生産性向上へ「成長志向M&Aの促進」を支援

中小企業庁は4月、中小企業の成長経営の実現に向けた研究会の第4回会合を開き、「成長志向M&Aの促進」にかかる政策支援の方向性を議論した。M&Aを中小企業の生産性向上の重要な手段のひとつと位置づけ、期待通りの成長を実現できない場合のリスクをカバーする観点からの手当の充実などを検討する。

中小企業庁はこれまで、主に後継者不在を理由とした廃業を防ぐ観点で事業承継型のM&Aを進めてきたが、今後は成長志向のM&Aにも焦点を当て、政府としていかなる観点を持ちながら促進していくべきか検討を深めていく必要があるとしている。

M&A実施企業は売上高と生産性が向上

中小企業庁が公表した研究会の資料によると、M&Aを実施した中小企業は、実施していない企業に比べて売上高と生産性の向上を実現。自社の成長戦略として積極的にM&Aの売り手となることで経営を改善し、親会社の経営資源を活用した新事業展開や設備投資、賃上げにつなげるケースも存在するとしている。

M&A Online
(画像= 経済産業省・中小企業庁「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 第4回資料」より引用、「M&A Online」より引用)

また、過去にM&Aを実施したことがある買い手企業はM&Aに対する障壁が下がる傾向が見られると説明。中小M&Aの良好な取引環境を整備し、M&Aの取引自体を活発化させることで成長を生み出すM&Aが促進される好循環をつくり出すことが重要との認識を打ち出した。

M&A Online
(画像=経済産業省・中小企業庁「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 第4回資料」より引用、「M&A Online」より引用)

第三者承継時の株式取得資金などを支援へ

なお、実績として報告された契約のうち譲渡側3,403件を見ると、M&A件数のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)/仲介別では「仲介」が約8割、「FA」が約2割の構成比となっている。

M&A Online

(画像=経済産業省・中小企業庁「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 第4回資料」より引用、「M&A Online」より引用)

研究会では、中小M&Aに関する施策検討の方向性として、M&Aを通じた第三者承継については①M&A時の株式取得資金やその後の設備投資資金需要に対する支援、②人材確保・賃上げに対する支援、③M&Aを契機とした事業支援などにより後押し。仲介サービスの質の向上や手数料の見える化など既存の中小M&Aガイドラインを見直す必要性も指摘した。

ビッグデータを活用した支援システムを2025年に運用開始

成長志向のM&Aに対する支援は、3月に開かれた中小企業の経営資源集約化等に関する検討会でも主な課題と対応の方向性を整理しており、研究会は5月から6月にかけて想定している中間とりまとめに向けて政策支援について論議。成長経営を実践する中小企業を多数創出するための新たな政策の方向性の提示を目指す。

また、資金調達から事業再構築などのニーズに対して、中小企業と支援者をつなぐ「ミラサポコネクト構想」を推進。同構想はビッグデータを活用して経営課題を解決したい中小企業を支援するため、中小企業庁の内外のシステムを連携させる官民データ基盤で、2025年度の本格運用開始を想定している。

2月15日に初会合を開いた研究会は物価上昇や深刻な人手不足、GX(グリーントランスフォーメーション)・サプライチェーンに関する社会的要請などの経済社会情勢を踏まえ、中小企業の成長経営の実現に向けた新たな方向性を検討する目的で設置された。売上高1~100億円の企業が将来的に100億円超に成長することを主な検討スコープと想定している。

文:M&A Online