この記事は2023年2月17日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「今後も上昇が見込まれる日本のエネルギー価格」を一部編集し、転載したものです。


今後も上昇が見込まれる日本のエネルギー価格
(画像=WhoisDanny/stock.adobe.com)

(総務省「消費者物価指数」ほか)

わが国におけるエネルギー価格が上昇している。総務省「消費者物価指数」によると、2022年12月のエネルギー価格は電気・ガス代を中心に前年同月比15.2%上昇し、15カ月連続で2桁の伸びとなっている(図表1)。この背景には、22年秋口にかけて進行した資源高や円安がある。

最近では資源高や円安は一服している。だが、次の2点を背景に、今後もエネルギー価格の上昇が続く公算が大きい。

第一に、大手電力各社による電気代(規制料金)の値上げが予定されていることである。大手電力10社のうち5社(東北・北陸・中国・四国・沖縄)は4月以降、2社(東京・北海道)は6月以降の値上げ(30~45%程度の規制料金の引き上げ)を国に申請している。

わが国の電気・都市ガス代は、「燃料費調整制度」の下で決定されている。具体的には、3~5カ月前の資源価格の変動を踏まえて平均燃料価格を算出し、これをもとに決まる燃料費調整額が毎月の料金に反映される仕組みだ。電力会社が独自にプランを決められる「自由料金」とは異なり、電力自由化前からの「規制料金」では、燃料費調整額に上限が設定されている。近時の資源高においては調整額が上限に抵触し、電力会社は電気代を十分に引き上げることができなかった。国の審査を経て申請が認められれば、春以降に電気代は大幅に値上がりする可能性がある。

第二に、政府による激変緩和措置が、23年秋口にかけて段階的に縮小する予定となっていることである。政府は22年1月、ガソリン価格の抑制を目的に激変緩和措置を導入し、ガソリン価格(全国平均)が一定額を超えた場合に、1リットル当たり31円を上限として燃料油の元売りに補助金を支給している。この結果、原油価格が高騰した割にはガソリン価格が低位に抑えられている(図表2)。

ガソリンに加えて、23年1月からは電気・都市ガス代にも同様の措置が適用され、本来の水準から平均2割程度低い価格が設定されている。これらの激変緩和措置が予定どおりに終了する場合、エネルギー価格が今秋にかけて大きく上昇する要因となり得る。

日本のエネルギー価格は、これまでこうした料金制度や激変緩和措置によって抑えられてきた。今後、強まる価格上昇圧力に注意が必要だ。

今後も上昇が見込まれる日本のエネルギー価格
(画像=きんざいOnline)
今後も上昇が見込まれる日本のエネルギー価格
(画像=きんざいOnline)

日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 研究員/白石 尚之
週刊金融財政事情 2023年2月21日号