外食業界でM&Aが続いている。その舞台はハンバーガーショップ、唐揚げ専門店、宅配ピザ…。アフターコロナを見据え、事業ポートフォリオの最適化に向けた動きが引きも切らない。
ゼンショー、残る“ピース”は中華?
ゼンショーホールディングスは2月16日、ロッテホールディングス傘下のハンバーガーショップ大手、ロッテリア(東京都新宿区)を4月1日付で買収すると発表した。ロッテリアはマクドナルド、モスバーガーに次ぐ3位で、全国に358店舗(1月1日時点)を展開する。買収金額は明らかにしていない。
米国発のマクドナルドが日本第1号を東京・銀座にオープンしたのは1971年7月。ロッテリアは翌1972年2月に設立し、同じ年、モスバーガーも誕生した。半世紀を経て、“御三家”の一角が新しいオーナーのもとで再出発することになった。
ハンバーガーショップの主なM&Aとしては、居酒屋「甘太郎」や焼肉「牛角」などを展開するコロワイドが2016年に、ユニマットホールディングス傘下の「FRESHNESS BURGER(フレッシュネスバーガー)」事業を買収して以来となる。
ゼンショーは牛丼「すき家」を中核とする外食コングロマリット(複合)企業。その業態は回転ずし「はま寿司」、ファミリーレストラン「ココス」「華屋与兵衛」、ハンバーグ・グリル「ビッグボーイ」、丼物・京風うどん「なか卯」など多岐にわたる。今回、これまで手つかずだったハンバーガーショップが加わることになったのだ。
ゼンショーはこのほか、焼肉、ラーメン、うどん、カフェなどの業態をすでに持っている。埋めるべきピースとしては中華が残っており、今後のM&Aのターゲットとなりそうだ。
和食「さと」のSRS、唐揚げテイクアウトに参入
唐揚げ専門店「鶏笑」を傘下に収めたのは、和食ファミリーレストラン「さと」や天丼「さん天」などを展開するSRSホールディングス。テイクアウト市場に参入するのが目的で、「鶏笑」を運営するNIS(大阪市)を2月1日に子会社化した。「鶏笑」は現在、約250店舗を展開し、米国、カナダ、中国など海外にも一部店舗を持つ。
SRSはグループ一括買い付けによる原材料のコストダウンや新商品の開発、既存事業での連携などを進め、相乗効果の創出につなげる。
焼肉坂井、宅配ピザを5年で切り離し
一方、焼肉坂井ホールディングスは宅配ピザ店「10.4」を運営する子会社のテンフォー(北海道函館市)をベーカリー・外食店展開のコイサンズ(三重県津市)に1月末に売却した。主力の焼肉事業をはじめとするイートイン(店内飲食)事業に経営資源を集中させるのが狙い。
「10.4」は北海道、東北を中心に北陸、九州などに86店舗を展開する。焼肉坂井は2018年に中食領域の本格開拓を目的にテンフォーを傘下に収めたが、5年足らずで手放すことになった。
宅配ピザを巡っては昨年8月、「ピザハット」約500店舗を国内展開する日本ピザハット・コーポレーション(横浜市)が食品卸大手のヤマエグループホールディングスの傘下に入っている。
文:M&A Online編集部