この記事は2023年2月3日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「過去最高の需要に支えられ23年の原油価格は堅調に推移」を一部編集し、転載したものです。


過去最高の需要に支えられ23年の原油価格は堅調に推移
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1月半ば以降、WTI原油先物価格は1バレル=80ドル前後で推移し、足元では商品価格高騰によるインフレ懸念が後退してきた。他方、石油製品需要の拡大で当面の原油価格は緩やかに戻りを試す展開となりそうだ。

国際エネルギー機関(IEA)が公表した1月月報によると、2023年の世界需要は過去最高になる見通しだ。中国のゼロコロナ政策の解除のほか、航空輸送の再開によるジェット燃料の需要回復などが背景にある。IEAはロシアと中国の動向が「ワイルドカード」になると指摘。ロシアの石油供給が減少するなか、中国の旺盛な需要で需給の引き締まりが意識されるとみているようだ。

他方、米エネルギー情報局(EIA)は、米国の増産拡大で、23年中の需給バランスが供給過多になると予想する。ただし、こちらも24年1~3月期に世界需要は過去最高に達し、供給不足に転じると想定する。

足元では、ロシアに対する各国の制裁が続く。G7は1月20日、3月にロシア産原油の価格上限を見直すと合意した。2月5日からG7・欧州連合(EU)・オーストラリアは、ロシア産のディーゼル燃料や燃料油といった石油製品に対して2種類の価格上限設定を導入する予定となっている。石油製品の一種である抽出油(ディーゼル燃料や燃料油)の米国における22年末在庫は、過去5年の最低水準を下回った。今後は、制裁の影響と石油製品需要の回復から、特に在庫が枯渇している抽出油の価格が上昇し、原油価格が連れ高となる可能性もある。

現時点で原油価格の1バレル=70ドル前後の下値は底堅そうだ。今後は地政学リスクとインフレに絡む混乱から、各国政府の石油備蓄管理に対する重要性が増すだろう。米国の石油戦略備蓄は39年ぶりの低水準で、危機への備えに不安も残る。米ホワイトハウスは原油価格を1バレル=67~72ドルとした戦略備蓄の補充計画を発表しており、景気減速懸念の再燃から原油価格が下落すれば、米国の備蓄補充計画も進むだろう。

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産国によるOPECプラスの22年12月会合では、22年11月に合意した減産の水準を維持することが決まった。国際通貨基金の予想では、23年におけるサウジアラビアの財政収支の均衡点となる原油価格は1バレル=66.8ドル。仮にこの水準に接近すれば、OPECプラスが追加減産に踏み切り、価格を下支えする可能性が高まるだろう。

次回のOPECプラスの会合は6月4日に開催予定だが、その間にサウジアラビアやロシアが主導する共同閣僚監視委員会(JMMC)が2月1日に続いて4月にも開催される予定だ。次回のOPECプラス会合までは、JMMC会合の動向に注目が集まるだろう。23年の原油価格は1バレル=70~100ドルで推移するとみる。

過去最高の需要に支えられ23年の原油価格は堅調に推移
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みずほ証券 マーケットストラテジスト/中島 三養子
週刊金融財政事情 2023年2月7日号