FRB(米連邦準備理事会)が2022年3月から開始した利上げのペースが鈍化している。利上げのペースの鈍化は、近い将来の利下げ観測につながるが、そうなると株価にはどのような影響があるのだろうか。本稿では、米国の利上げ背景や利下げの見込み、中国やベトナムなど新興国への投資妙味について解説していく。
目次
2023年2月FOMC、利上げ幅は0.25% 利上げ鈍化鮮明に
まずは、2023年2月までにFRBが実施した利上げを簡単に振り返る。FRBが利上げを決めたのは、2022年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、その際の利上げ幅は0.25%だった。以後、FRBは利上げを断続的に実施し、同年5月のFOMCで0.50%、6月のFOMCでは0.75%と利上げ幅を拡大させた。0.75%の利上げは、同年11月のFOMCまで4会合連続で実施され12月のFOMCでようやく0.50%と鈍化。
【米国における利上げ推移(2023年2月時点)】
年月 | 利上げ幅 | 政策金利 |
---|---|---|
2022年3月 | +0.25% | 0.50% |
2022年5月 | +0.50% | 1.00% |
2022年6月 | +0.75% | 1.75% |
2022年7月 | +0.75% | 2.50% |
2022年9月 | +0.75% | 3.25% |
2022年11月 | +0.75% | 4.00% |
2022年12月 | +0.50% | 4.50% |
2023年2月 | +0.25% | 4.75% |
2023年2月のFOMCでは、利上げ幅が0.25%まで引き下げられ、利上げペースの鈍化が鮮明となった。
米国のインフレと利上げペースの鈍化で株価は持ち直しの動き
米国株は、FRBの利上げによってどのように反応したのだろうか。米国の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均は、2022年の年明けこそ3万6,000米ドル台と高値圏にあった。ところが、FRBの利上げとともにダウ平均は続落し同年6月には3万米ドルを割り込んだ。8月にかけて一時は持ち直したが、その後さらに下落に転じ9月には2万8,000米ドル台に突入した。
それ以後は、ダウ平均は持ち直した動きを見せており、2023年に入るとおおむね3万~3万4,000米ドル台で推移。このことは、米国のインフレおよび利上げペースの鈍化と関係していると考えられている。
FRBパウエル議長「年内の利下げは適切ではない」
FRBのパウエル議長は、2023年2月のFOMC後の記者会見で何を語ったのだろうか。米国経済の関心事の一つであるインフレについては「ディスインフレ(インフレ減速)のプロセスが始まった」との見方を示したもののインフレの減速が継続するかに関しては明言しなかった。
また市場が注目している金利については「年内の利下げは適切ではない」と述べ、早期に利下げに転じるとの観測に否定的な見方を示した。
利下げと株価の関係は?
利下げの可能性が見え始めると、株価は上昇に転じるといわれている。そもそもFRBをはじめとする各国の中央銀行が金利を引き上げたり引き下げたりするのはなぜだろうか。一般的に中央銀行は、景気が過熱していると判断したときに金利を引き上げ(金融引き締め)、景気が低迷していると判断したときに金利を引き下げる。(金融緩和)
景気が過熱している際によく見られる現象の一つがインフレーションだ。2022年は、米国をはじめ世界的にインフレが進行した。FRBが利上げに踏み切ったのも米国のインフレ率が高い水準だったことが理由だ。では、金利の引き上げや引き下げは株価にどのように影響するのだろうか。
利上げに伴う株式市場の影響
一般的に利上げを行うと株価は下がる傾向がある。中央銀行が政策金利を引き上げた場合、市中の一般銀行も金利を引き上げるだろう。また銀行の貸し出し金利が高くなれば借りる側の企業からすればお金は借りにくくなる。企業にとってお金が借りにくくなると設備投資を控えたり事業を縮小したりする必要に迫られ結果的に売り上げや利益が減少。景気悪化に伴い株価も下がるというわけだ。
こうして過熱した景気は、次第に落ち着いていく。
利下げに伴う株式市場の影響
一般的に利下げを行うと株価は上がる傾向がある。中央銀行が政策金利を引き下げた場合、市中の一般銀行の金利も下がるため、企業はお金を借りやすくなる。設備投資や事業の拡大が促進され、企業の売り上げや利益の増加が期待でき景気が良くなる可能性が見込まれるため、株価は上がりやすい。
2023年の米国の利上げは継続!市場はすでに将来的な利下げを織り込み済みか
2023年2月時点でFRBは、利上げのペースを緩めているものの依然として利上げを続けていることに変わりはない。それにもかかわらず米国の株価が持ち直し、上昇への期待が高まっているのはなぜだろうか。それは、株の特徴として知られる先見性が影響していると考えられる。株の先見性とは、将来に起きる出来事や材料を先取りし、株価に反映される性質のことを指す。
つまり現状でいえば米国の株価上昇は、すでに将来的な利下げを織り込んでいる可能性があることも忘れてはいけない。
米国株の動向は世界に波及
米国の利上げペース鈍化は、世界経済にどのように影響するだろうか。例えば中国の代表的な株価指数である上海総合指数は、2022年4月と10月に3,000を割り込んだが、それ以後は持ち直す動きを見せている。2023年に入ってからも右肩上がりで推移しておりダウ平均の動きに近い。中国は、2022年12月にゼロコロナ政策を転換しコロナ規制の緩和を発表した。
