年功序列廃止の動きをした企業の事例5つ→まとめの前に移動する

年功序列制度を廃止する動きをした大手企業いくつかある。ここでは、5社の事例を紹介する。

事例1.ソニー

ソニーは、ジョブグレード制という名の等級制度を導入し、役職と役割を明確にしている。人事評価制度でも、実績と行動を重視して業績級などに反映させる。社員のモチベーションや成長意欲を向上させたいのだろう。

事例2.パナソニック

パナソニックは、2014年10月から年功序列制度の廃止を打ち出しており、会社の業績や個人の実績を一定の範囲内で報酬に反映している。キャリアクリエイト制度など、社員の成長意欲を支援する制度も導入した。

事例3.資生堂

資生堂は「PEOPLE FIRST」にもとづいて、国内の管理職や総合職に対して2021年から成果主義制度に該当するジョブ型人事制度を導入した。
社員に求める専門領域を明確にしており、必要なスキルも「フィンクショナル・コンピテンシー」として示した。管理職だけでなく一般職にも役割や評価内容を明確化することで個々の成長を促していく。

事例4.ファーストリテイリング

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングでは、人事制度に「完全実力主義と評価制度」を掲げている。成果主義制度に不可欠とされる目標管理制度(MBO)では、半年ごとに目標設定を行っており、キャリア成長を目的として抜擢等による配属や異動を行う。

成果主義を実現しつつ社員のキャリア開発を支援する意味で、社内公募制度や自己申告制度などによる部署異動の流動化も図られている。

事例5.ソフトバンク

ソフトバンクでは、ミッショングレード制という名の成果主義による評価制度を導入している。実績だけでなく組織への貢献度や、ソフトバンクグループ社員としてのコア能力などが評価項目とされている。

ミッション定義書によって職種ごとの役割や習熟レベルが設定されており、社員のキャリア成長の方向性も示されている。

年功序列に関するQ&A

Q.年功序列ってどういう意味?

A.「年功序列」とは、「年功賃金」とも呼ばれる人事制度のことだ。年齢や勤続年数が高い社員ほど「賃金」が高く、課長や部長といった「役職」にも就きやすくなる。

日本では、高度経済成長期から終身雇用が一般的であり、勤続年数が長いほど知識が増えて技能レベルも向上し、会社への貢献度が高くなると考えられていたため、合理的な人事制度として多くの会社で長年採用されている。

Q.年功序列はなぜなくなった?

A.年功序列はなくなったわけでないが、市場のグローバル化が進み、DXなどデジタル技術の進歩と積極的な導入が進む中、年功序列では急速な変化に対応できるだけの人材確保ができなくなっている。

日本では少子高齢化も進んでいるため、限られた人材で市場の変化に対応しながら成長するために、優秀な人材を確保するための手段として成果主義の導入が進みつつある。

Q.年功序列はなぜ生まれた?

A.年功序列制度は、日本では高度経済成長の頃から広く採用されるようになった。経済成長期には、会社側も長期的な目線で社員を育成しており、持続的な成長に欠かせない営業力や技術力などの向上を図っていた。

年功序列によって、経験やスキルを蓄積して会社に貢献している中高年社員の給与が高くなれば、離職防止につながって収益の源泉となっているノウハウの流出を防ぐこともできる。また、会社側も社員の終身雇用を前提としており、総合的に見て年功序列で上昇した分の給与に対して、高い収益という結果を得られればいいという判断に基づいていた。

Q.年功序列の特徴は?

A.年功序列は、勤続年数が長く年齢が高いほど役職が上がり、給与待遇も高くなるという特徴がある。業務経験が長いほど相応のスキルや経験が蓄積され、会社内での役割レベルも自然に高まるという前提で制度運用されている。

Q.年功序列と成果主義はどちらがいい?

A.年功序列と成果主義にはそれぞれにメリットやデメリットがあり、一概にどちらがいいとは言えない。

年功序列は、勤続年数が長く年齢が高いほど待遇がいいが、若手は給与待遇が低いという一面があるため、成果主義を求めている優秀な若手を採用することが難しくなるだろう。逆に、成果主義は結果を出せる社員には望ましい制度だが、成果を数値化しにくい職種などの場合は、評価が難しいというデメリットもある。

業界や業種はもちろん、自社の人材戦略に応じて、どちらか一方を選んだり特定の職種のみに成果主義を導入したりするという方法も考えられるだろう。