この記事は2023年3月31日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「回復途上の中国経済を覆う若年層の雇用不安」を一部編集し、転載したものです。


回復途上の中国経済を覆う若年層の雇用不安
(画像=vegefox.com/stock.adobe.com)

中国では、昨秋の共産党大会で習近平指導部が異例の3期目入りを果たし、3月の全人代(全国人民代表大会)を経て本格的に始動した。昨年は政治的に重要な年にもかかわらず、当局がゼロコロナ戦略に執着したことで幅広い経済活動に悪影響が出たため、経済成長率は前年比プラス3.0%と政府目標(5.5%前後)を大きく下回った(図表)。

一方、一昨年末以降における中銀(中国人民銀行)の断続的な金融緩和により、中国国内におけるマネーを取り巻く環境が大きく改善した。当局は昨年末以降にゼロコロナ戦略の転換に動き、年明けには国境再開により国内外で人の移動が自由になるなど、経済活動の正常化の取り組みも着実に前進している。実際に、今年の春節(旧正月)連休中における人の移動は、依然としてコロナ禍前を大きく下回るものの前年と比べれば大幅に増加しており、ゼロコロナ終了により底入れしている。また、突然の戦略転換による混乱を受けて昨年末にかけて下振れした企業マインドも、年明け以降は底入れの動きを強めている。さらに、23年の経済成長率は前年比プラス1.3ポイントと試算されていることから、成長率の実現のハードルは決して高くないと思われる。

しかし、ゼロコロナ戦略の長期化による悪影響は若年層を中心に色濃く現われており、10代後半から20代前半に限れば、足下の失業率は20%近くで高止まりするなど厳しい状況にある。さらに、今年は大卒者数が1,158万人と過去最高水準となる見通しであり、若年層を取り巻く雇用環境は一段と厳しいものとなる可能性がある。政府は今年の都市部における新規雇用を1,200万人以上創出する方針を掲げるなど、ここ数年と同様に雇用政策を重視する考えを示しているが、その背景にはこうした事情が大きく影響している。

若年層を巡る状況は、中長期的には中国社会全体に影響を与える。昨年の中国は61年ぶりに人口が減少に転じるなど、コロナ禍を経て少子高齢化の動きが大きく進んだ。若年層の雇用の不安定化はこうした動きに一段と拍車を掛けるとともに、想定以上の速さで人口減少が進むリスクをはらんでいる。

00年代以降の世界経済は、その成長の3分の1程度を中国経済の成長に支えられるなど大きく依存してきた。当面はそうした傾向に変化がないと見込まれるなか、今後も中国経済の動向は世界経済を大きく揺さぶることになるだろう。

回復途上の中国経済を覆う若年層の雇用不安
(画像=きんざいOnline)

第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト/西濵 徹
週刊金融財政事情 2023年4月4日号