本記事は、松本美栄の著書『パフォーマンスを劇的に変える!快眠習慣』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
睡眠をおろそかにすると認知症につながる
認知症は2025年には65歳以上の5人に1人が発症すると見込まれており、新たな国民病と呼ばれるほど社会的に大きな課題となってきています。そんな認知症は実は睡眠と深い関係があると考えられています。
私たちの体内には細胞に栄養を運んだり、細胞から排出される老廃物を処理したりするためにリンパ系というシステムがあります。脳内にもこれによく似たシステムがあり、それを「グリンパティックシステム」といいます。
日々生活をする中で身体だけでなく、脳でも老廃物が出てきます。その1つがアミロイドベータと呼ばれるタンパク質です。アミロイドベータは健康な人の脳にもありますが、通常はグリンパティックシステムなどによって脳から排出されます。
しかし、排出されずに脳に蓄積してしまうとアミロイドベータの出す毒素によって脳の神経細胞が死滅してしまいます。そうして脳が萎縮することによって認知症(アルツハイマー型)が発症すると考えられています。アミロイドベータの蓄積は認知症の発症の15〜20年前から始まっているともいわれます。
認知症の対策には原因物質と考えられているアミロイドベータの除去が重要となりますが、そのために必要なのが睡眠、特に深い眠りであるノンレム睡眠なのです。
これはグリンパティックシステムがノンレム睡眠中に活発に働くためです。
ノンレム睡眠中、脳の一部の細胞が収縮し隙間が発生します。
隙間ができることで体液の1つである脳脊髄液が脳に多く流れ込むようになります。流れ込んだ脳脊髄液によってアミロイドベータなどの脳の老廃物が除去されます。
普段から深い睡眠が取れていない人はうまくノンレム睡眠を取れていないため認知症のリスクが高まります。まだ身体が元気で働き盛りのビジネスパーソンでも、睡眠をおろそかにすると早期に認知症を発症するリスクもあるということです。
認知症は本人だけの問題ではなく、介護をする家族や身の周りの人のQOL(Quality Of Life:生活の質)にも影響するものです。睡眠の質を高めていくことは自分自身だけでなく、周りの人の毎日の生活を守ることにも関わってくるのです。
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