この記事は2022年12月23日(金)に「羊飼いのFXブログ」で公開された「西原宏一氏の現在の相場観とFXトレード戦略」を一部編集し、転載したものです。


FXトレード戦略
(画像=toshi/stock.adobe.com)

2022年12月23日(金)の午前8時すぎに、現役トレーダーの西原宏一さんから聞いた最新の相場観と戦略を紹介する。

西原宏一
青山学院大学卒業後、1985年に大手米系銀行のシティバンク東京支店へ入行。1996年まで同行にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラーなどを歴任後、独立。ロンドン、シンガポール、香港など海外ヘッジファンドとの交流が深く、独自の情報網を持つ。

現在の為替相場の傾向や相場観

本日23日(金)が年内最後の記事となるため、簡単に今年を振り返り、来年の相場のテーマをピックアップしてみたい。

為替を中心にトレードしていると見落としがちだが、本年2022年は法定通貨以外の取引はかなり厳しい状況だった。FRBが連続利上げしたことから、米国株、米国債券とも下落。リスクアセットである仮想通貨も年間を通して上値が重い展開が続いている。

そんな中、通貨(米ドル)だけは大きく値を上げ、多くのヘッジファンドの収益の支えとなっている。ちなみに、グローバルに通貨といえば、基軸通貨である米ドルを指す。香港のファンドも資金管理は香港ドルではなく米ドルで管理している。

その米ドルを上昇させた要因は、FRBの連続利上げ予測。今年の米2年債利回りはFRBの連続利上げ予測を背景に年初の0.75%から4.7999%まで4.00%以上急騰している。これは過去に例を見ないほどの急騰。

米2年債利回りと米ドル/円相場は極めて高い相関性を保ってきたので米2年債利回りの高騰に呼応して米ドル/円も暴騰。結果、今年の米ドル/円は10月までに38円という極めて大きな値幅を伴って急騰した。

その後FRBのターミナルレートが5.00%前後になるとの予想が高まる中、米2年債利回りが4.799%まで高騰したため、2年債利回りはほぼターミナルレートの予測を織り込んだ展開。そのため、米2年債利回りと相関性の高い米ドル/円も150.00円レベルでトップアウト。

その後、米国のCPIが示すようにインフレが沈静化するに連れ、米ドル/円は反落。先週までに高値から18円も急落。その米ドル/円だが、今週さらに急落し、一時130.58円まで暴落。その要因は日銀の金融政策決定会合。

今週20日(火)の金融政策決定会合で日銀は長期金利の上限を0.5%に引き上げると発表した。これは日銀の事実上の利上げ発表となるため、米ドル/円はさらに大きく値を下げる。結果、米ドル/円はわずか2ヶ月で今年の高値から約22円も暴落し、一時130円台まで急落している。

現在の為替相場の戦略やスタンス

先月11月ころの段階で西原氏の来年2023年の米ドル/円のレンジはラフに130~150円(±5円)だった。仮に円高が加速すれば125円もあるとしていたが、年越し前に最初のターゲットである130円を達成してしまったことになる。

日銀が事実上の利上げをしたことはサプライズだったが、拡大する貿易赤字が縮小するわけではない。JPモルガンによれば、来年はさらに26兆円、対GDP比4.5%程度まで赤字額が膨らむことが予想されるとのこと。この点においては、高値から約22円も急落したレベルで米ドル/円をショートエントリーするのは難しい。

結果、現時点でも来年の米ドル/円の予想レンジは変わらず、ラフに130~150円(±5円)のままとする。来年は米ドル/円より、資源国通貨の豪ドルやNZドルが注目されると考えている。こうした通貨に関しては、また年明けの記事で述べたい。

▽米ドル/円の日足チャート

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(画像=羊飼いのFXブログ)

*:当記事は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。