本記事は、つらお氏の著書『最強のズボラ投資』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
さあ、あなたが投資できる金額を決めましょう
「いくらまで損しても耐えられるか(リスク許容度)」「投資していいお金か」、この2つで自分が投資できる金額を決めてください。
重要なのは「いくらまで損しても耐えられるか(リスク許容度)」です。これは簡単なようで実は難しい。リスク許容度は、その人の性格や置かれている状況に大きく依存します。
大きく損しても全然気にしない性格の人はいます。一方、ほんの少しでも損したことが気になってしかたない人もいます。また、同じような性格をしていたとしても、生活環境が違うとリスク許容度は異なります。
単身者か家族持ちか、仕事が安定しているか不安定か、等々、環境の違いはリスク許容度に大きく影響します。以下はリスク許容度が高いタイプの人と低いタイプの人の属性例です。
リスク許容度が高い人
・仕事などから高い収入を得ている(投資で損しても生活に困らない) ・雇用や給与が安定的な仕事についている ・子どもの教育費や親の介護などの出費が無い ・節約生活に慣れている ・人生の苦難をそんなに気にしない人
リスク許容度が低い人
・仕事の収入が少なく、貯金が家計の生命線 ・仕事が不安定でいつ給与収入が途絶えるか分からない ・子どもの教育費や親の介護などで出費が多い ・生活レベルを下げることが苦痛 ・人生で少しでも障害があることに耐えられない人
リスク許容度は各人で異なるので、自分で考えてみてください。ここは頭の中でのシミュレーションになりますが、「自分がどれだけ損しても耐えられるか」をリアルに想像してみましょう。より厳密に言うと「自分がどれだけ損しても日常生活を平穏に生活できるか」です。「損してることが気になってイライラして子どもに八つ当たりしてしまうけど、耐えられる」というのではダメです。
100万円損しても大丈夫でしょうか? 5,000円の飲み会200回分です。200万円損しても大丈夫でしょうか? 安い車であれば新車が買えそうな金額です。
言い忘れていました。リスク許容度を「金額」ではなく「率」で考える人もいますが、それはダメです。リスク許容度を考える時は「金額」で考えてください。仮に100万円が半分になっても大丈夫という人でも、1,000万円が半分になることは耐えられないという人もいます。500万円となれば、いい車が買える金額ですから、50万円の損失は我慢できても、500万円の損失は耐えられないという人もいるかと思います。
このシミュレーションは想像力が求められて大変に難しいのですが、投資を続けていくためには非常に重要です。なるべくリアルにお金がなくなる様子を想像して考えてみましょう。
◎中途半端なシミュレーションは身を亡ぼす
相場が好調な時に、自分のリスク許容度を考えずに投資を始めてしまい、2009年頃に大損して耐えられなくなって投資をやめてしまった人を何人も知っています。
ツイッターやブログなどでズボラ投資(長期分散投資)をしていることを書いていたのに暴落で書き込みをやめてしまいました。これがリスクも何も考えていない人たちなら無知だからしょうがないですむのですが、彼らの中には一見投資のことを理解している風な人がいたから困ったものでした。リスク許容度といった言葉を使ってどのくらいの暴落まで耐えられるとか、期待リターンを考えると長期投資をやめないなどと、あたかもしっかりと論理的に把握しているかのような態度をとっていたのです。しかし、現実の暴落の前にはあっさりと損が嫌になって退場してしまいました。
机上の空論と実際に地震を経験することは全く別物ですので、自身のリスク許容度はしっかりと見定めておくべきです。
◎リスク許容度はちょっと保守的に見積もることを推奨
自分のリスク許容度を計算したら、そこからさらに保守的に調整することをお勧めします。
具体的には「1,000万円の資産が600万円になっても大丈夫」と頭の中で思ったなら、実際のリスク許容度は「1,000万円が700万円になるまで大丈夫」という要領です。
経験していないものを一生懸命に考えたとしても、本当にリアルに想像することは困難です。甘めに見積もってしまいがちです。いざ実際に暴落局面になって損失が膨らんでいくと、「えっ、こんなに損してしまった、どうしよう……」となってしまいます。シミュレーションほどは耐えられないだろうと想定して、やや安全目に考えておくことをお勧めします。
◎リスク許容度が分かったら、投資額を決めよう
リスク許容度が分かれば、投資できる上限額が分かります。「1,000万円が700万円になるまで大丈夫」であれば、300万円の損がその人のリスク許容度になります。つまり、500万円まで投資できます。
なぜ、500万円なのか説明します。ズボラ投資をしていた場合、投資している資金が最大で60%の損失を出すことがあるという話をしました。つまり、「最大で損する金額=投資総額の60%=300万円」としておけば、想定される最大の損失額が300万円以内になります。投資総額の60%が300万円ということは、投資総額は500万円にすればよいとなります。その場合、リスク許容度から考えると「1,000万円のうち500万円をズボラ投資に回す」ことになります。
その場合、投資しないで残る現金(預金)が500万円ありますが、この金額は生活費6か月分よりは多く、生活防衛資金としては十分です。これだけあれば、日常の生活費や多少何かあった場合も十分賄えます。
◎状況が変われば、リスク許容度は変わる
リスク許容度について、1つ注意があります。リスク許容度は一定ではありません。自身の状況が変われば変わることがあります。たとえば、仕事の収入が増えたら、投資で損しても仕事で稼いで取り戻せるようになるので、リスク許容度が上がるかもしれません。独身だった人が結婚して子どもが生まれたら、そう簡単に損できなくなってリスク許容度が下がるかもしれません。また、自身のリスク許容度が変わらなくても、パートナーはそれほどリスクを取りたがらないかもしれません。リスク許容度が変わった場合には、それに合わせて投資金額を変更してリスクを調整することも大事です。
ズボラ投資法のまとめ ●インデックスファンドを使って、適度な配分で「日本株:先進国株:新興国株」に投資する ●買ったら基本的には買いっぱなし。タイミングを見て売ったり買ったりしない ●信託報酬が安いインデックスファンドを選ぶ ●投資していい金額はリスク許容度や手元に置いておくべき資金(生活防衛資金)から逆算する
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