本記事は、つらお氏の著書『最強のズボラ投資』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

ズボラ投資は努力・才能不要で誰でもできる資産運用法

5000万円を運用するなら何に投資する? 年齢に応じたおすすめ資産配分も紹介
(画像=Fantasista/stock.adobe.com)

ここではズボラ投資の中身の基本的な考え方を解説していきます。ここさえ押さえておいてくれれば、投資で大きな間違いをすることはなくなります。

◎勝手にお金が増えていてくれると嬉しい

皆さん、投資のために毎日たくさん時間を使いたいですか? 「はい、投資のことを考えるのが大好きなので、喜んで毎日時間を使います」という人もいるかもしれません。暇さえあれば株価に影響を与えそうなニュースをチェックしたり、企業の決算情報を読んだり、旅行中も株価をチェックしたり……と、投資が大好きでやっていて楽しければいいのですが、世の中の大多数のフツーの人は違うと思います。

仕事をしている時、友人と遊んでいる時、家族と過ごしている時、映画を見ている時、ご飯を食べている時、旅行に行っている時……と、いろいろな日常の場面で投資のことを考えたいですか? 投資のことなど気にせずに楽しめた方が嬉しいのではないでしょうか。「資産運用でお金が増やしたい」と思いながらも「資産運用のために労力を割きたくない」というのは大多数の人の素直な声でしょう。私もその一人です。

こんなわがままなことを言うと「世の中、努力しないで儲かるなんてうまい話はない」という正論っぽい反論を受けてしまいそうですが、大丈夫です。ズボラ投資は努力無くしてお金が増えることを期待できる素敵な投資法なのです。

そんなうまい話があるはずがないと疑う人もいるかもしれませんが、これは資産運用のプロも実践している方法です。是非皆さんもズボラ投資で資産を増やしましょう。

3つのキーワード「長期」「分散」「低コスト」

「長期(投資)」「分散(投資)」「低コスト」がズボラ投資の基本的な考え方です。

・長期(投資):「長期」的に投資し続けて、みんなが頑張っている成果の一部をいただく
・分散(投資):「分散」投資してリスクを軽減する
・低コスト:「低コスト」な運用をする

この3つを心がけた資産運用ができていれば、普段の生活で投資のことは忘れていてOKです。ズボラ投資を実践している私も、自身の資産運用のことは普段の生活の中ではほとんど意識していません。1か月や2か月に1回、自分の証券口座にログインして決まった投資信託を買うくらいですが、それすらも忘れることがあるくらいです。

この3つの基本的な考え方を1つずつ解説していきます。

「長期」的に投資し続けて、みんなが頑張っている成果の一部をいただく

ズボラ投資のコツその1です。みんなに頑張ってもらってお金を増やしてもらいます。それを株式への投資を通じて実現するので、少し株式の話をします。

会社を作って事業を行うためには資金が必要です。その資金を用意する方法は主に3つあります。

(1)自分で用意する
(2)他人から借りる
(3)他人に出資してもらう←これが株式

「(1)自分で用意する」「(2)他人から借りる」はイメージしやすいでしょう。「(3)出資してもらう」は少し特殊です。

他人からお金を出してもらうという点では「②他人から借りる」と同じなのですが、出資で受け取ったお金は返す必要がありません。これは、凄いことです。普通、事業のために1億円を借りたら事業が失敗して1億円を失ってしまっても返済する義務があります。しかし、出資で受け取った1億円であれば、儲かろうが損しようが1円も返さなくてもいいのです。

ここだけ考えると、出資することは良くないように思えますが、出資にはそれを上回るメリットがあります。お金を貸した場合、その資金を元手に会社が大儲けをしても、元本+約束した金利しか受け取れません。「私が貸した1億円を元手に100億円儲けたんだから、10億円よこせ」とは言えません。あくまで元本+金利だけが返ってくる約束です。たとえば、「返す時は金利5%」という約束で1億円を貸したなら、受け取るお金は1億500万円になります。

一方、「出資」の場合は大儲けした場合、「それだけ多くよこせ」と言えます。出資した場合、出資した人はその金額に見合った株式を受け取ります。そして、株式を持っている人は、会社が儲けた場合、その利益の一部を配当(会社が稼いだお金の一部を株主に支払う)という形で受け取ることができます。「私が出資した1億円を元手に100億円儲けたんだから、10億円よこせ」と言えるのです。

また、配当として受け取れるだけでなく、会社が大きくなれば持っている株式の価値が上がります。会社が大きくなって会社自体の価値が10倍になれば、1つの株式の価値も10倍になります。つまり、持っている株式の価値が10倍になるのです。100万円が1,000万円になることもあるのが、株式であり出資です。

そんな株主の出資によって成り立っている株式会社ですが、企業ですから利益を上げるために事業を行っています。それぞれの会社の中を見るとそこには多くの従業員がいて会社の利益のために働いています。彼らの労働の結果、会社が大きくなれば株式の価値が上がりますし、利益が配当として配られます。

つまり、ある会社の株式を持つということは「社員の皆さん、頑張って働いて利益を上げてくださいね。そして、株主である私にその利益の一部を還元してくださいね」と、従業員のみんなが頑張って働いた成果の一部をいただくということなのです。

◎一番偉いのは株主

世間一般では、誰もが知るような大企業に勤める人を「勝ち組」と呼ぶことがあります。しかし、真の「勝ち組」はそんな彼らの労働の成果をいただく株式を持っている人です。自分が遊んでいる間も寝ている間も、「勝ち組」と言われる人たちが一生懸命仕事をして会社の利益を生んでいます。その会社の株式を持っておくということは、彼らが頑張って稼いだお金の一部を受け取っているのだといっても過言ではありません。まさに、みんなが私のために働いてくれているのです。

