1970年1月の初就航から半世紀以上にわたって生産されてきた「ジャンボジェット」こと「ボーイング747」の最終機が1月末に完成し、米航空輸送会社のアトラス・エアーに引き渡された。累計生産機数は1574機で、歴史に残るベストセラー機だ。

輸送機が原型だった「747」

「747」の生産ピークは1990年の122機。30年以上も前だ。その後は生産機数が減り続け、2017年に旅客機仕様の生産が終了した。この時に「747が生産を中止した」と報道され、「すでに747は生産されていない」と思っていた人も多いのではないか。実は「747」は貨物専用機として生産が続いていた。

「747」の原型は、ボーイング社が失注した米空軍の次期戦略輸送機。機体前部が2層構造なのも機首が開口し、そこから荷物の積み下ろしを想定した輸送機設計の名残だ。原型では上層部は操縦席と乗員収用部、下層部は貨物室として設計されていた。実際に貨物機仕様ではそのようになっている。

旅客機仕様では上層部が操縦席とファーストクラスの客室、下層部がビジネスクラスとエコノミークラスの客室として利用されるケースが多かった。366〜563席の大型旅客機としてロングセラーとなった「747」だが、輸送機由来という開発コンセプトもあって、当初は超音速旅客機が本格的に普及するまでの「つなぎ」という位置づけだった。

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(画像=政府専用機としても採用されている「ボーイング747」、「M&A Online」より引用)


超音速旅客機の「自滅」で、ロングセラーに

しかし、「コンコルド」をはじめとする第1世代の超音速旅客機が騒音や経済性などの問題から、第2世代以降の開発が進まなかった。さらに「747」の就航により大量人員輸送が可能になったことで、航空運賃が下がり利用者が増加したことから大型機が旅客機の主流となり、改良を重ねながらロングセラー機になったのだ。

輸送機由来の「747」が「大量輸送」を武器に、「高速輸送」という航空機の王道をゆく超音速旅客機に勝利したのは、航空史に残る「大逆転劇」と言えるだろう。

しかし、1993年に欧エアバス社の「エアバスA340」(239〜440席)、1995年には「747」の後継機となる「ボーイング777」(300〜550席)といった「747」と同等の乗客を収容できる上に、燃費も良い新型大型旅客機との競争にさらされ、受注機数が激減。原型の流れをくむ貨物専用機として生産を続けてきた。

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(画像=ANAは「747」貨物仕様機の後継機となる「ボーイング777F」を導入(同社ホームページより)、「M&A Online」より引用)

「747」の生産終了で、大型輸送機の代替機は「777」の貨物機仕様である「ボーイング777F」になる。だが、貨物機仕様の「747」は最大積載量が多い上に、機首部分が開口して長尺物を搭載しやすい。旅客機由来の「777F」よりも使い勝手が良く、2040年代に入っても100機前後がが貨物専用機として運行を続けるとの予想もある。生産は終了したが、引退はまだまだ先の話。70年以上も運行を続ける超長寿機になりそうだ。

文:M&A Online編集部