この記事は2022年12月16日にSBI証券で公開されたNISA活用も?~連続増配期待の高配当利回り銘柄を一部編集し、転載したものです。
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NISA活用も?~連続増配期待の高配当利回り銘柄
2022年の株式相場も終盤に差し掛かってきました。日経平均株価は年を通じてみると一進一退の動きであったと言えるかもしれません。
世界的にインフレ・金利上昇が懸念される中、春先に勃発したロシア・ウクライナ戦争が、投資家のリスク許容度をさらに引き下げる状況が長引きました。ただ、年後半はインフレ鈍化の兆しが強まったうえ、上記戦争が小康状態となり、株価も落ち着きを取り戻す状態となりました。
2023年はどうなるのでしょうか。市場予想では、米国の金利上昇局面は年途中に終り、金融緩和局面に転じるとの見方が多いように思います。しかし、世界的に景気・企業業績が踊り場を迎える局面が先行する可能性が大きく、いったんは株価が下落する銘柄が増えるリスクもありそうです。
そうした中、上場企業の「配当」に焦点が当たる可能性もありそうです。2022年11月25日(金)の「日本株投資戦略」では、高配当利回り銘柄をご紹介しました。今回は、配当利回りが高いのみならず、連続増配の実績・期待を有する銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場
(2)時価総額500億円超
(3)証券・商品先物、銀行、保険は除く
(4)予想EPSを公表するアナリストが2名以上
(5)今期市場予想配当利回りが4%超
(6)過去3期連続で1株当り配当金が増加
(7)今期・来期ともに市場予想1株配当が横ばいまたは増加の予想
(8)信用取引規制銘柄に該当していない
図表1の銘柄は、上記(1)~(8)の条件をすべて満たしています。
なお、予想配当利回りは、年間配当(上期実績および下期予想配当)をすべて受け取ったものと仮定した時の通期予想1株配当を株価で割って求めたものです。
例えば日本曹達(4041)の場合、2023年3月末の株主に1株105円の期末配当が予想(Bloombergコンセンサス)されていますが、それを株価で割った数字は配当利回りとは言いません。
2022年9月末株主に支払われた1株90円の配当と合計した1株195円を株価4,150円で割った4.70%が、予想配当利回り(市場予想ベース)です。
2022年12月14日(水)時点において、日経平均採用銘柄の予想配当利回りは2.26%(日経算出)となっています。図表1の銘柄は予想配当利回りが4%超の銘柄に限定されていますので、相対的には「高配当利回り」が予想される銘柄とみてよいかと思われます。
掲載銘柄の投資ポイント
日本曹達(4041)
当社は化学品事業(工業薬品、化成品、機能材料、エコケア製品、医薬品・工業用殺菌剤)、農業化学品事業(殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、除草剤)他を展開しています。
売上構成比(2022年4~9月期)は化学品事業28.9%、農業化学品事業31.3%ですが、営業利益構成比は前者が26.6%、後者が47.3%であり、直近では農業化学品事業が稼ぎ頭になっています。
2022年4~9月期は利益率の高い農業化学品事業の好調もあり、営業利益は前年同期比157.3%増と伸長。これを受け、会社側は通期会社予想営業利益を123億円→161億円(前期比34.9%増)に上方修正しました。会社予想1株配当は180円ですが、市場では195円を予想しています。
なお、中期計画(2020~2029年度)の第1ステージ最終年度として位置づけられる2023年3月期は配当性向40%(ただし年間1株80円が下限)の方針です。今期会社予想1株利益556.01円に40%を乗じた金額は222円と計算されます。
アルテリア・ネットワークス(4423)
当社は、インターネット事業、ネットワーク事業、マンションインターネット事業を展開しています。主要都市部を中心に、全国的規模で光ファイバー網を有していることが強みとなっています。
2022年3月期~2026年3月期にかけて中期経営計画を展開し、基盤事業である通信サービスの最適化・最新化、新規事業の開発等を図っていく方針です。
2022年4~9月期は営業利益が41.9億円(前年同期比17.2%減)にとどまりました。前年同期はデータセンター事業の譲渡益12億円が発生し、反動が表れたためで、その影響を控除した調整後営業利益は増益となった計算です。通期予想営業利益は期初の予想(前期比1.1%増)が据え置かれています。
中計期間中は配当性向50%前後を維持するとともに、期初の会社予想配当(今期は1株60.52円)を下限とすることを基本方針としています。会社予想1株利益121.04円に50%を乗じた金額は会社予想1株配当と一致しています。
横河ブリッジホールディングス(5911)
当社の売上構成比(2022年4~9月期)は、橋梁事業49.6%、エンジニアリング関連事業47.2%となっています。前者においては橋梁業界のリーディングカンパニーとして、絶えず最先端の技術開発に取り組み、日本を代表する多くの橋梁工事に携わってきました。
2022年4~9月期は、営業利益が39.1億円(前年同期比36.4%減)となり、期初予想(60億円)を下振れました。工事引当金の増加傾向や、鋼材価格の高騰が響きました。
