ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みは、投資先や取引先を選択する上で投資家のみならず、大手企業にとっても企業の持続的成長を見極める視点となりつつある。本企画では、エネルギー・マネジメントを手がける株式会社アクシス・宮本徹専務取締役が、各企業のESG部門担当者に質問を投げかけるスタイルでインタビューを実施。今回は、森永乳業株式会社サステナビリティ本部サステナビリティ推進部長の浜田和久氏にお話を伺った。

森永乳業株式会社は、日本を代表する乳製品メーカーの一つ。100年以上にわたり事業を継続し、現在はグループとして牛乳、飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズを始め、育児用ミルク、栄養補助食品、流動食など幅広い商品を展開している。

同社はサステナビリティ経営にも積極的で、CO2排出量削減や資源循環など資源と環境に配慮した取り組みも進めている。本稿では環境面のトピックを中心に、同社の施策や成果などについて紹介する。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

森永乳業株式会社
浜田和久(はまだ かずひさ)

――森永乳業株式会社サステナビリティ本部サステナビリティ推進部長
1985年の入社以後、機能性素材事業企画を始め情報システム、IT改革を推進。 2020年にサステナビリティ推進部の前進であるCSR推進部長となり、 サステナビリティ経営へシフトするべく2021年6月より現職。社内ポータルではブログ「NEXT100」を定期的に発信し、多くのファンを持つ。 週末は地域の青少年活動を企画・運営するなど、公私ともにサステナビリティ活動に励んでいる。

森永乳業株式会社
森永乳業グループは1917年創業以来、「乳」の優れた力を最大限に活用することに取り組み、赤ちゃんに向けた育児用ミルクをはじめ、高いブランド力を確立している「マウントレーニアカフェラッテ」、「ビヒダスヨーグルト」、「ピノ」など幅広い世代に独自性高い商品の開発やサービスをお届けしています。
また「ビフィズス菌BB536」や乳たんぱく質「ラクトフェリン」などの機能性素材も長年研究しており、自社商品での展開のみならず国内外BtoBビジネスを展開しています。
https://www.morinagamilk.co.jp/

宮本 徹(みやもと とおる)
―― 株式会社アクシス専務取締役
1978年生まれ。東京都出身。建設、通信業界を経て2002年に株式会社アクシスエンジニアリングへ入社、現在は代表取締役。2015年には株式会社アクシスの取締役、2018年に専務取締役に就任。両社において、事業構築に向けた技術基盤を一貫して担当。

株式会社アクシス
エネルギーを通して未来を拓くリーディングカンパニー。1993年9月設立、本社は鳥取県鳥取市。事業内容はシステム開発、ITコンサルティング、インフラ設計構築・運用、超地域密着型生活プラットフォームサービス「Bird(バード)」の運営など、多岐にわたる。

目次

  1. 森永乳業株式会社の再エネ・脱炭素に対する取り組み
  2. 森永乳業株式会社が考える脱炭素経営の社会・未来像
  3. 森永乳業株式会社のエネルギー見える化への取り組み

森永乳業株式会社の再エネ・脱炭素に対する取り組み

アクシス 宮本氏(以下、社名、敬称略):アクシス専務取締役の宮本です。弊社は鳥取県に本社を構え、エネルギーの見える化を含めて地域を活性化させるビジネスを中心に取り組んでいます。本日はよろしくお願いいたします。

森永乳業 浜田氏(以下、社名、敬称略):森永乳業の浜田です。弊社は乳業会社として、お子様からお年寄りまで幅広い世代に向けた商品を販売しています。私はシステム部門の責任者を長らく務めていましたが、2020年に当時のCSR推進部長となり、2021年6月よりサステナビリティ経営にシフトするべく、サステナビリティ推進部長に就任いたしました。

宮本:最初に、森永乳業様のESGや脱炭素に向けた取り組みと、その成果をお聞かせください。

浜田:森永乳業グループは売上高約5,000億円、従業員数約7,000人(2022年3月末)の会社です。2017年に創業100周年を迎え、お客さまや社員などすべてのステークホルダーのために森永乳業は存在しているとの意味を込めたコーポレートスローガン「かがやく“笑顔”のために」を発表しました。2019年には10年先を見据えた「森永乳業グループ10年ビジョン」を策定し、「『食のおいしさと・楽しさ』と『健康・栄養』を両立した企業へ」「世界で独自の存在感を発揮できるグローバル企業へ」「サステナブルな社会の実現に貢献し続ける企業へ」という3つのありたい姿を掲げました。

