年功序列は、年齢が高く勤続年数が長い従業員ほど好待遇になる人事評価制度である。今回は、年功序列の意味や適用状況、成果主義との違いについて解説する。年功序列を廃止するときの注意点も参考にしてほしい。

目次

  1. 年功序列とは
    1. 年功序列は日本だけの人事制度なのか
  2. 年功序列がうまれたのは日本型雇用システム
    1. 年功序列と終身雇用は安定した生活の基準だった
  3. 年功序列と成果主義制度の違い
    1. 成果主義制度とはどのような人事評価方法か
    2. 年功序列と成果主義制度の普及状況
  4. 年功序列のメリット3つとデメリット3つ
    1. 年功序列のメリット3つ
    2. 年功序列のデメリット3つ
  5. 年功序列の維持に欠かせない対応5つ
    1. 対応1.持続的な業績向上と成長
    2. 対応2.年齢や性別による賃金格差是正
    3. 対応3.ジョブローテーションによる人材育成
    4. 対応4.新卒や中途社員の継続採用
    5. 対応5.社員のスキル向上を継続的に支援する
  6. 年功序列制度に対する社員の評価
  7. 年功序列の廃止が進んでいる5つの理由
    1. 1.終身雇用の維持が難しい
    2. 2.少子高齢化に伴う人口減少
    3. 3.経済のグローバル化
    4. 4.急速なデジタル化による人材流動性の向上
  8. 年功序列制度を廃止する際の注意点
  9. 年功序列制度の廃止に向けた取り組み
    1. 取り組み1.社員に年功序列の廃止について説明する
    2. 取り組み2.労働組合からの合意を得るために交渉を繰り返す
    3. 取り組み3.就業規則を改訂して労働基準監督署に提出する
    4. 取り組み4.変更後の就業規則を社内で周知する
    5. 取り組み5.急にではなく徐々に成果主義に移行する
  10. 年功序列の崩壊は起こるのか
  11. 年功序列廃止の動きをした企業の事例5つ→まとめの前に移動する
    1. 事例1.ソニー
    2. 事例2.パナソニック
    3. 事例3.資生堂
    4. 事例4.ファーストリテイリング
    5. 事例5.ソフトバンク
  12. 年功序列に関するQ&A
    1. Q.年功序列ってどういう意味?
    2. Q.年功序列はなぜなくなった?
    3. Q.年功序列はなぜ生まれた?
    4. Q.年功序列の特徴は?
    5. Q.年功序列と成果主義はどちらがいい?
  13. 年功序列と成果主義を自社の事業環境に合わせて選択
  14. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
mimi@TOKYO/stock.adobe.com
(画像=mimi@TOKYO/stock.adobe.com)

年功序列とは

「年功序列」とは、「年功賃金」とも呼ばれるように、年齢や勤続年数が高い社員ほど「賃金」が高くなり、同時に課長や部長といった「役職」にも就任しやすい人事制度だ。終身雇用が一般的である日本では、よく知られた言葉である。

年功序列は、勤続年数が長いほど経験によって知識が増え、技能レベルが向上するため、会社への貢献度が高くなるといった観点からは、合理的な人事制度だ。

『労働経済の分析(2013年版)』では、日本と欧米諸国の勤続年数のデータが紹介されている。

日本と欧米諸国の勤続年数のデータ
(画像=『平成25年版労働経済の分析』P157 第3-(2)-2図)

そもそも、日本は他国に比べて長期雇用の色合いが強く、アメリカなどの成果主義国に比べて、勤続年数が10年以上の労働者の割合が明らかに高い。これは、一つの会社に留まる期間が長く、転職などの労働移動が少ないことを示しており、日本の終身雇用制度の結果であると考えられる。

年功序列は日本だけの人事制度なのか

年功序列は、日本特有のシステムと思う経営者も多いかもしれない。では、平均勤続年数と賃金の関係を、日本と諸外国で比較してみる。先の『労働経済の分析』では、各国の年功序列制度の適用状況を確認できる。

各国の年功序列制度の適用状況
(画像=『平成25年版労働経済の分析』P158 第3-(2)-3図)

日本は、諸外国と比べても勤続年数に応じて賃金の上昇率が高く、年功序列が顕著だ。しかし、諸外国も勤続年数に応じて賃金は上昇傾向にあり、日本と同じように長期雇用の割合が高いドイツやオーストリアなどは、年功序列の傾向が強いことが見て取れる。

また、年齢別の賃金比較データでは、日本は50~59歳から急激に賃金が下落傾向にあり、年齢に着目した場合は、むしろドイツや英国の方が年功序列による給与設定の傾向が高い。これらから、年功序列は何も日本特有のシステムではないことがわかる。