年功序列の維持に欠かせない対応5つ
年功序列は若年層や女性がデメリットを感じやすいこともあり、今後も維持していくならば大きく5つの対応が必要となるだろう。
対応1.持続的な業績向上と成長
年功序列を導入している企業では、社員の年齢層が高くなるほど人件費が高くなるため、会社の経営年数が伸びるとともにコストも上昇しやすい。年功序列で高騰するコストをカバーできるだけの収益を確保しなければならないため、継続的な成長と業績の向上が欠かせないだろう。
対応2.年齢や性別による賃金格差是正
年功序列制度では、若手の給与が高齢社員に比べて極端に低くなることも少なくない。若手社員が離職する原因の上位には、人間関係のトラブルや労働条件の悪さだけでなく、賃金の低さもある。年功序列によって遠い将来の賃金上昇を見せるだけでなく、20代や30代のうちにある程度の賃金格差を是正したほうがよいだろう。
対応3.ジョブローテーションによる人材育成
年功序列のメリットは、長期勤務によりスキルや知識を成長させやすいことだ。しかし、市場は変化する。会社側が年功序列制度を長期的に継続するには、変化に対応しなくてはならない。
したがって、部署横断的に活躍する人材の育成や適性の見極め、人間関係の醸成も不可欠である。研修制度による人材育成も大事だが、ジョブローテーションによる人材育成支援も検討してほしい。
対応4.新卒や中途社員の継続採用
年功序列を維持するには、そもそも会社が継続的に事業収益を確保することが必要だ。そのためには、既存社員の成長だけでなく新入社員の定期的な採用によって、事業の将来を見据えた人材確保を継続しなければならない。
対応5.社員のスキル向上を継続的に支援する
年を経るごとに上昇する人件費をねん出するためには、会社はそれに応じた収益をあげ続けなければならない。これから先も変わり続ける市場やテクノロジーの変化に対応するためにも、社員には年齢によらずに継続的な成長が求められる。そのため会社側は、社員のスキル向上を継続的に支援し続けなければならない。
年功序列制度に対する社員の評価
市場のグローバル化や働き方改革などが進む中、年功序列制度の運用に関して企業側に柔軟な対応が求められているが、年功序列の賃金体制に対して社員はどのような考えを持っているのだろうか。
年功序列型制度に関する社員の意識については、内閣府の『令和元年度年次経済財政報告』で触れられている。
「年功序列型制度に対する意識」のグラフを見るとわかるように、年功序列に対してデメリットを感じているのは、30~40代に多い。これに対して、50代から64歳まではメリットとデメリットの双方が多いものの、メリットを感じている層の方が多いように見受けられる。
性別に注目すると、女性のほうが圧倒的に年功序列にデメリットを感じているとわかる。これらの結果から、若年層や女性が年功序列制度に対して何らかのデメリットを感じており、制度の見直しを望む傾向が高いと考えられる。