このようにみんなが頑張っている成果の一部をいただくために「長期(投資)」が必要なのです。

会社で1週間みんなが働いたからといって、会社が何倍にも大きくなったりはしません。会社が成長して利益を稼いでいくには長い期間がかかります。そこで、みんなの頑張りをコツコツいただこうとするのであれば、長期的に株式を持ち続けて、コツコツと利益をいただく必要があります。

株式投資の本を見ると、よく「○%値上がりしたら売って利益確定すべし」のようなことが書かれていますが、これはやってはいけません。株式を手放してしまったら株式会社で働く人たちが生み出す利益を手にできなくなってしまいます。

ズボラ投資では長期的に株を持ち続けてみんなが頑張っている成果の一部をいただくことが重要なので、絶対に「長期」的に投資し続けてください。

「分散」投資してリスクを軽減する

「みんなが頑張っている成果の一部をいただく」ために株式に長期的に投資すると書きましたが、次の課題は「どの株式を買うか」です。全ての会社でみんなが頑張って働いたとしても、全ての会社が順調に利益を出していくわけではありません。大きく成長する会社、安定して利益を出す会社、競争に敗れて倒産する会社、などがあります。倒産する会社の株式に投資しても、お金を失うだけです。

そこでズボラ投資的に重要なのが「分散(投資)」です。1つの会社の株式に集中的に投資するのではなく、多くの会社の株式にお金を分散して投資します。これが非常に重要です。

投資業界でよく言われる有名な格言として「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉があります。この言葉の意味は、「卵を1つのカゴにまとめて入れておくと、そのカゴが落ちてしまった場合、全ての卵が割れてしまう。だから卵は複数のカゴに分けておけば、1つが落ちても全部をいっぺんに失うことは避けられる」という意味です。

卵を株式に置き換えて考えます。稼いでくれそうな会社を探して、その企業の株式を買ったとします。1つのカゴにお金を盛った状態です。その会社が順調に稼いでくれれば、株価は上がって、配当をたくさん受け取れて、投資したお金はどんどん増えていきます。こうなれば後は大成功ですが、そう簡単にはいきません。自分の選んだ会社が倒産してしまったら(カゴを落としてしまったら)お金をまとめて失ってしまいます。

「そんなのは怪しい会社に投資するからだ。しっかりした会社に投資すれば大丈夫」という反論があるかもしれません。しかし、しっかりしているように見える会社の株式を買えば安泰かというと、そうではありません。有名企業の破綻例を挙げましょう。

北海道拓殖銀行

これはバブル崩壊の象徴でもありました。北海道で圧倒的トップの銀行で、北海道でも最も安定した就職先という地位にもありましたがバブル崩壊で破綻しました。

日本航空

日本を代表するナショナルフラッグキャリアでした。しかし、リーマンショックの際に経営悪化に耐えられずに破綻しました。

エルピーダメモリ

半導体シェアで世界第3位を誇った企業でしたが、リーマンショックの際に経営が悪化してあえなく破綻。

ゼネラルモーターズ

世界の年間売上台数1位を誇ってきたが、ライバルとの競争や外部環境の変化についていけずに破綻。

リーマン・ブラザーズ

2008年頃からの金融危機で業績が急に悪化して破綻。この金融危機の別名に「リーマンショック」という不名誉な名前を付けられてしまった。

ファニーメイ

アメリカで住宅ローンを保証する業務を行っていた。ファニーメイの発行する債券はアメリカ国債の次に信用度が高いと言われるほどの評価だったが、サブプライム問題であっさりと破綻。

北海道の人にとって北海道拓殖銀行が潰れるなんてありえない話でした。日本航空も高度成長期には最高の就職先の1つでありまさか破綻するなんて(筆者の親族が日本航空関係者で、見事にこの破綻の影響を受けました)。

エルピーダメモリも官民で力を挙げて応援した企業でしたが破綻です。海外でも世界的な大企業があっさり破綻しますし、政府がバックにいると言われたようなファニーメイや大手証券会社のリーマン・ブラザーズですら金融危機で破綻しました。

これらの例が示すように、その直前までは優良企業としてお墨付きをもらった企業ですら破綻する事例がたくさんあるということです。運悪くそんな企業の株を買ってしまった場合、最悪のケースでは投資したお金を全部失ってしまいます。

このように、競争に敗れてしまう会社があるわけです。しかも、必ずしもあからさまに潰れそうな会社が潰れるのではなく、優良企業に見えたような企業でも潰れてしまうとなったら、どんな企業の株式を買えば良いのだろうかとなります。ここで、従来の投資法では「四季報などを読んで各企業の財務状況等を調べて、本当に良い企業を選ぶべし」となりますが、ズボラ投資は違います。

ズボラ投資ではどこが投資するのに適した企業であるかは考えません。どこが良い/悪い企業かは気にせず、「卵は1つのカゴに盛るな」の格言に従います。株式投資の場合「卵=投資するお金」「カゴ=企業」になります。どれかのカゴ(企業)が落ちてもいいように多くのカゴ(企業)に分けて卵(投資するお金)を置きます。このように複数の株式に資金を分散して投資することを「分散投資」と言います。

最強のズボラ投資
つらお
都内某所で働くサラリーマン投資家。人気の投資ブログ『吊られた男の投資ブログ』を運営し、2017年に『毎月10分のチェックで1000万増やす!ズボラ投資』を出版。2007年から手間をかけないズボラ投資を実践し、3000万円ほどの元本を約2倍へ。投資に手間を掛けないので空いた時間を、仕事とともに、PTA、サッカーコーチ、町会活動など各種活動に使っている。

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