映画事業を手がける東宝<9602>、東映<9605>、松竹<9601>の大手3社の業績に差が現れてきた。
東宝は2023年2月に2023年2月期の期末配当を20円増配し40円配にすると発表した。これによって前期の実績45円配が今期は60円配になる。映画「シン・ウルトラマン」や「トップガン マーヴェリック」「すずめの戸締まり」などが大ヒットしたほか「SPY×FAMILY」などのアニメも好調だったことから増配を決めた。
東映も「ONE PIECE FILM RED」が同社グループ歴代第1位の興行収入を記録したのに加え、「THE FIRST SLAM DUNK」や「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」も大ヒットとなった。
一方、松竹は2023年1月に2023年2月期の業績予想を下方修正し営業赤字が拡大する見通しを明らかにした。「ある男」「耳をすませば」などが当初の見込みを下回ったのに加え、興行子会社の入場者数が想定していた水準に及ばなかったことなどから見通しを引き下げた。
東宝、東映の上位2社がコロナ禍を乗り越え順調に業績を回復させているのに対し、3位の松竹は足踏み状態にある。上位2社と3位の差はこのまま広がり続けるのだろうか。
東映はコロナ禍越えに
東宝は2023年2月期第3四半期決算時点で、通期の業績予想(売上高2400億円、営業利益420億円)を据え置いた。この期から会計基準を変更したため増減を公表していないが、前年度の実績(売上高2283億6700万円、営業利益399億4800万円)は上回っている。
コロナ禍前の2020年2月期の業績(売上高2627億6600万円、営業利益528億5700万円)には及ばないが、ヒット作に支えられ2期連続の増収増益となり、回復傾向は鮮明だ。
東映も2023年3月期第3四半期決算時点で、通期の業績予想(売上高1570億円、営業利益316億円)を据え置いた。売上高は前年度比33.6%の増収、営業利益は同77.4%もの増益となる見通しだ。
同社も2期連続の増収増益で、コロナ前の2020年3月期の実績(売上高1413億7600万円、営業利益220億300万円)を上回る。
松竹は2023年2月期の業績予想を当初の売上高852億3000万円から795億4000万円に、営業損益を3億4000万円の赤字から、17億円の赤字に修正した。
期中に投入した配給作品が不振だったのが要因で、その一つ「ある男」は芥川賞作家の平野啓一郎さんの小説を映画化したもので、俳優の妻夫木聡さんが主人公の弁護士を演じ、人間存在の根源を描いている。
もう一つの「耳をすませば」は、少女まんが雑誌で連載された作品を実写映画化したもので、俳優の松坂桃李さんが主演を務めている。
ヒットを飛ばす上位2社の作品は特撮映画やアニメなどで、邦画の実写作品との差は鮮明だ。この傾向は今後のヒット作品、ひいては映画会社の業績を占う材料の一つになるだろうか。
文:M&A Online編集部