資家の買いが増えた様子である。

ただし、第5週(11月28日~12月2日)は8,143億円の売り越しに転じた。図表3は2015年~2021年の海外投資家の現物と先物を合わせた月次の売買動向を単純平均したものと、2022年の売買動向推移である。2015年以降平均すると12月はやや売り越されている。

海外投資家は9月に約3兆円と大幅に売り越して以降、10月、11月と2カ月連続の買い越しとなった。2022年は12月も買い越しが継続されるのかが注目される。

2022年11月投資部門別売買動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

その一方で個人は、現物と先物の合計で6,902億円の売り越しと11月最大の売り越し部門であった。特に11月第2週は9,016億円、第4週は6,608億円を売り越した。海外投資家の大幅な買い越し、日経平均株価が上昇するなか、個人は利益確定のため売却した人が多かったようだ。その他、11月は信託銀行も4,055億円の売り越しとなった。

2022年11月投資部門別売買動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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森下千鶴(もりした ちづる)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員

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