アフターコロナの飲食業に求められていること
コロナ禍では、感染拡大防止のために『外食業の事業継続のためのガイドライン』が発行され、飲食業はさまざまな自助努力にも励んできた。世の中がアフターコロナに目を向ける中、飲食業は何を求められているのだろうか。
テイクアウトやデリバリーサービスの拡充
店内での飲食が減る中で、テイクアウトやフードデリバリーサービスを充実させることが求められている。
コロナ禍による外出自粛で、消費者の飲食店の利用頻度や利用金額が減った中、逆にテイクアウトの利用経験は増えており、飲食店の利用の仕方が変化してきている。
若年層を中心にUber Eatsを利用したフードデリバリーも一般化しており、大手チェーン店ではスマホアプリを利用したテイクアウト事前注文システムも導入されている。
今後さらに、消費者の変化するニーズに応えるために、持ち帰りを意識したメニュー設計も重視されるだろう。
キャッシュレス決済システムの導入
クレジットカードや電子マネーを用いたキャッシュレス決済への対応も、チェーン店だけでなく個人飲食店に対しても求められるようになっている。
コロナ禍により紙幣や通貨の受け渡しによる直接決済が敬遠されることもあり、クレジットカードはもちろん、コンビニエンスストアなどで一般的となったPayPay、楽天ペイ、d払いなどの電子マネーをはじめとするキャッシュレス決済への対応が、飲食業にも期待されている。
インバウンドによる来日客への対応
アフターコロナのインバウンド需要復活による、来日客への対応も欠かせない。
コロナ禍によって行われた渡航制限も解除が進んでおり、外国人客も徐々に戻りつつある。東京や大阪以外の地方都市圏の飲食店でも、訪日客に対応したサービス設計が必要だ。
メニューについては、外国語に対応していることはもちろんだが、食文化やアレルギーへの配慮として、利用食材やアレルゲンがひと目で分かるような表示が求められる。
またインバウンド対応のためにも、さらにキャッシュレス決済を導入しなければならないだろう。
飲食業で今後取り組むべき経営改善策5つ
飲食業を取り巻く慢性的な課題や、コロナ禍を含めた突発的なトラブルには、今後も引き続き対応していかねばならない。ここでは、飲食業経営者が今後取り組むべき経営改善策を5つ紹介する。
1.ICT化による一部業務の自動化
飲食業の人手不足解消のためには、ICT化による業務の自動化や負荷軽減が必要だ。
ICT化とはIT化とほぼ同義であり、ITシステムを導入して業務負荷を軽減したり、顧客情報を効率的に管理したりすることが目的だ。飲食店での代表的なICT化には、以下のようなものがある。
POSレジシステム:商品の販売情報を決済した時点で記録や集計できるシステム
OESシステム:店内のタブレット端末で注文を受け付け、厨房に共有するシステム
キャッシュレス決済システム:クレジットカードリーダーや電子マネーアプリなどの決済用システム
ICT化によるメリットは人件費の削減だが、情報収集によりメニューの最適化やサービスの見直しなどにも役立てることができる。しかし、ICT化には導入にも維持にも費用がかかるため、便利だからといってあらゆるシステムを導入することは難しい。
最初は導入費用や維持コストが比較的安いモバイル型POS端末を導入するなど、小さく始めて費用対効果を確認しながら、徐々にICT化を進めよう。
2.自店舗の魅力を発信
SNSなどを活用して、自社店舗の魅力を積極的に情報発信していくことが欠かせない。
ほぼ全ての年齢層でスマートフォンが利用される中、スマホの検索を意識して店の魅力を見込み客に伝えることが必須だ。ただし、情報を発信するだけでは情報の拡散力は低いため、来店客がSNSなどで情報を発信したくなるような演出やサービスを提供することも、魅力の発信につながるだろう。
個人店などの小規模店舗はリソースが限られるため、人気競合店が行っている発信内容などを参考にする、食べログなどを含めた飲食店専用の外部サービスを利用するなど、最小限のコストで情報を発信できるように意識しよう。
3.集客方法の見直し
集客については、SNSを含めたインターネットでの店舗検索への対応や意識が欠かせない。
厚生労働省によると、飲食店利用者が外食の際に店を選ぶときの情報源は、「インターネットの店舗検索サイト」が1位であり、タウン誌やチラシなどの紙媒体よりも利用者が多い。
そのため、ウェブ媒体での積極的な情報発信だけではなく、インターネット検索を意識した集客が欠かせない。Googleマップでの店舗情報表示や口コミ情報の共有のためのGoogleビジネスプロフィールの利用は必須だ。
また、新しいメニューやサービスの認知度向上のために、期間限定でGoogle広告やSNS広告などの有料広告サービスを利用することも検討するといいだろう。
もちろん、「家族や知人などの口コミ」や「店舗外観」なども店選びの参考とされていることから、リピート客を増やすためにも顧客満足度を高める取り組みを忘れてはならない。
4.人材採用手法の見直し
あらゆる産業で人材が不足している中で、自社店舗にマッチする人材を確保するためには、人材採用方法を見直す必要もある。
飲食店経営では、パートやアルバイトなど店舗運営で主力として働く人材の確保が欠かせない。また、従業員の接客がそのまま自店舗の評価にも直結するため、適切な人材かどうかの見極めも必要だ。
しかし、ハローワークや求人サイト、タウン誌などでの求人募集だけでは、マッチ度の高い人材を集められない可能性が高い。
そのため、すでに働いている従業員に適性の高い友人や知人を紹介してもらう「リファラル採用」や、SNSでの情報発信によって求人に興味を持ってもらったり、直接アプローチしたりする「ソーシャルリクルーティング」などの活用も検討するといいだろう。
5.BCP対策の準備
中小規模の飲食店でも、コロナ禍やスシロー事件のような不測の事態に備えるBCP対応が求められる。
BCPとは「事業継続計画」という意味であり、自然災害などの緊急事態が発生した際の損害を抑えるために計画を立てることだ。中小店舗では資金面などから対応策に限界があるとはいえ、事前にリスクを想定して対策をしておかなければならない。
パンデミックのような不測の事態に備えるには、政府や政策金融公庫、民間金融機関などの資金繰り支援を事前に把握しておき、有事の際に競合に先んじて相談できるようにしておくべきだろう。SNSによる誹謗中傷などに対しては、弁護士に対応策を相談しておき、類似事件の対応などを参考にすることが大切だ。