中国のEVメーカーの勢いが止まらない。従来の自動車メーカーや電池メーカーのほか、新興メーカーが次々と新車を発売しているのが特徴だ。前年の2022年9月には、新たにEVベンチャー1社が香港取引所へ上場を果たしておりまさに群雄割拠状態といえるだろう。本稿では、中国におけるEV市場の動向や新興EVメーカーなどについて紹介する。
目次
拡大する中国のEV市場
中国汽車工業協会が2023年1月12日に発表した統計によると2022年に中国で販売されたEV(電気自動車)など「新エネルギー車」は約689万台と増加傾向だった。過去5年の販売台数は、以下の通りだ。
年度 | 販売台数 | 前年比 |
---|---|---|
2018年 | 約125万6,000台 | 約+61.6% |
2019年 | 約120万6,000台 | 約-3.9% |
2020年 | 約136万7,000台 | 約+13.3% |
2021年 | 約352万1,000台 | 約157.5% |
2022年 | 約688万7,000台 | 約95.5% |
2020年以降は、急激に販売台数が伸びていることがうかがえる。これらの数字には、EVだけでなくPHV(プラグインハイブリッド車)なども含まれるが、その大半はEVだ。2022年の約689万台のうちEVは約537万台と約8割を占めている。ちなみに2022年の日本の新車販売台数は約420万台だった。日本と比べて中国のEV市場がいかに大きいかが理解できるのではないだろうか。
新規参入したEVメーカーが乱立
2023年1月31日、「第2のトヨタ」とも呼ばれる中国のEV大手メーカーのBYD(比亜迪)が日本初進出となるEVの販売をスタートし、「黒船襲来か」などと話題になった。BYDは、米国のテスラと並ぶEVメーカーに成長したが、もとは電池メーカーとして創業した会社だ。電池メーカーがEV開発に乗り出すのは、必然性があるともいえる。しかし中国で特徴的なのは、他業種からの参入が相次いでいることだ。
例えばインターネット検索大手のバイドゥ(百度)は、2021年に中国国有自動車大手の北京汽車集団傘下となる北汽藍谷新能源科技と共同開発を開始した。また同年には、IT大手のアリババグループ(阿里巴巴集団)も自動車大手のSAIC Motor(上海汽車集団)と合弁会社を設立しEVを生産している。
既存企業のほかにも新興のEVベンチャー企業も続々と誕生しており、中国のEVメーカーは群雄割拠時代に突入しているといえるだろう。
新興のEVメーカーは4社が上場
群雄割拠の中国EVメーカーで勢いがあるのが、新興のEVベンチャーだ。「ベンチャー御三家」と呼ばれるEVメーカー3社に加え、2022年9月には新たに1社が上場した。ここでは中国における注目すべきEVメーカー上場4社について紹介していく。いずれも上場している市場は香港証券取引所だ。
NIO(上海蔚来汽車:ニーオ)
御三家の一つであるNIO(ニーオ)は、2014年11月に設立された。2016年11月に最初のモデルとしてスーパーカー「EP9」を開発しており、高級EVに強みがある。2022年には、前年比34%増となる12万2,486台を販売した。2018年9月、ニューヨーク証券取引所に上場後、2022年3月に香港証券取引所、同年5月にはシンガポール証券取引所にも重複上場している。
2022年の香港証券取引所での株価は、6月にピークをつけたものの、そこから下落。同年11月に下げ止まってからも横ばいが続いている。
Xpeng(小鵬汽車:シャオペン)
別名「中国のテスラ」とも呼ばれるXpeng(シャオペン)も中国EVベンチャー御三家の一つだ。アリババグループの出身者らが2015年に設立し、2018年に量産1号モデルを発売している。アリババなどからの出資を受けながら、NIOに比べるとやや安価なEVを多く展開しており、2022年の販売台数は前年比23%増となる12万757台だった。
2020年8月にニューヨーク証券取引所、2021年7月には香港証券取引所へ重複上場している。株価は、2021年後半から失速気味で2022年11月に下げ止まるまで右肩下がりだ。チャート図としては、NIOと似た推移をたどっている。
Li Auto(理想汽車:リオート)
中国EVベンチャー御三家の最後の1社は、Li Auto(リオート)だ。インターネット技術企業の設立や経営経験者が2015年4月に設立した。長距離EVの商品化に成功し、2019年11月に量産を開始。2022年の販売台数は、13万3,246台で前年比47.2%増だった。米ナスダックに2020年7月に上場し、2021年8月には香港証券取引所へ重複上場を果たす。
株価の動きは、やはり2022年7月ごろから下がり始めたが、11月に下げ止まって以降は上昇傾向にある点が上記2社と異なっている。
Leap Motor(零跑汽車:リープモーター)
御三家からやや遅れて2022年9月に香港証券取引所に上場したのがLeap Motor(リープモーター)だ。AI分野で30年近い実績を持つエンジニアらが2015年に設立した。中・高級市場をターゲットにしている。2019年7月には、ファーストモデルとなる「S01」を投入。株価は、2022年9月の上場直後から大きく下落し11月ごろまで横ばいで推移したが12月には上昇に転じた。
2023年1月以降は、横ばい推移となっているが時間をかけて持ち直しているところだ。2022年の販売台数は、前年比154%増と11万1,168台と驚異的な成長を記録しているため、今後も目が離せない。
中国でのテスラの存在感は?
