投資信託は運用をプロに任せることができることから、現役の投資家だけでなく投資初心者からも高い人気があります。しかし多くの投資信託があるなかで、そのすべてが優良銘柄というわけではありません。なかには投資するべきではない投資信託もあるので、注意が必要です。

そんな注意すべき投資信託がもつ特徴のひとつに、タコ足配当があります。タコ足配当に該当する銘柄はタコ足銘柄とも呼ばれ、基本的には投資を避けたほうが無難です。

そもそもタコ足銘柄とはどんな銘柄のことで、なぜ避けるべきなのでしょうか。本記事ではタコ足銘柄を含めて、避けるべき投資信託にありがちな2つの特徴を解説します。

投資信託のタコ足配当とは?

投資信託の「タコ足配当」とは?避けるべき投資信託の特徴
(画像=Dilok/stock.adobe.com)

投資信託のなかには、所有しているだけで定期的に分配金が支払われる銘柄があります。運用益が投資家に分配されているのであれば問題はありませんし、安定的な分配金収入が得られることは投資信託の大きな魅力です。

しかし、投資信託のなかには十分な運用益が出ていないのに、過剰な分配金を出している銘柄があります。なぜそんなことをするのかというと、分配金利回りを高くすることで魅力的な銘柄に見せるためです。

運用益を超える分配金を出すためには、保有資産を売却したり積立金を取り崩したりすることになります。こうした配当(分配金)のことを、タコ足配当といいます。タコには自分の足を食べる習性があるため、それになぞらえてこう呼ばれています。

タコ足配当がなぜよくないのか

タコ足配当はよくない、タコ足配当を出している投資信託を選ぶべきではないといわれる最大の理由は、「儲からない」からです。その仕組みについて解説しましょう。

タコ足配当を出している投資信託は分配金を出せるほどの運用益を出せていないことが多いのですが、それでも分配金を出して「利回りの高さ」を維持するために運用原資を配当として支払っている場合があります。

これを続けていると投資信託の純資産総額が減少し、基準価額と呼ばれる投資信託の価格が下落します。なぜ基準価額が減少するのかというと、以下の計算式で基準価額が求められているからです。

純資産総額 ÷ 総口数 = 基準価額

投資信託は非上場なので、上場株式などのように市場流通しているわけではありません。そのため基準価額は市場の需給ではなく、上記の計算式で決まります。

この計算式において純資産総額が減って総口数が変わらないのであれば、基準価額は下落します。つまり、タコ足配当で分配金を受け取ったとしてもそれは自分のお金が払い戻されているだけです。しかも投資信託には購入時の手数料や信託報酬といったコストが発生しているので、自分のお金が払い戻されるのに手数料を支払っていることになります。

これが、タコ足配当がよくないとされる最大の理由です。

毎月分配型に注意

すべての銘柄がそうだとはいえませんが、毎月分配型の投資信託にはタコ足配当を出しているものが多く見られます。そもそも毎月安定して分配金を出すには多くの運用益を上げている必要があり、決して簡単なことではありません。かくして毎月分配型の投資信託は分配金を捻出するためにタコ足配当をしている可能性が高くなるわけです。

毎月分配型を含む投資信託の購入を検討する際には、その投資信託の目論見書もしっかりチェックしましょう。そこに「特別分配金」の記載があったら、それはタコ足配当の可能性大です。目論見書に以下のようなイメージ図があったら、要注意です。

投資信託で運用するならETFがおすすめ

投資信託のなかには、証券取引所に上場している銘柄群があります。これを、ETFといいます。投資信託で資産運用をするのであればETFがおすすめですが、その理由は以下の3つです。

タコ足配当がない

ETFは非上場の投資信託と違ってタコ足配当がないため、タコ足配当の銘柄を避けたいのであればETFは無難な選択肢です。ETFは上場しているため、価格は市場参加者による需給で決まります。仮に運用益を上回るような分配金、つまりタコ足配当があれば純資産残高の減少を嫌気して売られる可能性が高く、市場から自然淘汰されることでしょう。

ETFはインデックス運用

ETFは市場のさまざまな指数と連動するように運用されています。これはインデックス型と呼ばれるもので、例えば株価指数と連動するETFであれば該当する株式市場全体の成長を資産増につなげることができます。

日経平均株価やTOPIX、米国のS&P500やナスダック100指数など、世界にはたくさんの株価指数があります。S&P500のように一時的には下落をしながらも長期的な右肩上がりを続けている株価指数と連動するETFを購入すると、「米国の主要な500銘柄」に分散投資をするリスクヘッジを実現しつつ、S&P500の成長力を味方につけることができます。

運用コストが安い

ETFは市場の指数と連動するように運用するだけなので運用側の手間がそれほどかかっておらず、そのことが運用コストにも反映しています。非上場の投資信託と比べるとETFは全体的に信託報酬が安く、また売買手数料も株式の売買手数料に準じているため、ネット証券を利用するとコストを抑えやすいメリットがあります。

ETFであれば毎月分配型でも安心

タコ足配当の可能性がある毎月分配型には注意が必要ですが、それでも保有しているだけで毎月安定的な収入があるのは、老後の「自分年金」を構築する意味でも有益です。ETFならタコ足配当の心配がないということで、ETFのなかに毎月分配型の銘柄はないのかと考えた方は多いのではないでしょうか。

結論から述べますと、ETFのなかにも毎月分配型の銘柄があります。債券型ETFといって債券で運用しているETFのなかには、「上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型(1677)」のように、タコ足配当をすることなく毎月分配を実現している銘柄があります。2023年4月期の分配金は、1口あたり97円でした。同ETFを100口保有していると分配金は9,700円。毎月1万円近い副収入が入る仕組みを作ることができます。

日本だけでなく米国のETFにも、毎月分配型の銘柄があります。もちろん米国のETFもタコ足配当は行っていないので、支払われる分配金はすべて運用益です。債券型であれば「iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)」や「iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)」などが有名です。いずれもブラックロックという世界的に有名な大手運用会社が運用しており、高い人気を誇ります。

株式型ETFにも、毎月分配型の銘柄があります。代表的なものとしては「iシェアーズ 米国優先株式 ETF(PFF)」や「グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF(QYLD)」などです。これらの銘柄は米国ETFのなかでも高配当であることで知られており、資産形成を進めて保有株数を増やせばETFの分配金で生計を立てることも不可能ではありません。

まとめ

タコ足配当の問題の本質は、見せかけの高配当で投資家からの注目を集め、投資信託の販売実績を伸ばそうとしていることです。投資信託は運用会社と投資家の双方に利益があることが理想ですが、タコ足配当はその理想からは遠い存在といえます。

もちろん投資信託のなかにも運用益をしっかりと分配金として還元している銘柄もあるので、そういった銘柄を選ぶか、そもそもタコ足配当のないETFから選ぶのが無難です。

配当の高い投資信託に関心をもっている方の多くは、「配当収入生活」もしくはそれに近い収入を得ることに魅力を感じていることと思います。その理想を実現したいあまりに、配当だけを比較して投資信託を選ぶことのないようにしましょう。

(提供:Incomepress



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