限度額3500万円、創業5年未満の法人なども対象に

政府は3月中に、創業者が起業時に銀行融資を受ける際の経営者保証を不要とする「スタートアップ創出促進保証制度」を創設する。3月中の運用開始に向け、2月20日から全国各地の信用保証協会と金融機関が連携して創業予定者らの事前相談を受け付けている。

保証対象者は、
1.創業予定者(これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある者
2.分社化予定者(中小企業に当たる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者
3.創業後5年未満の法人
4.分社化後5年未満の法人
5.創業後5年未満の法人成り企業

保証限度額は3500万円で、担保・保証人は必要ない。

新たな信用保証制度は、2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえて創設。中小企業庁は12月、金融庁、財務省と連携して「経営者保証改革プログラム」を策定し、融資に対する各信用保証の所定の保証料率を0.2%上乗せすれば経営者保証を負わずに済む仕組みを政策パッケージとしてまとめた。

中小企業庁によると、失敗時のリスクが大きいため起業をためらう起業関心層のおよそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念している。プログラムの策定に際しては金融関係団体などに「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取り組みの促進」を要請し、全国銀行協会も事業価値や将来性を踏まえた融資判断を行うことを申し合わせていた。

保証期間は10年以内、据置も可能

新たな信用保証制度の保証期間は10年以内で、元本返済猶予の据置期間は1年以内(一定の条件を満たせば3年以内)。ただし、保証を受けるには所定の創業計画書の提出が必要。保証申し込み受け付け時点において税務申告1期未終了の創業者は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を有していなければならない。

また、新たな制度の信用保証付き融資を受けた場合、原則として会社を設立して3年目と5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認・助言を受ける。チェックシートの詳細と新たな制度の開始日は後日、中小企業庁のホームページで案内する。

金融庁も4月から、金融機関が経営者に個人保証を求める場合は理由を詳細に説明するよう義務付けるが、新たな信用保証制度で既に契約した融資の経営者保証は外せない。中小企業庁は、従業員50人以下の企業が交わした既存の融資契約のうち7割余りが経営者保証を提供している実態を明らかにしており、さらなる制度の拡充などが課題になりそうだ。

文:M&A Online編集部