本記事は、岩田松雄氏の著書『ブランド 「自分の価値」を見つける48の心得』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
数億円稼ぐディーラーがシャツをまめに着替える理由
超高給取りの代名詞といえば、外資系証券会社で働く歩合制のディーラーです。彼らは為替や株式などで巨額の資金の運用を任せられ、得られた利益から一定の割合が報酬に加えられて、数億円~数十億円の年収を稼いでいる人もいます。
知人に聞いた、有名な某外資系証券会社での話です。ディーラーたちは、毎日3~5回もカッターシャツを着替えにトイレに行くそうです。
ディーラーという仕事は、結果がすべての生き馬の目を抜く大変厳しい仕事です。
多くのケースで、誰かの利益は他の誰かの損失であり、ミスを犯せばマーケットから徹底的に食い物にされます。
彼らは、大きな相場を張っている事実や、逆にディールがうまくいっていないことを周囲に悟られないようにしなければなりません。しかし、大きなプレッシャーがかかった局面では、知らないうちに冷や汗が流れてしまう。
そこでディーラーたちは、冷静を装うために、汗がシャツに染みるたびに同じ種類の新しいシャツに着替えるというのです。
すごい世界があるものです。多くのディーラーの「選手生命」は、もって30代後半までと言われています。私には、こんな状況でただお金のためだけに働くことは、とてもできそうもありません。
ディーラーの話とは対照的に、最近、私にはこちら側の世界のほうがホッとするな、と思う出来事がありました。
私が毎朝通っている、あるスターバックスのお店。顔なじみになったある主婦パートナーは、私の『ミッション』を読んでくださり、ますますスターバックスで働くことが楽しくなったと言ってくれました。彼女は、夕方になってお店をあとにするとき、後ろ髪を引かれるような感覚に襲われるそうです。
「早く明日の朝にならないかしら。働くことが待ち遠しい! と思っちゃうんです」
退社するなり、翌朝の出勤時間が待ち遠しい、と言うのです。これもすごい話です。
スターバックスには、やはり金銭では得られない魅力があるのです。
別のパートナーからはこんな話を聞きました。ある店舗で、女性パートナーが男性店長に恋をしてしまった、と言うのです。どうやってアプローチして、どのタイミングで告白するべきか。周りのパートナーたちも応援しています。
そんな彼女を助けるため、先輩の元パートナーが何時間も相談を受けてあげている。
当の女性パートナーの初々しさもさることながら、周りの仲間たちが、本当に考えられないほど「いい人たち」なのです。私はその現場に居合わせて、心がとっても和んだことを覚えています。
今日退社するのが惜しい。仲間の恋を手助けしたい。そんな彼や彼女たちは、プレッシャーを隠すためにシャツを着替えるようなことは、決してありません。