2022年5月には「サステナビリティ中長期計画2030」を発表し、サステナビリティビジョン「森永乳業グループは『おいしいと健康』をお届けすることにより豊かな“日常・社会・環境”に貢献し、すべての人のかがやく笑顔を創造し続けます」を公表。「おいしいと健康」をお届けするために必要な土台として「食と健康」「資源と環境」「人と社会」という3つのテーマを挙げ、それぞれのテーマに対して計7つのマテリアリティを特定しました。

▼「サステナビリティプラン体系図」

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

マテリアリティは以前より特定してきましたが、中期経営計画で掲げた「社会課題の解決と収益力向上の両立」というテーマと連動する形で今回、新マテリアリティを再構築しました。その際は森永乳業グループを取り巻くさまざまな課題を検証し、自社とステークホルダー(投資家、消費者、NGO、政府など)の2つの視点で整理・評価しました。そうすることで、食の安全・安心や気候変動への対応、食品企業に求められる包装容器の問題など、自社だけでは気づかないことが重要ポイントだとわかりました。

これらを踏まえて、最終的には「健康への貢献」「食の安全・安心」「気候変動の緩和と適応」「環境配慮と資源循環」「持続可能な原材料調達」「人権と多様性の尊重」「地域コミュニティとの共生」の7つにまとめました。ポイントはサプライチェーンとの連携です。3つのテーマとそれに係るマテリアリティを達成するには森永乳業グループだけでなく、ステークホルダーの皆様との協力関係が不可欠だと考えています。

▼7つのマテリアリティと各テーマで目指す姿

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

それぞれのテーマにおいては、KPIも設定しました。「食と健康」では、「森永乳業グループならではの、かつ高品質な価値をお届けすることで、3億人の健康に貢献します」を目指す姿とし、このテーマに紐づく「健康への貢献」では健康課題に配慮した商品の売上増(海外含む)1.7倍(2021年比)、「食の安全・安心」ではグループ全生産拠点で食品安全管理の規格であるGFSI認証を取得することなどを掲げています。

「資源と環境」では「サプライチェーンパートナーとともに永続的に発展するため、サステナブルな地球環境に貢献します」を2030年度までの目指す姿とおき、「気候変動の緩和と適応」「環境配慮と資源循環」「持続可能な原材料調達」のマテリアリティごとに取り組み課題を設定しました。

例えば「気候変動の緩和と適応」ではScope1+2のCO2排出削減率38%以上(2013年比)とScope3のGHG排出削減率10%以上(2020年比)を目標にし、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すとしています。また、今後起こりうる気候変動が弊社の事業活動に与える影響について評価し、それに先回りして対応していくことも進めていきたいと考えています。

「環境配慮と資源循環」では石油由来のバージンプラスチック使用量削減率25%以上(2013年比)や、産業廃棄物の再資源化など、「持続可能な原材料調達」においては認証原料への切り替えや原材料サプライヤーへの支援を目標にしています。

▼「資源と環境」の中長期目標(2030年度)

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

「人と社会」では「人権や多様性の尊重」において、サプライチェーン全体での人権方針の継続遵守や女性管理職比率10%以上、男性育休取得率100%など、「地域コミュニティとの共生」では各事業所での地域活動への参加者数延べ10万人(2021年~)や、地域活動を実施する事業所の割合(海外含む)100%としています。

宮本:御社の「おいしい健康」を届けるテーマから、マテリアリティまで非常に強固な指針を組み立てていらっしゃいますが、社内での推進体制はどのようにされているのでしょうか?

