先週の世界の金融市場はシリコンバレー銀行(SVB.)破綻を発端とし、UBS.によるクレディット・スイス銀行の買収で金融不安が一服し、前週までのリスク・オフ(投資家が既存の債権の処分を図り、新たな投資を手控える。)からの巻き戻しの展開となった。
リスク・オフで買われた物(為替市場ではドルと円、そして債券)が売り戻されて対ドルでその他通貨は上昇し、リスク・オフで売られた株は買われて株価も大きく上げることとなって週初に週の安値を付けた多くが週末に週の高値を付ける結果となった。
ドル・円相場はリスク・オフ局面で円買いが優勢でドルが対円で下げた反動で金曜日に週の高値133.59を付けた。
(注:3月27日のデータ上の通貨は当日の安値、株価は終値で、3月31日は通貨は当日の高値、株価は終値を表す。)
リスク・オフ局面で買われた米国10年債は同じく売られて金利は一旦は上昇したが、金曜日に発表された2月PCEデフレーターが市場予想よりも減速したことで、FRB.による利上げ停止観測の高まりから週末に掛けて金利は低下した。
市場では前週までの悲観から大きく楽観に転換した感が有るが、どうもよく分からないのがFRB.のスタンスである。
市場は5月のFOMC.で利上げ打ち止め、そして早ければ年内の利下げ開始を催促するが、FRB.高官からは相変わらずタカ派的(金融引き締めに積極的)な発言が相次いで市場とFRB.の認識にずれが見られる。
SVB.の破綻は拙いALM.(Asset and Liability Management.)、要するに短期の預金(Liability.)を長期の債権(Asset.)に投資をして急な預金引き出しによるLiability.の枯渇と、金利上昇(債券価格下落)によるAsset.価格の下落と言う“教科書に出て来る様な、やってはならない。”投資戦略の失敗によるものであり、FRB.の言う様に“殆どの銀行はMark to market.”(時価会計)で日々きちんとしたリスク計算を行っているので、次のSVB.は出て来ない。”のかも知れないが、ある意味SVB.はFRB.の余りにも急激で大幅な利上げの犠牲者であったかも知れない。
このFRB.の余りにも急激で大幅な利上げが何れ米国経済成長の大きな足枷となって景気減速をもたらすことは間違いあるまい。
市場はそれを読み取って早期の利下げを期待しているのではなかろうか?
今週は3月の米国雇用統計の発表が有り、市場は失業率は前月と同じく3.6%、非農業部門雇用者数は前月の+31万1千人から+24万人へと減少し、平均時給は前年比で前月の+4.6%から+4.3%へ減少すると見る。
発表結果が市場予想に近いものであればFRB.による利上げ停止機運が高まってドルには下げ要因となるかも知れない。
今週のテクニカル分析の見立てはドルの反転上昇を見て上値警戒に変更。
133.50を上切れば134.50までの上昇を見込み、逆に132.50を下切れば130.50までの再度の下落の可能性も有る。