飲食業は、コロナ禍による度重なる緊急事態宣言や人々の価値観の変化などによって大きな影響を受けた業界の一つだ。コロナ禍以降も、SNSでの迷惑動画拡散による風評被害、原材料や燃料コストの増加などの逆風が吹き続けている。

本記事では、飲食業が抱えている課題やコロナ禍以降で求められていること、今後取り組むべき経営改善策について解説する。

目次

  1. 飲食業界が抱えている4つの課題
    1. 1.飲食業界は競合が多く利益率が決して高くない
    2. 2.コロナ禍によって収益が激減した
    3. 3.SNSによる風評被害やネット中傷の発生
    4. 4.人手不足により店舗運営が難しい
  2. アフターコロナの飲食業に求められていること
    1. テイクアウトやデリバリーサービスの拡充
    2. キャッシュレス決済システムの導入
    3. インバウンドによる来日客への対応
  3. 飲食業で今後取り組むべき経営改善策5つ
    1. 1.ICT化による一部業務の自動化
    2. 2.自店舗の魅力を発信
    3. 3.集客方法の見直し
    4. 4.人材採用手法の見直し
    5. 5.BCP対策の準備
  4. 飲食業はコロナ化や迷惑行為などのトラブルを想定し、事前に対策を
飲食業の今後は? 迷惑行為やアフターコロナを乗り切るために必要なこと
(画像=OHTANIAKITO/stock.adobe.com)

飲食業界が抱えている4つの課題

飲食業は消費者に直接飲食サービスを提供する業態であるため、売上の管理がしやすいなどのメリットがあるが、業界特有の課題も抱えている。

1.飲食業界は競合が多く利益率が決して高くない

飲食業界は競合の数が非常に多く、開業率は高いが同時に廃業率も高い。

飲食業にはカフェや日本料理店、ラーメン店などさまざまな種類がある。事業としては比較的取り掛かりやすいため、開業率は全産業の中で宿泊業とともに最も高いが、競合が多いこともあって廃業率も高い。

また、飲食店は食材費や人件費といったコストが高く、損益分岐点が全産業の中でもトップクラスに高いため利益を出しにくく、キャッシュフローが悪化し、資金繰りに苦労しやすい。

2.コロナ禍によって収益が激減した

2020年のコロナ禍によって飲食店では客足が遠のき、業界自体の市場規模が大幅に縮小した。

飲食業界の市場規模は、2019年は 10 兆 3,321 億円と2015年の9 兆 7,923 億円から順調に拡大していたが、2020年には7兆3,780億円と前年比71%まで落ち込んだ。

政策支援の活用はもちろん、各社がテイクアウトやデリバリーなどのサービス展開に新たに取り組んだことで倒産件数は抑止された。しかし、ロシアのウクライナ侵攻による原材料および燃料コストの増加が、アフターコロナに飲食業が経営を回復させる足かせとなっている。

3.SNSによる風評被害やネット中傷の発生

2023年1月に発生した「あきんどスシロー迷惑動画(スシローペロペロ事件やアルコールスプレー噴射問題)」のように、SNSでの迷惑動画拡散による風評被害によって、ブランド名に傷をつけられるケースも発生している。

食べログなどの口コミサイトに掲載される情報により、店の売上が影響を受けることも多い。個人店でも、YouTuberやブロガーなどによる一方的な評価によって人気を左右されることもあり、SNSによる迷惑動画の拡散はとどまる所を知らない。

4.人手不足により店舗運営が難しい

飲食業はコロナ禍以前から慢性的に人手が不足しており、店舗運営における従業員一人当たりの負担は大きい。

飲食業を支えているパートタイム労働者の就労状況に着目すると、2019年8月の過不足状況は全産業の中でワースト1位であり、慢性的に人手不足が続いている。