年功序列制度の廃止に向けた取り組み

賃金制度の不利益変更には社員の同意が必須であり、合理的でなければならない。そのため、制度変更に際しては最低限以下のような取り組みが必須となる。

取り組み1.社員に年功序列の廃止について説明する

賃金制度変更では就業規則の変更が必要であり、労働組合や社員を代表する者の合意は不可欠だ。まずは、社員に対して賃金制度変更の説明を行う。特に、高齢社員は不利益変更と受け止めやすいため、十分な説明が必要だろう。

取り組み2.労働組合からの合意を得るために交渉を繰り返す

賃金制度の変更に際しては合理的な変更理由が必要であり、社員の納得が得られるまで交渉を繰り返す。年功序列の廃止が必要な理由はもちろん、賃金制度変更による社員へのメリットやデメリットを説明しなければならない。

取り組み3.就業規則を改訂して労働基準監督署に提出する

労働組合が納得したら、就業規則の該当条文を変更したうえで、変更届と労働組合からの意見書を労働基準監督署に提出する。

取り組み4.変更後の就業規則を社内で周知する

就業規則の改訂が受理されたら、改訂版の就業規則を全社員に周知する。その後、成果主義への移行期間などを設けたうえで制度を実施していく。

年功序列制度の撤廃に関する訴訟事例の中には、ハクスイテック事件や県南交通事件など、変更の合理性が認められた判例もあるため、参考にして欲しい。

参考:成果主義人事制度への変更(厚生労働省中央労働委員会)

取り組み5.急にではなく徐々に成果主義に移行する

これまで年功序列制度を導入していた会社が急に成果主義に移行すると、社員からの反発を招く恐れがある。また、人事評価制度が大きく変わってしまうため、制度として的確に運用できているか確認し、自社の人事評価にマッチした形に修正を加えていくことも必要だ。まずは、特定の役職や職種に限定適用し、徐々に適用範囲を拡大していくのが望ましいだろう。

年功序列の崩壊は起こるのか

年功序列に関しては、日本の少子高齢化や非正規雇用者の増加もあり、導入する企業が減少傾向にあることは説明した。それだけでなく、グローバル化によって国際競争が激化している状況では、高度経済成長期のような評価制度を維持することが困難な企業もあるだろう。

そもそも、年功序列は人事評価制度として正式に決められたものではなく、「人」に対する評価が重視される日本において、加齢と勤続年数増加により経験やスキルは基本的には高まって、下がることはないという前提で成り立っている。

IT系など、参入している市場によっては、技術はもちろん需要の変化も激しく、時代の変化に対応していく必要があるだろう。そのような産業においては、年功序列を維持し続けることは難しく、成果主義を導入する必要に迫られることもあるだろう。

全ての企業で年功序列が崩壊するわけではなく、自社の事業と照らし合わせた上で、年功序列と成果主義の選択をする必要がある。