浜田:2021年6月に全社横串、かつ社長直轄のサステナビリティ本部を新設し、CSR推進部をサステナビリティ推進部へと名称を変更し、先ほどご紹介したサステナビリティ中長期計画2030を策定しました。さらに、これを進めるために社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会や事務局会議、専門部会なども設置しています。

▼森永乳業のサステナビリティ経営推進体制

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

また、森永乳業グループの特徴だと思いますが、個々の事業所でのサステナビリティ活動を推進させようということで、グループ82組織にサステナビリティ推進リーダーを設置し、現場活動を活性化させることも始めました。ESGやサステナビリティといった非財務情報は外から見えにくいからこそ情報発信が重要であり、見える化にも努めています。こういった取り組みを約1年続けてきました。

宮本:サステナビリティ中長期計画は、どのようなプロセスを経て策定に至ったのか、その辺りを教えていただけますか。

浜田:各本部からエース人材を集めてSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)チームを立ち上げ、議論を重ねました。単にそのメンバーが集まるのではなく、経営幹部とも深いディスカッションを重ね、実現性やKPIの妥当性について話し合っています。損益に対する影響も大きく、どう折り合いをつけるかも経営幹部としっかり詰めていきました。これにより、リスクだけではなくチャンスを捉えてサステナビリティ経営に舵を切ることができたと思います。

宮本:サステナビリティ推進リーダーを設置するなど、事業所でもサステナビリティ活動を推進しているとのことですが、CO2排出量削減や脱炭素に関連する具体的な取り組みについて教えてください。

浜田:例えば2022年で開催5年目を迎えた社内表彰制度「Morinaga Milk Awards」にて2021年に「サステナビリティ大賞」を新設しました。初年度は東京多摩工場のGHG排出削減の取り組みで、東京都の総量削減制度におけるトップレベル認証を3期連続で取得したことが大賞となりました。3期連続で認証されたのは民間の工場では唯一です。他にも神戸工場では2009年にバイオマス熱利用設備を導入し、コーヒー飲料などの生産プロセスから発生するコーヒーかすなどのさまざまな残渣をバイオマス燃料として活用しています。

乳業工場では衛生を保つための設備の洗浄などで、排水も多く発生します。排水で周辺環境を汚さないよう排水の浄化には特に注意して管理をしています。食品工場の排水は製造品目等により細かな違いがあり、それぞれの工場にあった排水処理施設が必要になります。こうした背景もあり、グループ会社の森永エンジニアリング(株)では排水処理設備の販売を行っており、個々の工場にあった排水処理施設を提案しています。これらは弊社グループ内の工場で使用しているだけでなく、約300社の取引先にもご活用いただいています。

排水処理の発展形として新しく進めているのは、牛のふん尿対策です。現在、ふん尿は自然発酵させ、たい肥化されていますが、その処理の過程でメタンや一酸化二窒素といった温室効果ガスが発生するばかりでなく、発酵を進めるためのかき混ぜに人手が必要であったりと酪農家にとっての大きな課題となっています。その対策として、メタン発酵の仕組みと工場で使用している排水処理技術を組み合わせたふん尿処理システム「MO-ラグーン for Daily」の取り組みを進めています。まず、2023年春に弊社グループの牧場に導入し、結果を確認したのち、システムそのものを全国の酪農家さんへ提供していくことを考えています。これにより、牧場全体で排出されるメタンを最大30%削減し、酪農家さんが抱える労働力不足にも貢献できるのではないかと考えています。

▼「MO-ラグーン for Daily」の導入

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

酪農家さんとの関わりでは、弊社利根工場で製造した無菌充填とうふの製造時に発生するおからを酪農家さんに牛の飼料として提供しています。この取り組みは、食品の有効活用の事例として2017年度の「第5回食品産業もったいない大賞」にて審査委員会委員長賞を受賞しました。また、この豆腐は常温で200日間以上の保存が可能なため買い置きや災害時の活用などもできるものです。同じように常温で保存できる牛乳もありますので、こちらも使用する用途や状況に応じてご活用いただければと思っています。
プラスチックは安くて高機能なため容器に使用させていただいていますが、様々な課題が顕在化してきていることを受け、プラスチックの減量にも取り組んでいます。2022年3月より一部商品のキャップやストローなどをバイオマスプラスチック配合品に切り替え、これにより年間約47トンの石油由来プラスチック削減を見込み、同年5月からは利根工場のドリンクヨーグルトの新製造ラインでペットボトル容器を軽量化し、石油由来プラスチック使用量を15%削減しました。

