その他の資金調達の方法
ここまで解説してきた3つの方法以外にも、資金調達の方法は存在する。例えば、国や自治体が用意している補助金や助成金の利用だ。
また、クラウドファンディングには、出資の1つとして紹介した株式型クラウドファンディングのほか、売買型や寄付型のクラウドファンディングもある。
売買型:出資の見返りとして新商品やサービスを提供する形式
寄付型:社会貢献などが目的で出資の見返りがない形式
売買型や寄付型では、資本ではなく資産や収入として会計処理するため、配当金を支払う必要もない。
起業・開業で資金調達が必要なタイミング
資金調達の方法はたくさんあるため、どの選択肢を選ぶべきか悩むことも多いだろう。資金調達の方法を決める際には、投資ラウンドの考え方が参考になる。
投資ラウンドとは、投資家が投資する際の判断基準になるよう、経営のステージを段階的に分類したものだ。出資を受ける会社目線で「資金調達ラウンド」と呼ばれることもある。
自社がどの投資ラウンドに属するか知ることで、資金調達の方法を選びやすくなるかもしれない。
なお、投資ラウンドには「シード」から「レイター」まで4つの段階があり、それぞれの段階がさらに細かく分類されている。
シードからシリーズDまでの代表的な投資ラウンドの特徴や出資額、資金調達の選択肢について解説していく。
シード
シードとは、ビジネスモデルが決まり、開業や起業を実行に移すステージだ。市場調査や開発体制の整備など、商品やサービスのリリースに向けた準備段階といえる。出資を受ける目的は、調査や開発にかかる人件費などの費用調達だ。
シードの出資額目安は事業内容によるため数百万円から数億円といわれており、資金調達の選択肢には以下のようなものがある。
・日本政策金融公庫からの融資
・民間の金融機関からの融資
・エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資
・株式型クラウドファンディング など
シリーズA
シリーズAとは、商品やサービスの提供を開始した段階で、売上拡大や認知度の向上を目指すステージを指す。マーケティングや人材確保のための費用、設備投資資金などが必要となる。
シリーズAの出資額の目安は、数千万円から数十億円だ。
資金調達の選択肢としては、ベンチャーキャピタルからの出資のほか、補助金や助成金の活用も積極的に検討したい。認知度向上のために株式型クラウドファンディングを活用するのもいいだろう。
シリーズB
シリーズBとは、商品やサービスが評価されて事業が軌道に乗り始めた段階で、さらなる新規顧客の獲得や商品・サービスの品質向上、黒字化を目指すステージにあたる。創業者や投資家が、上場やM&Aなどのイグジットを考え始める時期でもあり、人材確保や販売促進、設備投資、品質向上のための研究開発など、さまざまな目的で資金調達が行われる。
シリーズBの出資額の目安は、数千万円から数十億円だ。
調達額が大きくなるため、複数のベンチャーキャピタルからの出資を検討する必要があり、補助金や助成金も引き続き活用したい。
シリーズC
シリーズCとは、黒字化し経営が安定した段階のことで、事業展開しながら上場やM&Aなどのイグジットを意識するステージだ。新規事業の創出や海外進出を視野に入れることもある。
シリーズCの出資額の目安は、数億円から数百億円だ。
調達額が大きければ、複数のベンチャーキャピタルやPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)からの出資を検討する必要がある。PEファンドとは、経営支援により企業価値を高めてからIPOで利益を得る投資ファンドのことだ。また、一部の事業を事業譲渡で買い手に売却して資金調達するという選択肢もある。
シリーズD
シリーズD とは、事業が順調で経営が安定しており、上場やM&Aなどのイグジットを目前とした段階だ。上場準備や管理体制の強化のために資金調達が必要となる。
シリーズDの出資額の目安は、数億円から数百億円だ。
資金調達の選択肢としては、ベンチャーキャピタルやPEファンドからの出資を受けるほか、上場してIPOを行って投資家から資金を集める選択肢もある。また、複数の事業を行っているならば、事業譲渡による資金調達も可能だ。