エクサウィザーズ<4259>は、静岡大学発のAI(人工知能)ベンチャー。「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」ことを目指し、2016年2月に元DeNA取締役会長の春田真氏を社長に迎えて前身となるエクサインテリジェンスとして創業した。

プロ経営者がトップに、合併で上場果たす

2017年10月に静岡大学発ベンチャーのデジタルセンセーションと合併し、エクサウィザーズに社名変更して現在に至っている。リクルートホールディングス出身で静岡大客員教授の石山洸氏が合併後の社長に就任した。

合併を経験し、いわゆる「プロ経営者」を招き入れるという、大学発ベンチャーとしては異色の存在と言える。設立当初から最新の経営プロセスを導入したこともあり、2021年12月には早くも東証マザーズ市場への上場を果たしている。

売上高の約8割を占めるのが、AIを活用して大企業の顧客課題を解決するコンサルティング事業だ。同社の戦略コンサルタントが企業の経営幹部と密接に連携を取りながら、AIのアルゴリズム(計算手順)などを開発。中長期計画のKPI(重要業績評価指標)達成などに効果を上げているという。

超高齢化社会などの課題に対応するための医療・介護や働き方、ロボット、金融、物流などの分野でのAIを利用した問題解決にも力を入れている。こうした市場へ進出するため、相次いで他社との連携策を打ち出している。

2019年7月に人材派遣サービスの「テンプスタッフ」や転職サービス「doda」を手がけるパーソルグループを皮切りに、2021年3月にアフラック生命と、2021年8月には住友生命と資本業務提携した。

2021年4月にエグゼクティブ対象のDX推進ネットワーク「JEDIN」を、2021年6月に福祉用具レンタルサービスのヤマシタとエクサホームケアをそれぞれ設立。2021年4月にはIT開発会社のエクスウェアを買収して子会社化するなど、ベンチャーながらM&Aの実績もある。

大学発ベンチャーと言えば「技術力」や「開発力」で注目されることが多い。しかし、同社は他社との連携によるネットワークを利用してビジネスチャンスを広げていく「経営戦略力」が大企業並みに秀でている。

確かにAIは最先端技術だが、それだけではビジネスにならない。社会とのつながりがあるビジネスと結びついて初めてマネタイズできる。人間にとって「知能」は極めて重要だが、「身体」があってこそ行動できるのと同じだ。

大学発ベンチャーとしては一風変わったエクサウィザーズの経営戦略だが、AIビジネスでは極めて「王道」を歩んでいると言える。

文:M&A Online編集部