米国の利上げ減速 2023年は中国株、ベトナム株に投資妙味?
(画像=MotionCenter/stock.adobe.com)

FRB(米連邦準備理事会)が2022年3月から開始した利上げのペースが鈍化している。利上げのペースの鈍化は、近い将来の利下げ観測につながるが、そうなると株価にはどのような影響があるのだろうか。本稿では、米国の利上げ背景や利下げの見込み、中国やベトナムなど新興国への投資妙味について解説していく。

目次

  1. 2023年2月FOMC、利上げ幅は0.25% 利上げ鈍化鮮明に
    1. 米国のインフレと利上げペースの鈍化で株価は持ち直しの動き
  2. FRBパウエル議長「年内の利下げは適切ではない」
  3. 利下げと株価の関係は?
    1. 利上げに伴う株式市場の影響
    2. 利下げに伴う株式市場の影響
  4. 2023年の米国の利上げは継続!市場はすでに将来的な利下げを織り込み済みか
  5. 米国株の動向は世界に波及
  6. 利上げ減速で株価反発への期待

2023年2月FOMC、利上げ幅は0.25% 利上げ鈍化鮮明に

まずは、2023年2月までにFRBが実施した利上げを簡単に振り返る。FRBが利上げを決めたのは、2022年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、その際の利上げ幅は0.25%だった。以後、FRBは利上げを断続的に実施し、同年5月のFOMCで0.50%、6月のFOMCでは0.75%と利上げ幅を拡大させた。0.75%の利上げは、同年11月のFOMCまで4会合連続で実施され12月のFOMCでようやく0.50%と鈍化。

【米国における利上げ推移(2023年2月時点)】

年月利上げ幅政策金利
2022年3月+0.25%0.50%
2022年5月+0.50%1.00%
2022年6月+0.75%1.75%
2022年7月+0.75%2.50%
2022年9月+0.75%3.25%
2022年11月+0.75%4.00%
2022年12月+0.50%4.50%
2023年2月+0.25%4.75%

2023年2月のFOMCでは、利上げ幅が0.25%まで引き下げられ、利上げペースの鈍化が鮮明となった。

米国のインフレと利上げペースの鈍化で株価は持ち直しの動き

米国株は、FRBの利上げによってどのように反応したのだろうか。米国の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均は、2022年の年明けこそ3万6,000米ドル台と高値圏にあった。ところが、FRBの利上げとともにダウ平均は続落し同年6月には3万米ドルを割り込んだ。8月にかけて一時は持ち直したが、その後さらに下落に転じ9月には2万8,000米ドル台に突入した。

それ以後は、ダウ平均は持ち直した動きを見せており、2023年に入るとおおむね3万~3万4,000米ドル台で推移。このことは、米国のインフレおよび利上げペースの鈍化と関係していると考えられている。

FRBパウエル議長「年内の利下げは適切ではない」

FRBのパウエル議長は、2023年2月のFOMC後の記者会見で何を語ったのだろうか。米国経済の関心事の一つであるインフレについては「ディスインフレ(インフレ減速)のプロセスが始まった」との見方を示したもののインフレの減速が継続するかに関しては明言しなかった。

また市場が注目している金利については「年内の利下げは適切ではない」と述べ、早期に利下げに転じるとの観測に否定的な見方を示した。

利下げと株価の関係は?

利下げの可能性が見え始めると、株価は上昇に転じるといわれている。そもそもFRBをはじめとする各国の中央銀行が金利を引き上げたり引き下げたりするのはなぜだろうか。一般的に中央銀行は、景気が過熱していると判断したときに金利を引き上げ(金融引き締め)、景気が低迷していると判断したときに金利を引き下げる。(金融緩和)

景気が過熱している際によく見られる現象の一つがインフレーションだ。2022年は、米国をはじめ世界的にインフレが進行した。FRBが利上げに踏み切ったのも米国のインフレ率が高い水準だったことが理由だ。では、金利の引き上げや引き下げは株価にどのように影響するのだろうか。

利上げに伴う株式市場の影響

一般的に利上げを行うと株価は下がる傾向がある。中央銀行が政策金利を引き上げた場合、市中の一般銀行も金利を引き上げるだろう。また銀行の貸し出し金利が高くなれば借りる側の企業からすればお金は借りにくくなる。企業にとってお金が借りにくくなると設備投資を控えたり事業を縮小したりする必要に迫られ結果的に売り上げや利益が減少。景気悪化に伴い株価も下がるというわけだ。

こうして過熱した景気は、次第に落ち着いていく。

利下げに伴う株式市場の影響

一般的に利下げを行うと株価は上がる傾向がある。中央銀行が政策金利を引き下げた場合、市中の一般銀行の金利も下がるため、企業はお金を借りやすくなる。設備投資や事業の拡大が促進され、企業の売り上げや利益の増加が期待でき景気が良くなる可能性が見込まれるため、株価は上がりやすい。

2023年の米国の利上げは継続!市場はすでに将来的な利下げを織り込み済みか

2023年2月時点でFRBは、利上げのペースを緩めているものの依然として利上げを続けていることに変わりはない。それにもかかわらず米国の株価が持ち直し、上昇への期待が高まっているのはなぜだろうか。それは、株の特徴として知られる先見性が影響していると考えられる。株の先見性とは、将来に起きる出来事や材料を先取りし、株価に反映される性質のことを指す。

つまり現状でいえば米国の株価上昇は、すでに将来的な利下げを織り込んでいる可能性があることも忘れてはいけない。

米国株の動向は世界に波及

米国の利上げペース鈍化は、世界経済にどのように影響するだろうか。例えば中国の代表的な株価指数である上海総合指数は、2022年4月と10月に3,000を割り込んだが、それ以後は持ち直す動きを見せている。2023年に入ってからも右肩上がりで推移しておりダウ平均の動きに近い。中国は、2022年12月にゼロコロナ政策を転換しコロナ規制の緩和を発表した。

そのため2023年以降は、リオープン(経済再開)への期待も高まっており、中国株の投資妙味は大きいともいえるだろう。こうした中国経済のリオープンと連動して高成長が見込まれているのがベトナムだ。ベトナムVN指数は、2022年はじめは1,500台で推移していたが同年4月から11月にかけて大きく下落し900を割り込んでいる。

しかし2022年11月以降は、持ち直しを見せており1,000~1,100の間で推移。(2023年2月現在)このように2023年は、米国の利上げペース鈍化に伴いベトナム株や中国株といった新興国市場にも要注目だ。

利上げ減速で株価反発への期待

米国の利上げペース鈍化に伴い、将来的な利下げ観測とともに株価が反発するとの見方も出始めている。米国の金融政策の動向は、世界経済に大きなインパクトを与えかねない。2023年に入ってからもダウ平均は持ち直しの兆しを見せており、連動して中国の上海総合指数やベトナムVN指数なども上昇している。

もちろん現状の米国株の上昇は、すでに将来的な利下げを織り込んでいる可能性も否めない。しかしコロナ緩和政策などのリオープンに伴い、中国株やベトナム株など新興国の株式が活況を呈す可能性も十分に期待できるだろう。

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