2023年3月期の予想売上高は1,640億円(前期比19.8%増)で期初予想が維持されましたが、予想営業利益は132億円(前期比10.5%減)で、期初予想の150億円から下方修正されました。
現在、2024年度を最終年度とする「第6次中期経営計画」を推進中で、最終年度に売上高1,870億円、営業利益183億円、ROE9%等が目標です。同計画中、配当性向を30%(今期会社予想1株利益・同配当金から計算される配当性向は34.6%)に引き上げ、状況に応じ自社株買いも実施する方針です。
コムシスホールディングス(1721)
当企業グループは日本コムシス、サンワコムシスエンジニアリング、TOSYS、つうけん、NDS、SYSKEN、北陸電話工事、コムシス情報システムの8事業統括会社、子会社88社、関連会社21社からなり、電気通信設備工事他を手掛けています。
2022年11月10日(木)に2022年4~9月期の決算について前年同期比47.6%減の営業減益を発表し、同時に2023年3月期の営業利益見通しを当初の400億円から380億円に下方修正しました。工事部材の納入遅延で工事の進捗が遅れていることや、原材料価格の高騰が響きそうです。
配当については「安定的・継続的な配当を中心としつつ、業績連動にも配慮していくことを基本方針」としています。今期会社予想1株配当は上期50円、期末50円で年間100円の見込みです。
2022年11月10日(木)取締役会で決議された自社株買い(2022年11月11日~2023年3月31日 上限100万株・20億円)を実施中で、11月30日までに18.35万株・4.53億円超が買い付けされたと報告されています。
アイチコーポレーション(6345)
高所作業車などの“はたらくクルマ”を作る特装車メーカーです。トラック式高所作業車では国内シェア首位(同社調べ、2022年3月期)であり、電力・鉄道・通信・建設などの大手インフラ企業が主要顧客となっています。
配当に関する基本的な考え方として、株主重視の観点から安定的な配当を行うことを掲げています。2023年3月期までは配当性向50%を目安としており、利益実績に基づき3連続(2020年3月期~2022年3月期)で増配を行っています。
前期(2021年3月期)の配当金実績は年間で34円です。今期(2022年3月期)は会社予想純利益が57億円(前期比+1.0%)とほぼ変わらない水準であるため、年間合計の配当予想は34円で据え置きの予定となっています。
アサヒホールディングス(5857)
貴金属や希少金属をリサイクルし、販売している企業です。日本は資源に乏しい国であり、金やプラチナ等を鉱山から採取するのは非常に難しいのが現実です。
しかし、“都市鉱山”といった電子機器や家電製品に含まれている貴金属やレアメタルの埋蔵量は世界トップレベルの規模と称されています。当社はこういった都市鉱山等から回収し、資源を取得しており、SDGs銘柄としても注目されています。
2024年3月期が最終年度に当たる中計では、配当性向に関しては40%を目途としており、配当水準を目減りさせないことを掲げています。
前期(2022年3月期)までで、5期連続で増配を実施しています。ただ、今期(2023年3月期)に関しては、中間決算発表と同時に純利益予想が下方修正されています。理由としては、関連会社が特許侵害を裁判で言い渡され、損害賠償の一部を損失計上したことがあったようです。
今期純利益見通しは、72.9億円(前期比24.4%減)となっています。配当金額は前期から据え置きで、中間配当45円、期末配当(予想)45円の合計90円の予定です。
三洋化成工業(4471)
多様な性能・機能を発揮する化学品(パフォーマンス・ケミカルス)の専業メーカーです。一部を具体的にご紹介すると、紙おむつ等に使われている高吸水性樹脂が挙げられ、同社は高吸水性樹脂を世界で初めて工業生産を開始した企業でもあります。電子部材から、化粧品、医療に利用するものまで非常に幅広い領域で製品展開を行っています。
配当性向は30%以上をめどに、中長期的な配当水準の向上を目指しています。前期(2022年3月期)までで8期連続で増配を実施していますが、今期(2023年3月期)は前期(2022年3月期)と同額の170円で据え置きの予定です。
今期(2023年3月期)見通しは、原材料の高騰等で営業利益は前期比7.3%減ですが、為替差益で純利益は同34.3%増となっています。1株当たりの当期純利益は407.81円(当初は385.32円)で前期実績の303.76円から増加しています。
また、過去では業績推移が思わしくないときでも増配した時がありました。以上を踏まえると、今期期末配当の増額余地は残存していると考えられそうです。
積水ハウス(1928)
「住」に特化したバランスの取れた4つのビジネスモデルを持つ企業です。従来からある戸建住宅事業が含まれた請負型ビジネス、都市開発等を行う開発型ビジネス、米での住宅販売や物件売却が順調な国際ビジネス、不動産フィー事業(賃貸・仲介等)やリフォーム事業が属するストック型ビジネスがあります。高付加価値提案等の事業戦略が奏功し、今期(2023年1月期)業績も堅調に推移しており、過去最高を達成する見込みです。
中期的な配当性向は40%以上としていますが、前期(2022年1月期)は63.29%、前々期(2021年1月期)は81.85%でした。今期の年間予想配当金額は、104円と業績と連動して過去最高となる予定です。予定通りに配当が実施されれば、11期連続の増配にあたります。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。