ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「鈴木財務相が140円のせで初牽制。米債務上限問題は解決。やはり貿易収支が方向を決める」

ドル円=138-143、ユーロ円=148-153、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(10位)、株価3位(3位)、鈴木財務相が140円のせで初牽制。米債務上限問題は解決。やはり貿易収支が方向を決める」
 年初来でトルコリラに抜かれ円は11位に下落。月末週となる。外貨需給タイトとなるか?人工的なデフォルトの可能性もあった米国債務上限問題は、上限が暫定的に2年間引き上げられ、来年の米国大統領選以降も暫くは市場の話題とならなくなった。
日本市場への波乱要因も一つ減った。ただまだいろいろある。G7サミットでの中国回避声明で米中関係、日中関係が悪化すること、緊迫感が増すウクライナ情勢もある。

 日本経済はゆるやかに回復し、日経平均株価も3万円にのせた。リスク選好の株買い円売りも入る。貿易需給は4月に輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったが、まだ貿易赤字が続く。1ドル140円にのせて、財務省も漸く、為替のコメントを発した。昨年は120円台から警戒のコメントを出していた。これは今後も続くだろう。

 日銀植田総裁が「持続的・安定的な2%の物価上昇」を見込めるまでは金融緩和を維持すると発言し円売りを誘った。まだ円売り材料が多く、また突発的な材料でのアップダウン多いが、趨勢は貿易収支の動向が決める。5月30日は5月上旬の貿易統計が発表される。去年に続き、円はランドやトルコと最弱グループにいることは寂しいが景気浮揚、株価浮揚には役立っている。黒田前総裁と同じく植田総裁も、配慮しながら円安のメリットを取り上げていた。物価が上がればもちろん世論は円安批判となる。

*米ドル「通貨5位(5位)、株価(NYダウ)18位(18位)、一つの足枷である債務上限問題が合意。インフレと雇用に集中できる今週」
 懸案の米国債務上限問題では上限が引き上げられ、世界経済を揺るがす可能性のあるデフォルトを回避することで暫定合意に達した。ただ最終決定ではなく上下両院で5月31日に行われる採決を経なければならない。民主共和の強硬派が反対を続けるかどうか。ただ暫定合意前も市場は大きく動揺はしていなかった。先週終値でナスダックは年初来23.97%、S&Pは9.53%高。ダウは0.16%安と弱い。週末はCFDでは米株とドル円が上昇。本日5月29日は米国市場は休場で東京の仲値の取引は原則ないが、債務上限問題合意で世界中のディーラーが東京に集合するだろう。

さて「恐怖と欲望」指数は67で欲望の範疇。アトランタGDPナウは1.9%(5/26)で、今年は景気後退、株価大幅下げとの予想もあるが、全体ではそれほど悪くはない。
 さて6月14日FOMCへ向けてのフェッドウオッチは先週末は据え置きが34.6%、0.25%利上げが65.4%で利上げが据え置きを逆転した。債務上限問題も最終合意となればFRBもインフレ対策だけに集中できるだろう。今週は5月雇用統計の発表もある。予想は非農業部門雇用者数が減少し、失業率が上昇、賃金は前月比で減少で良くないので、週末はご用心。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価5位(4位)DAX)、リセッション、インフレ低下でも利上げか?」
 ユーロ円は引き続き強いが、5月はユーロドルげ下落、ドルに追いつかれてきた。5月はここまでユーロ円は陽線、ユーロドルは陰線。先週もECBからは金融引き締め発言が続いた。その割には今週の5月消費者物価は低下予想、独は既にリセッション確定だ。 マクルーフ・アイルランド総裁は、ECBによるあと2回の追加利上げがなおあり得るが、インフレが依然として頑強なため、それ以上の利上げについては議論の余地があると述べた。クノット・オランダ中銀総裁は、少なくともあと2回の0.25%の利上げ実施する必要があると述べた。同時に、2024年初頭に利下げに転じるとの市場の予測は楽観的すぎるとの考えを示した。ナーゲル独連銀総裁は、インフレが完全に抑制されるまで、あと「数回」利上げする必要があり、その後しばらくは金利を安定させなければならないと述べた。

 一方、独の1Q・GDP改定値は前期比0.3%減と、2期連続のマイナス成長となり、リセッションに陥った。
 インフレの高進で消費が低迷し、経済全体の足を引っ張った。 購買力の低下、鉱工業受注の低迷、積極的な金融引き締めで低調な経済活動となった。今週のユーロ圏、独の5月消費者物価は7%台から6%台への低下予想だ。それでも利上げか、と疑問が生じる。