そのため2023年以降は、リオープン(経済再開)への期待も高まっており、中国株の投資妙味は大きいともいえるだろう。こうした中国経済のリオープンと連動して高成長が見込まれているのがベトナムだ。ベトナムVN指数は、2022年はじめは1,500台で推移していたが同年4月から11月にかけて大きく下落し900を割り込んでいる。
しかし2022年11月以降は、持ち直しを見せており1,000~1,100の間で推移。(2023年2月現在)このように2023年は、米国の利上げペース鈍化に伴いベトナム株や中国株といった新興国市場にも要注目だ。
利上げ減速で株価反発への期待
米国の利上げペース鈍化に伴い、将来的な利下げ観測とともに株価が反発するとの見方も出始めている。米国の金融政策の動向は、世界経済に大きなインパクトを与えかねない。2023年に入ってからもダウ平均は持ち直しの兆しを見せており、連動して中国の上海総合指数やベトナムVN指数なども上昇している。
もちろん現状の米国株の上昇は、すでに将来的な利下げを織り込んでいる可能性も否めない。しかしコロナ緩和政策などのリオープンに伴い、中国株やベトナム株など新興国の株式が活況を呈す可能性も十分に期待できるだろう。
ご投資にあたっての留意点
取引や商品ごとに手数料等およびリスクが異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
外国証券等について
外国証券等は、日本国内の取引所に上場されている銘柄や日本国内で募集または売出しがあった銘柄等の場合を除き、日本国の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示が行われておりません。
手数料等およびリスクについて
国内株式等の手数料等およびリスクについて
国内株式等の売買取引には、約定代金に対して最大1.2650%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の1.2650%(税込み)に相当する額が3,300円(税込み)に満たない場合は3,300円(税込み)、売却約定代金が3,300円未満の場合は別途、当社が定めた方法により算出した金額をお支払いいただきます。国内株式等を募集、売出し等により取得いただく場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。国内株式等は、株価の変動により、元本の損失が生じるおそれがあります。
外国株式等の手数料等およびリスクについて
委託取引については、売買金額(現地における約定代金に現地委託手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対して最大1.1000%(税込み)の国内取次ぎ手数料をいただきます。外国の金融商品市場等における現地手数料や税金等は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
国内店頭取引については、お客さまに提示する売り・買い店頭取引価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ適正な方法で基準価格を算出し、基準価格と売り・買い店頭取引価格との差がそれぞれ原則として2.50%となるように設定したものです。
外国株式等は、株価の変動および為替相場の変動等により、元本の損失が生じるおそれがあります。
投資信託の手数料等およびリスクについて
投資信託のお取引にあたっては、申込(一部の投資信託は換金)手数料をいただきます。投資信託の保有期間中に間接的に信託報酬をご負担いただきます。また、換金時に信託財産留保金を直接ご負担いただく場合があります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なるため、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該金融商品市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し、元本の損失が生じるおそれがあります。
この資料は、東洋証券株式会社が信頼できると思われる各種のデータに基づき投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。また、将来の運用成果等を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点のものであり、予告なしに変更することがありますのでご注意ください。この資料に基づき投資を行った結果、お客さまに何らかの損害が発生した場合でも、東洋証券株式会社は、理由の如何を問わず、一切責任を負いません。株価の変動や、発行会社の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがありますので、投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなされるようお願い致します。この資料の著作権は東洋証券株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願い致します。
◇商 号 等:東洋証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第121号 ◇加 入 協 会:日本証券業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会 ◇本 社 所 在 地:〒104-8678 東京都中央区八丁堀4-7-1 TEL 03(5117)1040 https://www.toyo-sec.co.jp/