上場企業による事業撤退が相次いでいる。三菱重工業<7011>は、2023年2月7日に子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)が手がけてきた小型ジェット旅客機の開発を中止すると発表した。
これに先立つ2月3日には東芝<6502>子会社の東芝エネルギーシステムズ(川崎市)が、住宅用太陽光発電システム事業から撤退すると発表。さらに1月27日にはわらべや日洋ホールディングス<2918>が子会社のプロシスタス(東京都新宿区)が食品機械事業から撤退すると発表した。
理由はコロナ禍による業績の悪化や競争の激化、中核事業への経営資源の集中などさまざまだが、いずれも事業の将来見通しが不透明なことから撤退を余儀なくされた格好だ。
蓄積した技術は戦闘機開発に活用
三菱重工業は2008年に国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発に着手したが、開発の遅れから納入を6度にわたり延期したのに加え、2020年10月にはコロナ禍の影響で航空需要が減少し小型ジェット機市場の先行きを見通せないことから開発を凍結していた。
今後も開発を続けるためには、航空機の安全性を証明する型式証明の取得に巨額の資金が必要になるため事業の継続を断念した。蓄積した技術やノウハウは戦闘機の開発などに活用する計画という。
東芝は2010年に住宅用太陽光発電システムの販売を始め、2012年に固定価格買取制度(FIT制度)が導入されたことで、事業が大きく拡大した。その一方で多くの企業が同市場に参入し競争が激化したことから業績が悪化していた。
このため住宅用太陽光発電システム事業からの撤退を決めたもので、メンテナンスなどのアフターサービス業務は太陽光発電システムの設計などを手がけるエクソル(京都市)に譲渡する。今後は産業用太陽光発電に力を入れ、太陽光発電所の建設や保守などの事業に取り組むという。
わらべや日洋ホールディングスは1979年からプロシスタスを通じて行ってきた食品製造装置の販売を2024年2月29日に終了する。
プロシスタスは、わらべやグループのほか他の食品メーカーに機械を販売し事業を拡大してきたが、コロナ禍の影響で設備需要が減少しているほか、機械部品の調達が困難なため収益が悪化していた。プロシスタスの従業員はグループ企業に転籍する。
子会社や事業の売却も高水準
事業撤退と並んで、上場企業が子会社や事業を売却する事例も多く、コロナ禍初年度の2020年に過去最多となり、2021年は2年連続で最多を更新。2022年はこの両年に次ぐ件数となるなど、コロナ禍の3年間で多くの企業が子会社や事業を手放した。
コロナ禍の影響が薄らぐ中、業績が回復する企業が現れているが、多くの企業はまだまだ厳しい環境下にある。事業撤退や売却はもうしばら高水準で推移する可能性が高そうだ。
文:M&A Online編集部