アパート経営の利回りについて |
利回り 目安:都内ファミリー向け4%程度 理想ライン:4%程度 最低ライン:3%程度 |
利回りの種類と計算方法 表面利回り:年間家賃収入÷物件購入価格×100 想定利回り:満室状態の年間家賃収入÷物件購入価格×100 実質利回り:(年間家賃収入-年間経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100 |
経費率の目安:家賃収入の15~20%程度 |
目次
アパート経営を始める際、利回りをもとに物件を選定するのが一般的だ。ファミリー向けの賃貸住宅の場合、利回りの理想ラインは4%程度といわれる。またいくつか使われている利回りのうち、最終的には「実質利回り」を用いて購入を判断するのが安全だ。
ここでは、その理由や適切な経費率、利回り以外の経営指標(ROI・CCR)などについて解説する。
利回りの目安と理想ライン・最低ライン
不動産投資の利回りの目安については、識者の間でさまざまな見解がある。参考までに、ファミリー向け賃貸住宅の利回りの目安例は、次のとおりだ。
- 理想ライン:4%程度
- 最低ライン:3%程度
上記利回りの目安の根拠となるのは、日本不動産研究所の「第48回不動産投資家調査(2023年4月現在)」である。同レポートでは、ファミリー向け賃貸住宅の利回り(東京都内)は、期待利回り(※)で4%前後、取引利回りで3%後半となっている。
立地条件 | 期待利回り | 取引利回り |
---|---|---|
城南地区(目黒区、世田谷区) | 3.9% | 3.6% |
城東地区(墨田区、江東区) | 4.1% | 3.8% |
また政令都市(全20都市のうちの11都市)のファミリー向け賃貸住宅の期待利回りは、4.4~5.3%となっている。
ただし不動産投資の利回りは、以下のような諸条件で変わってくるため、注意したい。
- 利回りの種類(表面利回り、実質利回りなど)
- 物件の種類(アパート、マンション、戸建てなど)
- 規模(一棟物件、区分マンションなど)
- 構造(木造、RC造など)
- 築年数(新築、築浅、築古など)
- エリア(東京都心、首都圏、地方都市など)
そのため前述の「利回りの目安」は、参考程度にするのがよいだろう。例えば、アパート経営でいえば、低利回り傾向がある東京23区内でも表面利回り5~6%程度の物件が多数散見される。
利回りの種類と計算方法
株式投資の場合は、経費が取引手数料などごくわずかとなるため、収支シミュレーションはそこまで重要ではない。しかしさまざまな経費がかかる不動産投資の場合は、収支シミュレーションをしっかりと行ったうえで物件購入の検討をすることが極めて重要だ。
物件の収益力を見る指標の一つとして利回りがあり、不動産投資でよく使われるものには「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」などがある。
・表面利回り
年間家賃収入を物件購入価格で割った数値である。経費を含まないざっくりとした指標のため、利回りが高めに出やすい傾向だ。そのため収支シミュレーションには適していない。
<表面利回りの計算式>
年間家賃収入÷物件購入価格×100
・想定利回り
満室を想定した年間家賃収入を物件購入価格で割った数値である。通常、ある程度の部屋数や物件数を所有していれば年間を通して満室というケースは少ない。そのため現実の利回りとの差が大きくなりやすい。これを考慮すると、想定利回りは参考程度に用いるのがよいだろう。
<想定利回りの計算式>
満室状態の年間家賃収入÷物件購入価格×100
・実質利回り
不動産投資においてかかった経費も含めて計算した数値である。表面利回りや想定利回りと比較するとより現実的な利回りといえるだろう。
<実質利回りの計算式>
(年間家賃収入-年間経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100
