「コロナ禍は終わったのに…」との嘆息が聞こえてきそうだ。5月8日の新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」移行に先駆け、マスク着用要請の緩和など「脱コロナ」に向けた正常化の動きが広がってきた。ところがコロナ禍が収束しているにもかからわらず、コロナ関連倒産はむしろ加速しているというのだ。

コロナ倒産、4カ月連続で月間最多を更新する勢い

東京商工リサーチによれば、3月の負債総額が1000万円を超えるコロナ関連倒産は、20日までに190件となっている。2022年通年の同倒産は前年比32.8%増の2282件と大幅に増えた。

2023年に入っても勢いは衰えず、1月は245件、2月も249件と昨年12月から3カ月連続で月間最多を更新している。3月はこのままのペースだと300件に迫るなど、増勢は止まらない。

累計コロナ倒産件数5323件のうち、業種別ではコロナ禍で来店客が減ったのに加えて行動様式の変化で客足が戻らず、食材や光熱費の高騰に苦しむ飲食業が881件と最多に。次いで建設業が644件、アパレル関連が412件、飲食料品卸売業が235件、宿泊業が173件の順だった。


再生型M&Aによる立て直しが急務

倒産の形態では、破産が4796件(構成比90.0%)と最多。次いで取引停止処分が191件(同3.5%)、民事再生法が187件(同3.5%)、特別清算が125件(同2.3%)、内整理が18件(同0.3%)、会社更生法が6件(同0.1%)だった。再生につながる会社更生法と民事再生法による倒産の合計は193件と、全体の3.6%に過ぎない。

全ての倒産企業が再生可能ではなかっただろうが、第三者承継などの再生スキームで存続可能だった企業もあったはずだ。今後は再生型M&Aの活用促進が課題になる。

一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」が「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」を公表するなど、金融機関を中心にコロナ禍からの脱却を念頭に、迅速かつ柔軟な中小企業の事業再生に取り組める仕組みづくりが進んでいる。

コロナ禍からの正常化に伴って業績が回復する企業が増える一方、物価高や人手不足といった逆風も強まっている。コロナ関連融資の元金据え置き期間の終了に伴う返済開始で、資金繰りに行き詰まる企業も出てくるだろう。事業承継や企業再生の取り組み拡充は「待ったなし」だ。

文:M&A Online編集部