ストライク<6196>は20日、東京都内で「スタートアップと事業会社のオープンイノベーションの促進と、スタートアップへのM&Aを促進する税制」について討論する「Conference of S venture Lab.」を開いた。

「オープンイノベーション促進税制」の狙いとは

岸田政権が経済政策の「1丁目1番地」とするスタートアップ企業支援が加速している。その目玉の一つが、「オープンイノベーション促進税制」だ。トークセッションには同税制を主導した経済産業省から南知果スタートアップ創出推進室総括企画調整官と 、オープンイノベーションに積極的に取んでいるKDDI<9433>から中馬和彦事業創造本部副本部長が参加。同税制の狙いと効果について討論した。

弁護士としてスタートアップへのアドバイザリーとしてのキャリアも持つ南調整官は政府が同税制を導入した経緯について、「米国ではスタートアップが経済成長のドライバーになっていると同時に、コロナ禍や環境問題といった社会課題の解決を果たしている」ことから、岸田首相主導で1兆円規模の予算と7つの税制改正といった積極的なスタートアップ支援策を打ち出したと説明。

一般に企業は安定期に入ると利益率が下がる傾向がある。そこで大企業がスタートアップとの提携や買収に取り組むことで、大企業の成長とスタートアップの振興というWin-Winの関係を築くための税制改革に乗り出したという。


オープンイノベーション税制は「国からのメッセージ」

政府は令和2年(2020年)から同税制をスタートし、オープンイノベーションによるスタートアップ支援に取り組んでいる。スタートアップの株式取得については出資額の25%の所得控除を認めた。これにより、大企業からスタートアップへのリスクマネーを入りやすくした。現時点で約250件の利用実績があるという。

南調整官は、国内スタートアップのEXIT(出口)戦略について「新規上場(IPO)を目指す企業が多く、M&Aを志向する企業は24%。一方、米国では90%に達する」と指摘。同税制を利用したM&Aの選択肢を強調した。

KDDIの中馬副本部長も「大企業からのM&Aはスタートアップ経営者にとってゴールではなく、成長のステップだ」とみる。同時に「事業を成長させるのは大企業、新しい事業をおこすのは起業家が得意。大企業が社内で新しい事業を起こしたり、起業家がスタートアップで大企業への成長を目指したりするよりも、それぞれ得意なことに取り組んだほうが成功の精度が上がる」と話す。

中馬副本部長は同税制について「経産省も細かいところまで相談に乗ってくれ、強烈な気合が入っていると感じている。政府からの『オープンイノベーションをやってくれ』という強烈メッセージだと思う」と、大企業やスタートアップに利用を呼びかけた。

M&A Online
(画像=政府と大企業の立場からオープンイノベーション税制を語る南さん(左)と中馬さん、「M&A Online」より引用)

文:M&A Online