課徴金納付命令、前年度の約6倍で累計件数は29件
金融庁が2022年度に納付命令を発出した課徴金額は35億5291万円となり、過去5年間で最多を更新した。前年度(6億3148万円)の6倍近くで、累計件数も29件と前年度より10件多かった。
2022年度の課徴金額は過去5年間で唯一の30億円台。日産自動車に係る有価証券報告書などの虚偽記載に対する課徴金納付命令決定の変更処分(22億2489万円)が7割近くを占めるが、ジャパンディスプレイの有価証券報告書などの虚偽記載に対する納付命令(21億6333万円)が出された2020年度の25億9968万円を上回った。
課徴金1億円超の大型事案も後を絶たず
日産自動車の変更処分を除いた課徴金額も前年度の2倍を超える13億円余りに到達。2018年度の12億1289万円よりも多く、2019年度の4億5458万円(日産自動車に対する変更処分前の課徴金納付命令決定を除く)の3倍まで膨らんだ。件数は2018年度の41件、2019年度の48件(同)に及ばないため、1件当たりの課徴金額が増えていることがうかがえる。
2022年度は4月に三信建設工業株式に係る仮装売買に対して3億3475万円の納付命令が出たほか、5月には自動翻訳を開発・販売するメタリアルにおける有価証券報告書などの虚偽記載で2億8309億円の納付命令が決定。9月には半導体商社のイノテックとの契約締結交渉者役員による内部者取引(インサイダー取引)に1億9625億円の納付命令が下った。
さらに、2023年2月には生体認証機器メーカーのディー・ディー・エスによる有価証券報告書などの虚偽記載に2億573万円の納付命令が出ており、課徴金額が1億円を超える大型事案は後を絶たないのが実情だ。
悪用されやすいTOB情報
29件の内訳は内部者取引10件、虚偽記載9件、相場操縦7件など。3年連続で前年度を上回った累計件数のトップの割合を占める内部者取引は、公表前の株式公開買い付け(TOB)情報を悪用した株式売買も目立つ。
2022年度に課徴金納付命令が出たTOB絡みの事案は、公開買付者と三信建設工業の契約締結交渉者による同社株式の内部者取引(4月)が皮切り。7月には、伊藤忠商事がファミリーマートに対して計画したTOBに関する契約締結交渉者の役員が手を染めた同社株式の売買に処分が下された。
10月には、りそなホールディングスによるTOBを事前に知った関西みらいフィナンシャルグループの社員と複数の親族が内部者取引で同社株を購入したとして摘発。同月は名古屋のビルメンテナンス会社、大成の社員が自社を対象としたTOB情報が公表される前に知人に同社株の買い付けを推奨した不正行為にも課徴金の支払いが言い渡された。