*ポンド「通貨3位(2位)、株価13位(12位)、IMFやハント英財務相も利上げ支持。小売売上は改善」
 ユーロほどではないが、今月は対ドルでやや弱い。対円では強い。4月の小売売上高は前月比0.5%増と、予想の0.3%増を上回った。2-4月の小売売上高は前期比0.8%増と、2021年8月以来の大幅な増加を記録した。インフレ圧力が続いているにもかかわらず、4月は小売売上高が驚くほど増加した。

さて、4月の消費者物価は、前年同月比で8.7%の上昇となり、予想ほどには鈍化しなかった。予想は8.2%上昇だった。コアインフレ率は31年ぶりの水準に上昇した。英中銀の追加利上げが確実視されている。 インフレが中銀の想定より根強い中、政策金利が6月に4.5%から4.75%に引き上げられるのはほぼ確実。その後数カ月も、一段の利上げがあるかもしれない。英中銀の次回の金融政策委員会は6月22日。インフレ統計発表後、市場が織り込む来月の0.25%利上げ確率は100%となり、前日の83%から上昇した。

 ハント英財務相は、英中銀の金利決定を政府は支持しなければならないとした上で、インフレ率押し下げとリセッションリスクとの間にトレードオフはないとの認識を示した。 景気後退を引き起こす可能性があったとしても、インフレ率を引き下げるために必要なことは何でもするとの中銀の方針に賛同するかとの質問に「イエスだ。最終的に、インフレは不安定要因になる」と指摘した。
 IMFは英国経済は今年、堅調な家計支出とEUとの関係改善により、景気後退を回避し、独を上回るペースで成長するとの見方を示した。インフレを適切に管理するためには、英国の金利はさらに上昇し、高水準を維持する必要があるかもしれないと述べた。

*豪ドル「通貨9位(9位)、株価15位(15位)、6月政策金利は据え置きか」
 対円では強いが、全体では年初来12通貨中8位と強くはない。豪RBAは5月の理事会で0.25%%の利上げと据え置きの両方を検討したが、インフレリスクにを考慮して利上げを決めたことが議事要旨で分かった。
「さらなる利上げが必要になる可能性がなおあるが、経済とインフレの状況次第」との見解で一致。その後の経済指標は強くないので6月は今の所、政策金利は3.85%で据え置きと予想されている。

4月の小売売上高は、前月比横ばいとなり、予想の0.2%増に届かなかった。生活費の高騰や金利上昇で食品や外食支出が減少した。冬物衣料や百貨店は増加したが、食品は0.1%、外食は0.2%それぞれ減少した。家庭用品は1%減だった。 個人消費の減速はRBAこれまでの引き締めの効果が出てきたか。5月の製造業PMIは48で横ばいであったが、サービス業PMIは前月の53.7から51.8へ、総合PMIは53から51.2へ低下した。
雇用、賃金も一服感が出てきている。

*NZドル「通貨9位(7位)、株価12位(12位)、ハト派的声明でNZドル急落。リセッション考慮」
 先週は最弱通貨に終わった。対円で1.79%安、対ドルで3.62%安となり、年初来では前週の7位から9位へ後退した。NZ中銀は5月24日、政策金利を0.25%引き上げて5.5%とした。この水準が政策金利の最終到達水準との予想を据え置き、利上げ打ち止めを示唆した。インフレ率は昨年の30年ぶり高水準から減速し、1Qは6.7%。中銀の目標レンジ(1-3%)に2年以内に到達すると予想されている。

 中銀は、政策金利が現水準の5.5%でピークを迎え、2024年半ばまで同水準にとどまると予想。「消費者物価上昇率が1-3%の目標範囲に確実に戻るようにし、持続可能な最大雇用を支援するため、政策金利は当面制約的水準にとどまる必要がある」とした。市場は 「政策金利予想の据え置きは大きなサプライズ」とし、声明は利上げ終了を示唆しており非常にハト派的と理解された。 2Qと3Qがマイナス成長になると予想しリセッションを見込んだ。 世界経済成長の鈍化で輸出品の需要が減退していると指摘。住宅関連の経済活動や支出に利上げの影響が最も顕著に見られるとの認識を示した。

 オア中銀総裁は記者会見で、金利上昇がすでに望ましい効果をもたらしている兆候があるとの認識を示した。予想より弱いGDPやインフレ率の低下に加え、国内経済の金利に敏感な部分の減速を示唆する指標など、期待していたことが既に一部実現したのは非常に喜ばしいと述べた。