この記事は2022年10月11日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「海外投資家が2020年3月以来の大幅売り越し~2022年9月投資部門別売買動向~」を一部編集し、転載したものです。

投資部門別売買動向
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目次

    2022年9月は、上旬は一時2万7,500円を下回るも、その後、反発し12日に2万8,500円まで上昇した。しかし、13日夜に公表された米経済指標で今後の金利引き締めや景気後退懸念が嫌気されて米国株が大幅に下落したことを受け、翌14日の日経平均株価は約800円安と大幅に下落し、再び2万8,000円を割れた。下旬も米国の金融引締め姿勢や、英国発の信用不安などから続落し、日経平均株価は7月1日以来となる2万6,000円割れし、2万5,937円で終えた。主な投資部門別で見ると、個人、信託銀行、事業法人が買い越す一方で、海外投資家が大幅に売り越した。

    2022年9月投資部門別売買動向
    (画像=ニッセイ基礎研究所)

    2022年9月(9月5日~30日)の主な投資部門別売買動向は、海外投資家が、現物と先物の合計で3兆0,519億円の売り越しと2020年3月以来の規模となり、最大の売り越し部門となった。週ごとにみると9月第1週(9月5日~9日)は1,249億円買い越したが、2~4週(9月12日~30日)は3週連続で売り越した。特に9月第4週(9月26日~30日)は日経平均株価が下落幅約1,200円と大幅に下落する中、現物と先物合わせて2兆1,564億円を売り越していた。

    2022年9月投資部門別売買動向
    (画像=ニッセイ基礎研究所)

    海外投資家が大幅に売り越した背景には、9月に入ってからの大幅な円安進行もあるが、9月13日夜に発表された米消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.3%(予想8.1%)と市場予想を上回る上昇率だったことから、米国の金融引締め姿勢やインフレの長期化への警戒感が高まったことがある。さらに下旬は、9月20,21日に開催された米FOMCで0.75%の利上げの決定や利上げ見通しが予想以上にタカ派的だったこと、さらに英トラス政権が発表した財政政策をきっかけに信用不安が高まり、英国株や英ポンドが下落したことから、世界的にリスクオフ姿勢がやや強まった。それに伴って海外投資家による日本株式の売却も、月末にかけ増えた様子である。

    その一方で個人は、現物と先物の合計で1兆2,178億円の買い越しと9月最大の買い越し部門であった。9月第1週(9月5日~9日)は2,336億円売り越したが、2~4週(9月12日~30日)は1兆4,512億円を買い越した。株価が下落したときに買いを入れるという個人の逆張り姿勢は健在だったようだ。

    他には、信託銀行が8,009億円の買い越しと2022年5月以来の買い越し、事業法人が6,406億円の買い越しと16ヶ月連続で買い越した。このように国内投資家は9月に概ね買っていたものの、あまりに海外投資家の売却が大きかったため、日経平均株価は大幅な下落となった。

    2022年9月投資部門別売買動向
    (画像=ニッセイ基礎研究所)

    図表4は、2015年~2021年の海外投資家の月次売買動向について、買い越した月と売り越した月をそれぞれ数えたものである。

    2022年9月投資部門別売買動向
    (画像=ニッセイ基礎研究所)

    過去7年をみると、偶然かもしれないものの、海外投資家は10月に買い越している年が多く、特に現物だと2018年を除いた6年は買い越していた。現物に限れば、10月は他の月に比べて海外投資家が買いやすい傾向があるのかもしれない。9月に2020年3月以来の大幅売り越しとなったが、過去の例のように10月は海外投資家が戻ってくるのか、さらに売却するのか注目してみたい。


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    森下千鶴(もりした ちづる)
    ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員

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