この記事は2022年8月8日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「海外投資家が先物を中心に買い越し~2022年7月投資部門別売買動向~」を一部編集し、転載したものです。
2022年7月は、月初に米国を中心に世界景気の後退懸念から日経平均株価が2万6,000円割れまで下げたものの、その後は金利低下による米株高を好感して大きく上昇した。ただ、下旬は円安の進行が一服したことなどから上値を抑えられ、日経平均株価2万8,000円には届かず終えた。主な投資部門別で見ると、海外投資家と事業法人が買い越す一方で、個人と投資信託が売り越した。
2022年7月(7月4日~7月29日)の主な投資部門別売買動向(現物と先物の合計)は、海外投資家が1兆7,388億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。特に7月第1週(4~8日)に現物と先物合わせて1兆1,905億円、第3週(19~22日)に8,856億円を買い越しており、株価の上昇に寄与した。ただし、買い越し額1兆7,388億円のうち、先物が1兆5,688億円、現物が1,701億円と、買い越し額のほとんどを先物が占めていた。日本株市場を評価した腰の据わった買いというより、裁定取引の短期的な買いが多かったと考えられる。
また、事業法人も4,002億円の買い越しだった。14カ月連続の買い越しであり、買い越し額は2022年累計で約2.5兆円に達している。海外投資家は7月こそ大きく買い越したが、2022年累計だと約1.6兆円売り越している。海外投資家の売りを事業法人の買い、つまり積極的な自社株買いによって相当な部分を吸収してきたと言える。
その一方で個人は、現物と先物の合計で1兆2,830億円の売り越しと7月最大の売り越し部門であった。特に7月第1週(4~8日)は4,852億円の売り越し、第3週は(19~22日)7,634億円を売り越した。第3週に日経平均株価は2万7,000円台を回復しており、個人の利益確定売りが膨らんだ様子である。その他、7月は投資信託も7,056億円の売り越しとなった。
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森下千鶴(もりした ちづる)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員
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