入社式で大谷喜一社長が「マーケット自体は規模が伸びない。成長戦略の一つはM&Aだ」と語ったアインホールディングス<9627>。実際に何件のM&Aを実施したのか?東証の適時開示によると、同社は2016年以降で6件のM&Aを成功させている。

本業の調剤薬局を中心にM&Aを展開

最大の案件は2016年11月に公表した53億9000万円(アドバイザリー費用などを含む)の葵調剤(仙台市)買収。同社は全国で調剤薬局115店舗を展開しており、このM&Aでアインの店舗網は1000店の大台を超えた。現在は調剤薬局とドラッグストアを合わせて、1286店(2023年1月末時点)まで増えている。

同社は主に調剤薬局を買収しているが、2020年2月には病院を中心に企業・官公庁、大学などの施設内売店を受託運営するシダックスアイ(東京都調布市)を買収している。同社の病院向けアウトソース業務を通じて関係づくりを強化する狙いがあった。

2019年10月にはエステティクス(東京都港区)からメイクアップコスメブランド「DAZZSHOP(ダズショップ)」事業を譲受している。同社はカラーコンタクトレンズをメイクアップの一つととらえ、アイメイク中心のメイクアップ商品を展開。大都市圏に出店しているコスメを中心としたドラッグストア「アインズ&コスメ」の商品力強化を狙う。


過去には経営統合の失敗も

アインは調剤薬局全国1位で、2022年4月期の売上高は3162億円、営業利益は151億円。北海道で創業したが、大都市圏を中心に病院前の門前薬局を全国展開している。

2007年10月にハックドラッグを運営するCFSコーポレーション(現・ウエルシアホールディングス<3141>)と経営統合すると発表したが、同社筆頭株主で傘下にウエルシアを擁するイオン<8267>が猛反発。激しい委任状争奪戦の末に臨時株主総会で否決され、破談に終わっている。

その後、アインは2008年8月にセブン&アイ・ホールディングス<3382>と資本・業務提携。2009年6月にはセブン&アイ、イトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパンとの共同出資でドラッグストア運営会社のセブンヘルスケアを設立した。

ショッピングセンター内でのドラッグストアや、病院周辺で調剤薬局とコンビニの共同店舗などの出店に取り組む。さらにアインはドラッグストア「アインズ&トルペ」の独自展開に乗り出し、セブン&アイの物流ノウハウを導入すると同時に、コンビニでの医薬品販売をにらんだ人材交流とプライベートブランド(PB)商品の開発に取り組んでいる。

公表日スキーム買収金額内 容
2022年5月9日株式譲渡非公表調剤薬局経営のファーマシィホールディングスを子会社化
2020年2月27日株式譲渡15億円シダックス傘下で病院を中心に施設内売店を受託運営するシダックスアイを子会社化
2019年10月31日事業譲渡非公表エステティクスのメイクアップコスメブランド「DAZZSHOP」を取得
2019年2月25日株式譲渡非公表調剤薬局の土屋薬品を子会社化
2018年8月23日株式譲渡非公表調剤薬局経営のコム・メディカルなど2社を子会社化
2016年11月25日株式譲渡53億9600万円調剤薬局経営の葵調剤を子会社化

文:M&A Online