2023年序盤のM&A戦線で山梨県が気を吐いている。第1四半期(1~3月)に、山梨県の企業がかかわるM&Aは4件(適時開示ベース)と前年の年間件数と並んだ。全国47都道府県のうち、第1四半期を終えた時点で、前年件数に肩を並べたのはほかに2件の鳥取県だけ。一方、ゼロ件も今のところ12県ある。

上場企業に義務付けられている適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)についてM&A Onlineが調べた。それによると、2023年第1四半期のM&A件数は275件で、前年を38件上回るハイペースで推移している。

山梨県、「30位前後」から抜け出すか?

275件のM&Aについて、都道府県別に買い手、対象(自社や子会社・事業がターゲット)、売り手のいずれかの立場でM&Aにかかわった件数を単純集計したところ、一覧表の通り、山梨県、鳥取県の2県が第1四半期段階で前年の年間件数に届いた。

集計は、北海道のA社(買い手)が神奈川県に本社を置くB社(売り手)の千葉県にある子会社(対象)を買収したケースは北海道、神奈川県、千葉県を各1件とし、逆に同じ県内ですべてが完結する場合は当該県の1件のみとカウントした。

山梨県は4件中、県内企業が買い手(いずれも上場企業)に回ったのが3件。オキサイドがイスラエルの光学結晶メーカーRaicol Crystalsを、フレアスがアンビス(東京都)からホスピス事業を、Mipoxがスガコーディング(静岡市)からコーティング事業をそれぞれ買収することを発表した。

残る1件は県内企業を対象とする案件。大阪市を本社とする中本パックスがニッセ―(南アルプス市)の食品容器成型事業を取得することになったのがそれだ。

過去5年をみると、山梨県のM&A件数は2019年から2022年まで4年連続で4件で、今年はこれに早くも並んだのだ。山梨県は全都道府県ベースでは30位前後が定位置。最も件数を稼いでいるのが介護事業を展開するフレアスで、2023年分を含めて4件の買収を手がけている。フレアスは登記上の本社を中巨摩郡昭和町に置くが、実際の本社機能は東京都内にある。

山梨県を代表する大手企業といえば、ファナック(南都留郡忍野村)、富士急行(富士吉田市)が思い浮かぶ。しかし、両社ともM&Aとは距離を置いた格好となっている。

一方、鳥取県は全国的にM&Aに関して最下位グループにある。2019年1件、20年2件、21年0件、22年2件で推移し、今年はすでに2件。うち1件が買収案件で、婦人用バッグメーカーのバルコスがネットによる婦人服・雑貨のネット販売を手がけるBFLAT Holdings(大阪市)を傘下に収めることになった。

◎都道府県別M&Aの推移(買い手、対象企業・事業、売り手の所在地を都道府県別に単純集計)

2021年 2022年 2023年1~3月
北海道 18 33 9
青森県 1 1 0
岩手県 10 15 0
秋田県 1 0 0
宮城県 8 6 4
山形県 2 2 0
福島県 4 5 3
群馬県 7 10 3
栃木県 7 8 1
茨城県 17 13 6
埼玉県 14 31 12
千葉県 27 18 3
東京都 681 704 200
神奈川県 52 63 14
山梨県 4 4 4
長野県 12 21 4
新潟県 12 8 3
富山県 6 9 1
石川県 13 14 3
福井県 8 5 1
岐阜県 13 14 5
静岡県 20 22 11
愛知県 70 70 15
三重県 3 6 3
滋賀県 5 4 3
京都府 18 26 11
大阪府 125 147 43
兵庫県 30 27 6
奈良県 1 2 0
和歌山県 0 4 1
鳥取県 0 2 2
島根県 1 2 0
岡山県 7 6 2
広島県 14 19 4
山口県 5 6 3
徳島県 5 6 3
香川県 2 5 0
愛媛県 5 4 2
高知県 2 3 0
福岡県 29 43 11
佐賀県 1 1 0
長崎県 0 5 0
熊本県 1 3 1
大分県 2 4 1
宮崎県 1 3 2
鹿児島県 3 4 0
沖縄県 1 6 0

文:M&A Online