米国の2つの銀行破綻は世界金融恐慌の前兆ではないのか?
(画像=「セブツー」より引用))

あまりにも報道が「大人しくて冷静」なのでビックリしている。米国の連続銀行破綻のニュースだ。恐らく一種の報道規制が敷かれているのではないか。これは2008年9月15日のリーマンブラザーズ証券破綻に匹敵する大ニュースである。

まず3月10日のシリコンバレー銀行(カルフォルニア州サンタクララ本社)の破綻。昨年末の同行の総資産は約2000億ドル(約27兆円、1ドル135円換算)で全米16位。銀行破綻としてはアメリカ史上2番目の規模になる。ちなみに第1位の総資産保有破綻は2008年リーマン・ショック時のワシントン・ミューチュアル銀行だ。その名の通りスタートアップ企業の貸し付けを本領とする銀行だ。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ政策でこの銀行から貸付を受ける新興企業は激減。さらにグーグル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾンなどの業績悪化でスタートアップの設備投資意欲も鈍化。その余資を債券投資に切り替えたのだが、相次ぐ利上げで以前の債券投資の含み損が拡大したのが原因。株ではなく元本保証の債券なのにそんなことがあるのか?と思われる読者のために解説する。例えば利上げによって年率4%の債券が売り出されると、従来の年率3%の債券価格は暴落する。額面は1億円でも、実際に売買される価格は7500万円になる。一定以上の含み損を計上するのは株式と同様だ。こうした「以前の投資債券」の含み損が拡大してニッチもサッチも行かなくなるほど、FRBの利上げが急ピッチだったということになる。シリコンバレー銀行破綻はFRB急速利上げの犠牲なのだ。

続く3月12日破綻のシグニチャー銀行は、ニューヨーク州に本拠をおく仮想通貨関連の取引が多いことで知られる銀行だ。同銀行の資産規模は2022年末時点で約1103億6400万ドル(約15兆円)。仮想通貨関連企業の破綻や大規模リストラは昨年後半から続いているが、それが原因だが、前述のシリコンバレー銀行破綻による連鎖で預金流出が加速したのが直接の原因だ。大きく報道されてはいないが、3月9日には、シルバーゲート銀行の親会社であるシルバーゲートキャピタルは、新興の仮想通貨企業への融資に注力してきたシルバーゲート銀行の業務の縮小を発表している。

上記2行は総資産10〜20兆円規模の米国中位の銀行だ。比較に意味があるかどうかは別にして、日本で言うと日本銀行総資産ランキングの第11位福岡フィナンシャルグループ(約29兆円)、第10位千葉銀行(19兆円)、第12位静岡銀行(14兆円)、第17位京都銀行(12兆円)、第20位群馬銀行(11兆円)などの地銀上位が総資産規模では匹敵する。例えばふくおかフィナンシャルグループや千葉銀行、静岡銀行が破綻したら、バブル経済崩壊後の1997年の北海道拓殖銀行破綻(北拓)どころではないと思うが。

さて、シリコンバレー銀行の再建は難航している。3月12、13日に行われた入札が不調に終わり、再入札が実施される見込みだ。シリコンバレー銀行の英国法人はなんと1ポンド(約160円)で英国金融大手HSBCホールディングスが買収した。

FDIC(米連邦預金時保険公社)やFRBは、今回の2銀行の破綻は「個別企業の問題だ。預金保護は万全」という姿勢のようで、CNNなどの報道機関もそう報じている。常識的に考えてそんなはずはないと思うが。マスコミが忖度している感じのこうした時には、命から2番目に大切なマネーの動きを扱っている株式市場を参照するのが良いだろう。ニューヨークダウ平均株価で「大勢」を占ってみる。ダウ平均株価が今回ダウントレンド入りしたのはすでに3月7日火曜日だ。ダウ平均の終値だけを追ってみた。

・3月6日(月):3万3431ドル44セント(+0.12%)
・3月7日(火):3万2856ドル46セント(−1.72%)
・3月8日(水):3万2798ドル40セント(−0.18%)
・3月9日(木):3万2254ドル86セント(−1.66%)
・3月10日(金):3万1909ドル64セント(−1.07%)
・3月13日(月):3万1819ドル14セント(−0.28%)

この1週間で3万3431ドル44セント→3万1819ドル14セントまで実に5%の下落になっている。2008年9月15日のリーマン・ショックの教訓があるのでFDICやFRBの預金者対応は実に迅速で見事ではあった。しかし非常に危険な状態であるのは疑いようがない。

3月で思いだされるのは、コロナ感染本格化でニューヨークダウ平均が2万ドル割れしたのは3年前の3月20日だ。あれからNYダウ平均は1万9173.98ドル→3万6338.30ドル(2021年12月31日)まで実にコロナ禍中なのに1.8倍の上昇相場があったのだ。さて、今回は3万ドルの攻防戦では済まないような気もするのだが。