有効な後継者育成の方法

後継者育成は、早い段階で進めていかなければならない。中小企業においては、後継者がいないことで事業継続を断念するケースも多い。なかには、経営者が年齢を重ねてから後継者の育成を始めることもある。しかし経営者の死亡など準備ができていない段階で子どもが企業経営を行っても、事業継続は難しく廃業に追い込まれるケースもあるため注意が必要だ。

早い段階からの後継者育成のプログラムを実施

自社に勤務する有能な社員のなかから後継者を選ぶのであれば、業務内容や専門知識を熟知しており、業務への支障が生じる可能性は少ない。しかし経営者の子どもに後を継がせることが決まっているなら、後継者育成の前段階で社員としての業務経験を積ませることも必要となる。

後継者となる子どもに甘えが生じないように社外の企業に就職させて、社会人としての経験を積ませてから自社に呼び入れる方法をとるのもよいだろう。いずれにしても早い段階から後継者候補を選び、後継者育成を手がけることが重要である。

事業承継で会社の株式(経営権)や資産をどのように承継するかは、後継者を身内から選ぶか、社内から選ぶかによって大きく異なる。相続・譲渡・贈与など税制面の違いもあるため、時には専門家に相談することも必要だ。

少なくとも後継者育成のプログラムを作成するには、実務面の課題と実務面以外の課題を解決する内容にする必要がある。

【後継者育成のためのプログラム作成と実施までのステップ】

1.企業の経営方針を再確認

創業者の経営理念と事業の目的を見直し、社内・社外における企業の価値観を分析したうえで経営方針を明確にしておく。経営者の感覚的な経営理念や経営方針を後継者が理解することは難しいため、見える化することが必要だ。

2.後継者候補の検討と選出

子どもなど親族から選ぶか、社内の生え抜きから選ぶかなど方針を決定したら、候補者を選ぶ。長期的な育成がカギとなる。

3.後継者候補の育成計画を作成

技術面や経理・財務・税務面の指導、社内OJT、社外セミナーの参加など実務面の課題をスケジュール化して育成計画を作成するのがよいだろう。経営者の年齢なども考慮し、早い段階からの育成が重要だ。

4.経営幹部としての参加

社外・社内の人間関係のつながりなど、実務面以外のものも引き継ぐ必要がある。社内・社外の協力者や金融機関との交渉、経営会議の同席、社外の管理職研修への参加など経営幹部として社内・社外の認識を得ることも大切だ。

5.企業経営を任せ実践

経営参加や現経営者による直接指導など企業経営を任せて実践させることで、経営者としての経験を積み、経営の判断力を養うことが期待できる。

M&Aによる事業承継も有効

事業承継には「親族内承継」「内部昇格」「外部からの招へい」「事業譲渡(M&A)」といった方法が考えられる。子どもが親の会社を引き継ぐことを望まないケース、後継者が見つからず廃業するケースなどもあり、近年は中小企業においてもM&Aが盛んに行われている傾向だ。M&Aによる事業承継により、後継者候補を外部で探すこともできるだろう。

事業譲渡によるM&Aでは、経営の継続性が保てないこともあるが、事業譲渡益によって創業者が利益を得られるケースもあり、後継者がいなければ検討する価値は大いにある。一部譲渡も可能であり、事業縮小時だけでなく事業拡大時にもM&Aは活用できる。

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