▼プラスチック対策

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

宮本:弊社でも鳥取県に本社を置く企業として、地域コミュニティとの密接な関係を意識し、様々な事業・活動をしています。

浜田:弊社では事業所がある地方自治体と地域連携協定を結び、乳幼児向けの粉ミルクや高齢者用の食品などを災害時に提供したり、地域の健康相談窓口を設けたりしています。全国の小・中学校とオンラインでつなぎ、牛乳の生産の話や環境に対する取り組みを紹介し、神戸工場ではオンライン見学も実施しています。2022年4月から9月にかけては、出前授業や企業訪問で約2,000名の児童・生徒にご参加いただきました。

森永乳業株式会社が考える脱炭素経営の社会・未来像

宮本:近年はDXやIoTが進み、スマートシティのような構想も現実味を帯びてきました。そのような未来において、御社は脱炭素社会をどのようにイメージしていらっしゃいますか。

浜田:脱炭素社会とは、先進国や新興国、CO2を多く排出する企業、そうでない企業にかかわらず、すべての国・企業がCO2排出に関して責任を持ち、ビジネスに取り組む社会だと考えています。

実現に向けたポイントは2つあり、1つは事業活動としての炭素排出に関しては低炭素化を進めることです。生産活動を進めるにはエネルギーが欠かせず、今の技術レベルでは非化石燃料にすべてシフトするのは現実的でありません。非常に難しい問題ですが、できるだけ化石燃料を使わないエネルギー構造にして、低炭素化を進めることが求められます。もう1つは事業活動で排出されたCO2を吸収・活用するなど、循環させる取り組みです。これに関してはまだ技術が確立しておらず、炭素貯留などの進展を待ち、活用することが重要と考えています。

よって、現状としてはできるところから取り組んでいくという考えです。食品製造においては、殺菌など熱の利用は不可欠ですが、これらの熱はボイラーで作っています。この熱を作るための燃料を重油から天然ガスに切り替えを進めてきました。ほぼすべての工場で切り替えは完了し、多くの炭素負荷を軽減しましたが、天然ガスも化石燃料ですから、今後は電化や水素エネルギーといった新技術の活用を検討しています。

脱炭素社会においては、炭素排出量の見える化も重要です。もちろん、環境に限らず人権や多様性の取り組みについても目標を設定し、実行してどうなったかを開示する必要があり、特に炭素排出量の見える化にはDXが必須でしょう。

さまざまなデータの収集・活用が求められますが、自前で変えていくのは難しいため、サードパーティーを活用したクラウド化は重要な要素だと思います。弊社では20年前から各工場で見える化には取り組んでいて、かつてはボイラーに使った重油の量やCO2排出量、天然ガスに替えてからの違い、電力の換算係数など、従前から目標を掲げて削減を進めてきました。今後はさらに精度を高めたいと思います。

他にも気象予測情報を活用してアイスクリームや飲料の生産量を計画するなど、データ活用も発展させたいです。企業単体で実現するのは困難ですから、サプライヤーの皆様と協力しながら形にしなければなりません。

宮本:先ほど情報発信の重要性に触れていただきましたが、ESGや脱炭素社会の実現に向けた情報公開やプロモーションをする際に心がけておられる点はありますでしょうか。

浜田:私はシステム部門に在籍しているときから、経営幹部に「森永乳業は情報発信が下手だ」、外部のコンサルティングファームの方に入っていただく際も「これだけ良いことをしているのになぜ言わないのか?」と言われてきました。

これには意識付けが重要で、「言わぬが花」といった日本の文化や美徳から脱却する必要があります。むしろ外部に情報を発信する前提で、さまざまな取り組みを組み立てることが肝心ではないでしょうか。その際は個々のことではなくストーリーを立てて、「これにより将来どうなるのか」まで見据えた情報発信を心がけることが肝心です。

