年功序列の廃止が進んでいる5つの理由
年功序列は、時代の変化とともに継続が難しくなっており、制度廃止を始めた大手企業も出てきている。年功序列は、なぜ廃止が進んでいるのだろうか。
1.終身雇用の維持が難しい
年功序列とセットになっている終身雇用だが、変化が激しい現代では、終身雇用によって社員を一生雇用し続けられるだけの余力が企業にあるとは限らない。トヨタ社長が「終身雇用の維持が難しい」と語ったように、雇用維持のためには相応の収益が必要であり、社員にも生産性を向上させる意識が欠かせなくなってきている。
2.少子高齢化に伴う人口減少
少子高齢化が進む日本では、既存社員の高齢化が進む中で、20代や30代などの若手社員の数は減少しており、中小企業では人材確保が難しくなっている。そのため、今までと同じレベルの年功序列を維持すると、企業側の人件費が経営を圧迫することになりかねない。
3.経済のグローバル化
経済のグローバル化が進む中、日本企業の競合相手は世界中に拡大しており、その中で競争優位性を保して成長し続けるには、変化に対応できる多様な人材の確保が欠かせない。そのため、中途採用はもちろん、外国人人材の採用に積極的に取り組む企業も増え始めている。
4.急速なデジタル化による人材流動性の向上
IT技術の進歩による急速なデジタル化は2022年も続いており、今後もデジタル技術は進歩し続けるだろう。DXも推進される中で、社内で使用している情報システムやツールのレベルも上がり、業務標準化によって人材流動性も向上すると見込まれている。
また、内閣府の『就労等に関する若者の意識』によると、転職に否定的な人は2割に満たず、転職に対して肯定的な人も増えていることから、今後さらに人材流動性は高まるだろう。
年功序列制度を廃止する際の注意点
自社の年功序列制度を廃止して、成果主義の導入を検討している経営者もいるだろう。しかし、年功序列から成果主義への転換は、社員の生活に関わる大きな変更である。そのため、制度変更の注意点も知っておきたい。
年功序列の廃止は賃金制度の変更にあたる。就業規則や労働協約、社員との個別労働契約の変更が不可欠だ。そのため、これらを無視して一方的に変更できない。
すべての社員が年功序列の廃止を望むとは限らないため、賃金制度変更を不利益と考える社員も一定数いるだろう。そのような不利益変更は、「労働契約法第8条及び9条」に社員の合意が必須であることが明記されている。
労働契約法違反による直接的な罰則はないが、アーク証券事件のように年功序列制度の変更が認められなかった訴訟事例もあり、社員の合意を得なくてはならない。