隣国の韓国では「家計債務問題」と呼ばれる問題が深刻化しており、このことがユン大統領の支持率低下を招いています。家計債務とは家計が抱えている借金のことで、住宅ローンをはじめ自動車購入のためのローン、クレジットカードの利用残高、消費者金融から借入金などのことを指します。

世界的に見ても韓国はこの家計債務が突出しており、返済困難に陥る人の増加が社会問題になっています。その理由として韓国通貨当局による利上げが挙げられますが、長らく超低金利が続いている日本にとって他人事かというと、そうとは言い切れない部分があります。

本記事では、決して対岸の火事ではない韓国の家計債務問題を学び、日本でも今後起こり得るインフレや金利上昇に備える方法について解説します。

韓国で起きている家計債務問題とは?

日本も対岸の火事ではない?深刻な韓国の家計債務問題を理解しよう
(画像=mnimage/stock.adobe.com)

世界の主要国の中で韓国は家計債務が突出して高く、国際金融協会が発表した2022年第1四半期のデータではGDPに対する家計債務残高が世界第1位です。韓国の数値は104.3%で100%を超えているので、家計債務の残高がGDPを超えていることになります。

2位は米国の76.1%、3位は中国の62.1%となっており、日本は59.7%で4位です。この数値を見ても分かるように、家計債務残高がGDPを超えているのは韓国だけです。このデータから、韓国の家計債務がいかに大きいかがお分かりいただけるでしょう。

これだけ家計債務が大きいと、各家庭の返済負担はとても大きくなります。収入の大半を返済に回しているという家庭は決して珍しくはなく、このことが消費を減速させるといった悪影響につながっています。

消費の低迷はGDPにも表れており、前期の1.6%増から一転して2022年の1~3月期は消費が0.5%減少しています。家計債務が大きくなり過ぎると一国の経済を冷え込ませるほど負の影響をもたらすことが、改めて実証されています。

家計債務問題の背景にある韓国経済のジレンマ

前出のデータでは日本の家計債務が世界第4位と上位にランクインしており、決して小さな金額ではありません。しかし、日本と韓国とでは家計債務の規模だけではない大きな違いがあります。それは、金利です。

日本は長らく超低金利が続いており、2022年は世界各国がインフレ抑制のために利上げを行いましたが、日本だけは依然として金融緩和(低金利)政策を維持しています。そのため住宅ローンなどの金利上昇がすぐに起きる状況ではありませんが、韓国は事情が異なります。

韓国ではインフレが進行しており、インフレを抑制するための金融引き締め(利上げ)政策がとられています。この利上げには、相次いで利上げを行っている米国に追随することで韓国ウォンの対ドルレートを守る「通貨防衛」の意味合いもあると指摘されており、韓国の利上げ基調はまだまだ続くと見られています。

どんな理由であっても利上げが行われると、家計債務の金利も上昇します。住宅ローンなど多額のローンを抱えている家庭にとっては大きな負担増となります。

家計債務のことを考えると利上げは負担増になるが、利上げをしないとインフレの進行やウォン安を止められない。韓国経済はこうしたジレンマに陥っている状態です。

同じ問題が日本でも起きる可能性はある?

韓国で起きている家計債務問題が日本で起きる可能性はないのでしょうか。日本では長らく超低金利が続いているため、金利上昇による負担増をイメージしている人は少数でしょう。しかしながら世界の主要国はインフレ抑制のための利上げを相次いで行っており、日本が同じ状況にならない保証はありません。

超低金利の環境下ではお金を借りる側が有利になりますが、日銀の総裁が交代して政策が変更されると事情が変わるかもしれません。アベノミクスから続いてきた金融緩和路線の変更は、日本にとっても歴史的な転換点になります。