森永乳業株式会社のエネルギー見える化への取り組み

宮本:脱炭素を実現するには、電気やガスなどの使用量を表示・共有するエネルギーの見える化が必須といわれていますが、御社ではどのようなことに取り組まれていますか。

浜田:20年近い取り組みで、各工場におけるエネルギーの使用量やCO2排出量は算定してきました。統一のルールは設けていますが、各工場で作る品目やプロセスは異なるので、個別のデータを収集しています。収集方法がバラバラであったことが課題でしたが、クラウドサービスの導入によって解決しました。今後はしっかり分析して、個別総和になりがちなこところを全体最適につなげられないかと考えているところです。

一方でエネルギーだけではなく、さまざまな資源をどうしていくかについても今後の大きな課題ですし、大もとのエネルギーデータの収集も手間がかかるため、効率化を進めなければなりません。

さらに、脱炭素を進めるとなるとインセンティブを設ける必要もあります。それもあって、2022年8月には環境省による支援事業「令和4年インターナルカーボンプライシング(ICP)を用いた投資決定モデル事業」に弊社が参画することになりました。ICPとは企業内部で見積もる炭素の価格のことで、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組みです。省エネ推進へのインセンティブ、収益機会とリスクの特定、あるいは投資意思決定の指標などとして活用され、近年は導入する企業が増えていますが、弊社も今回の事業を通じて、2023年度から社内での運用を目指しています。

炭素排出=コストの排出であり、炭素排出削減=コスト削減につながると理解できれば、現場にとって強力なインセンティブが働くはずです。単に排出量を計測・削減するのではなく、経済価値をセッティングしてドライブさせたいと思います。商品ごとの炭素排出量を把握して、「この商品は売れているが炭素も多く出している」とわかれば販売を見直すなど、意思決定の一助になるでしょう。

宮本:サプライチェーンに対する、脱炭素の取り組みに関してはどのようなことを促していきたいといったお考えはありますか。

浜田:弊社にはサプライヤーガイドラインがあり、これをもとに人権や調達に関した説明会を実施しています。2022年は4月末に200社を対象に、オンラインで説明会を行いました。この流れで、主要なサプライヤーには脱炭素やエネルギーの見える化についてヒアリングを進めることを考えています。ご相談しながら一緒に取り組みを進め、意識を高めていくことが大切です。

宮本:最後の質問です。現在は多くの機関・個人投資家がESG投資に関心を寄せています。このような背景から、投資家の方が御社を応援することの魅力と考えておられる部分についてお聞かせください。

浜田:サステナビリティ中長期計画2030の枠組みでご紹介したとおり、森永乳業グループがお届けしたい価値は「食と健康」であり、その土台として「資源と環境」や「人と社会」を掲げています。これを進めるために、弊社は3つのことを実践する必要があります。

1つ目は、食と健康の価値をもっと高めること。2つ目は脱炭素を含めた環境負荷を軽減すること。3つ目は、日本における乳業界の大手企業として酪農業界に対する責任を果たしていくことです。そのためには、先ほど挙げた「MO-ラグーン for Daily」の研究はさらに進めていく必要があるでしょう。

食と健康に関しては、「健康5領域(基礎栄養、栄養改善オン、栄養改善オフ、機能性(こころ/あたま)、機能性(からだ))」で健康価値商品を拡大していこうと思います。弊社はビフィズス菌という他の食品企業にはない有効な素材を持っていますし、腸内細菌は無限の可能性を秘めています。以前は整腸や排便効果が謳われていましたが、その後の研究で例えば低体重出生児に対してビフィズス菌M-16Vを供給すると改善することがわかりました。

▼森永乳業の「健康5領域」

森永乳業株式会社
(画像提供=森永乳業株式会社)

腸と脳の関係も深いことがわかっていて、当社独自のビフィズス菌MCC1274が認知機能に効果があるとされています。このような、弊社が持つ健康に資する素材に注目していただきたいですね。

そもそも脱炭素社会の目的は、人びとが健康で幸せに暮らす社会を実現することにあると思います。それを支えるのが弊社の素材です。健康に貢献する商品を世の中に提供するとともに、脱炭素を始めとする環境や資源に関する責任もしっかり果たしてまいります。ご支援をいただけましたら幸いです。

宮本:人が幸せに暮らすには脱炭素に向かう必要があり、御社がそれに取り組む理由も理解できました。本日はありがとうございました。