これまで世界のEV市場をリードしてきた米国のテスラは、中国でも大きなシェアを誇っている。2022年に世界で販売したのは約131万台で、そのうち約44万台が中国での販売だった。中国は、テスラにとっても大きな市場だが、これまでに紹介した新興メーカーはすべて前年比増の販売台数を記録している。上述したように2023年2月現在、中国の新興EVメーカーの株価は、軒並み低迷中だ。
しかしテスラに比べてスタートが遅かったことから、まだ“のびしろ”があるともいえる。中国のEV市場拡大とともに大きく売り上げを伸ばし、テスラを脅かすメーカーに成長する企業が出てくる可能性も大きい。
新興EVメーカーは投資の選択肢に
今や中国は、EV大国だ。脱炭素化を進めたい中国政府は、免税措置を設けるなどEV普及を後押ししているため、各メーカーともさらに販売台数を伸ばす勢いが期待できるだろう。特に上場している新興EVメーカーは、市場から資金を集め、研究開発に力を注いでいる。今後、大きく成長する期待が高まれば低迷している株価も跳ね上がるかもしれない。
もし振興EVメーカーに注目しているのであれば、投資対象としてポートフォリオに加えてみるのも選択肢の一つだろう。
ご投資にあたっての留意点
取引や商品ごとに手数料等およびリスクが異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
外国証券等について
外国証券等は、日本国内の取引所に上場されている銘柄や日本国内で募集または売出しがあった銘柄等の場合を除き、日本国の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示が行われておりません。
手数料等およびリスクについて
国内株式等の手数料等およびリスクについて
国内株式等の売買取引には、約定代金に対して最大1.2650%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の1.2650%(税込み)に相当する額が3,300円(税込み)に満たない場合は3,300円(税込み)、売却約定代金が3,300円未満の場合は別途、当社が定めた方法により算出した金額をお支払いいただきます。国内株式等を募集、売出し等により取得いただく場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。国内株式等は、株価の変動により、元本の損失が生じるおそれがあります。
外国株式等の手数料等およびリスクについて
委託取引については、売買金額(現地における約定代金に現地委託手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対して最大1.1000%(税込み)の国内取次ぎ手数料をいただきます。外国の金融商品市場等における現地手数料や税金等は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
国内店頭取引については、お客さまに提示する売り・買い店頭取引価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ適正な方法で基準価格を算出し、基準価格と売り・買い店頭取引価格との差がそれぞれ原則として2.50%となるように設定したものです。
外国株式等は、株価の変動および為替相場の変動等により、元本の損失が生じるおそれがあります。
投資信託の手数料等およびリスクについて
投資信託のお取引にあたっては、申込(一部の投資信託は換金)手数料をいただきます。投資信託の保有期間中に間接的に信託報酬をご負担いただきます。また、換金時に信託財産留保金を直接ご負担いただく場合があります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なるため、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該金融商品市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し、元本の損失が生じるおそれがあります。
この資料は、東洋証券株式会社が信頼できると思われる各種のデータに基づき投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。また、将来の運用成果等を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点のものであり、予告なしに変更することがありますのでご注意ください。この資料に基づき投資を行った結果、お客さまに何らかの損害が発生した場合でも、東洋証券株式会社は、理由の如何を問わず、一切責任を負いません。株価の変動や、発行会社の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがありますので、投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなされるようお願い致します。この資料の著作権は東洋証券株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願い致します。
◇商 号 等:東洋証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第121号 ◇加 入 協 会:日本証券業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会 ◇本 社 所 在 地:〒104-8678 東京都中央区八丁堀4-7-1 TEL 03(5117)1040 https://www.toyo-sec.co.jp/