日本の家計債務は住宅ローンが大きな部分を占めており、住宅ローンを変動金利型で借り入れている人にとっては金利上昇が負担増となって家計を直撃します。

すでに起きていること、今後起きること

相次ぐ利上げを含む、韓国経済に起きていることと今後起こり得ることを展望してみましょう。

韓国では2022年に「レゴランドコリア」を舞台にした、ある事件がありました。国内北東部にある江原道に有名なテーマパークである「レゴランド」を誘致したものの、経営は低迷。現地自治体が債券の保証をしていたにもかかわらず、それを履行せず破産の申し立てをすると宣言したことから信用不安が発生し、韓国経済全体への不信感を高める結果となりました。

折から韓国に投じられていた資金の海外流出が指摘されていたところにこういった事件が起きたため、投資マネーの流出が加速しているともいわれています。投資マネーの流出を防ぐには金利を引き上げる必要があり、これも韓国の金利上昇要因になります。

また、韓国では若年失業率の高さが社会問題となっています。日本への就職を目指す人が増加していることが報道されていますが、根本的な解決にはなりません。思うように就職できない人の中には投資に活路を見出す人もおり、特にリスクが高いものの一獲千金に近い利益のチャンスがある仮想通貨(暗号資産)への投資熱が高まっています。

投資が盛んになること自体に問題はありませんが、韓国では借金をして投資をする人が多く、これも家計債務を増大させる一因となっています。投資が成功すればよいのですが、本当に成功できるのは一部の人たちです。投資に失敗した人のもとには、借金だけが残ってしまいます。

しかもその借金には、利上げによる負担増がのしかかります。借金の返済に困る人、生活に困窮する人が増えると、社会が不安定化します。韓国はこうした問題に直面しており、家計債務が大きくなりすぎると何が起きるのかを如実に語っています。

日本でもこうした構図が現実になると、韓国と同様の問題が起きても何ら不思議ではありません。

今のうちに備えられることは

今後日本でもインフレが問題化して金融引き締め(利上げ)が行われると、韓国と同様の構図が生まれる可能性があります。そういった局面に向けて、今のうちにどう備えておくべきなのでしょうか。現段階で取ることができる防衛策は、4つあります。

①住宅ローンなどの借金は固定金利の利用を推奨

固定金利の借金であれば金利上昇の影響を受けませんが、住宅ローンなど長期的な借金で変動金利型になっている場合は、今のうちに固定金利に借り換えをしておくと金利上昇リスクを回避できます。

②保有資産の分散、多様化

日本人の個人資産はすでに2,000兆円を超えており、依然として世界有数のお金持ちであることに変わりありません。しかしながら今もなお保有資産の大半が預貯金であり、現金への偏りが顕著です。

インフレが進行すると貨幣の価値が相対的に低くなるため、現金だけでなく保有資産の多様化が重要になります。株式や投資信託といった証券、外国通貨、債券、現物資産など、性質の異なる資産に分散することで資産全体のリスク耐性を高めましょう。

③特に国際的な分散が重要

2022年は歴史的な円安が起きたため、日本円だけで資産を保有することにリスクを感じた方は多いと思います。円安の一方で2022年は米ドル高の年でもあったため、資産の一部を米ドル、もしくは米ドル建ての株式や投資信託などで保有していた人にとっては資産増の追い風となりました。

先ほど外国通貨への分散が有効であると述べましたが、それ以外にもバランス型投資信託など国際的な分散投資をする投資信託を保有するのも有効です。

④不動産は現物資産なのでインフレ耐性がある

インフレで貨幣の価値が低くなると、その一方で現物資産の価値が高くなります。代表的なものには不動産や金(ゴールド)などがありますが、その中でも不動産は短期的な価格の変動が少なく、なおかつ立地条件のよい物件であれば需要がなくなる可能性が低いことから、資産防衛と資産形成の両面でメリットがあります。

世界的に進行しているインフレは、日本でも確実に進行しています。今のうちにインフレ対策をしっかり行い、将来に備えることが重要です。

(提供:Incomepress



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