手厚い補助率を維持 受付期間は5月12日まで

中小企業庁は3月20日から、2022年度第2次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」(5次公募)のうち「経営革新事業」「廃業・再チャレンジ事業」の申請を受け付ける。残る「専門家活用事業」の公募は3月30日から。受付期間はいずれも5月12日までの予定で、最大3分の2の手厚い補助率を維持する。

同一法人内での後継者候補も対象に

事業承継・引継ぎ補助金は、事業再編や事業統合を含む事業承継を契機として経営革新などを行う中小企業・小規模事業者に対し、経費の一部を補助する制度で、「経営革新事業」、「専門家活用事業」、「廃業・再チャレンジ事業」の3種類の補助金から構成されている。

今回の公募から、事業承継後やM&A後の事業再構築や設備投資、販路開拓などの挑戦にかかる費用をサポートする「経営革新事業」では、同一法人内で承継予定の後継者候補による取り組みも補助対象となる。

さらに、前回まで600万円だった「経営革新事業」の補助上限は、事業終了時に事業場内最低賃金が地域別最低賃金を30円以上上回れば800万円に引き上げられる。なお、引き上げ部分の補助率は2分の1となる。

M&Aによる経営資源のバトンタッチを支援する「専門家活用事業」の補助対象経費(上限600万円)は、国のM&A支援機関登録制度に登録されたファイナンシャルプランナーかM&A仲介業者が提供するサービスのみが対象。在庫廃棄費や解体費などを支援する「廃業・再チャレンジ事業」の補助上限は150万円で、他の2事業と併用できる。

申請数、採択数とも5割強を推移

2021年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金は、2022年度中に計4回の公募期間を切れ目なく設定し、事業者がM&Aなどのタイミングに合わせて通年で申請しやすいように配慮している。3事業を合わせた1次公募(2022年4月22日~6月20日)の申請数は1033件、採択数は531件だった。

一方、2次公募以降の申請数は1000件を割り込み、採択数は500件を切ったまま。直近となる4次公募(12月26日~2023年2月9日)の申請数は810件で採択数は446件。採択率はいずれの公募期間も5割強だった。

2021年度補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」採択率推移グラフ(3事業の合計)

M&A Online

(画像=事業承継・引継ぎ補助金採択結果より集計、M&A Online編集部作成、「M&A Online」より引用)

提供するサービスが「専門家活用事業」の補助対象経費として認められる2022年度のM&A 支援機関は過去最多の2980件に上るが、4次公募の「専門家活用事業」の申請数は518件で、採択されたのは290件(56%)だった。M&A支援機関の大多数が申請にもタッチしていない状況が続けば、登録制度の存在意義も問われることになりかねない。

事業承継・引継ぎ補助金は2023年度当初予算案で、前年度比3億7000万円増の20億円が計上されている。中小企業庁が2月に発足した「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」では、中小企業の競争優位を創出する成長志向のM&Aを促すための論議が始まっており、こうした動きとも連動する補助条件のさらなる見直しなどが不可欠となりそうだ。

文:M&A Online編集部