収支シミュレーションを行う場合は、表面利回りや想定利回りだけでなく実質利回りを使って慎重に行うことが大切だ。
アパート経営の利回りに影響する要素
実質利回りに影響する要素としては、「賃料以外に得られる収入」「購入時諸経費」「年間経費」などが挙げられる。
賃料以外に得られる収入
年間の家賃収入が変わると、当然利回りも変わってくる。ここで注意したいのは、ひと口に家賃収入といっても、毎月の賃料以外の収入もある。例えばアパート経営であれば、以下のような収入も考えられる。
・管理費/共益費(毎月発生)
・駐車場料金(毎月発生)
・礼金(入居開始時のみ発生)
・更新料(更新時のみ発生)
上記のうち管理費/共益費は、共用部分(エントランスや共用スペース、廊下など)の水道光熱費やメンテナンス費として入居者から受け取る収入だ。またアパート敷地内の駐車場を有料で提供している場合は、この分の料金も毎月受け取ることができる。
購入時諸経費
実質利回りで考えると、購入時諸経費もアパート経営の利回りに影響を与えるため注意したい。計算式のほかの数値が同じなら、購入時諸経費が多くなるほど低利回りとなる。アパート経営にかかる購入時諸経費の項目は、次のとおりだ(土地所有者の場合)。
・アパートの建築費
・仲介手数料
・不動産取得税
・登記費用
・印紙税
・火災保険や地震保険の保険料 など
上記の購入時諸経費のうち最も割合が高いのは、アパートの建築費だ。建築費は、構造や延床面積、材料や人件費の相場などで変わってくる。加えて仕様や設備のグレードが高いほど建築費がかさむ。
これらを踏まえると、自身が目標とする家賃収入や利回りなどをもとに建物のグレードを考えるのが賢明だ。
年間経費(運営費用)
同様に実質利回りで考えると、年間経費もアパート経営の利回りに影響を与える。年間経費がかかるほど低利回りになる。アパート経営で利益を残すためには、年間経費を抑えることも重要である。アパート経営の年間経費の項目は、次のとおりだ。
・ローンの利息
・管理委託費
・原状回復費、大規模修繕費
・固定資産税/都市計画税
・所得税/住民税 など
なおローンの利息は、同じ金額の融資を受けても以下のような内容で毎月の金額が変わってくる。
- 借入総額
- 借入期間
- 金利
- 返済方式
- 団体信用生命保険の条件 など
経費計上に対する考え方
アパート経営で注意したいのは、「家賃収入がそのまま所得になるわけではない」ということだ。最終的には、家賃収入から諸経費を差し引いた金額が不動産所得となる。健全なアパート経営をするためには、経費として計上できるもの・できないものをオーナーが把握しておく必要があるだろう。
経費として計上できるもの | 減価償却費、ローンの利息、火災保険や地震保険などの保険料、固定資産税・都市計画税などの税金、共用部の諸費用、入居者募集の費用、修繕費、専門家への報酬、青色事業専従者給与、委託管理費など |
経費として計上できないもの | ローンの元本、所得税・住民税などの税金、アパート経営に直接関係ない飲食費・旅費・交通費・車両費など |
アパート経営の経費として計上できるものであれば、原則計上できる金額に上限はない。ただし適切な経営という観点では、家賃収入に対して過度な経費計上は望ましくない。その目安となるのが次項で紹介する経費率である。
経費率の目安はどれくらい?計算する方法
アパート経営を行う場合、経費率はどれくらいを目安にすればよいのだろうか。経費率とは、家賃収入に占める年間経費の割合のことだ。計算式は「年間経費÷年間家賃収入×100」である。
経費率の一般的な水準は、家賃収入の15~20%程度が目安といわれているが、年間家賃収入の水準によっても大きく異なる。例えば年間諸経費が同じ100万円の場合、年間家賃収入が400万円(経費率25%)の物件よりは500万円(経費率20%)の物件のほうが経費率は低い。
例えば、共益部分の電気代は、電力会社が一緒ならば駅歩5分の物件でも駅歩15分の物件でも単価は同じである。駅に近いからといって電気代が高くなるわけではない。そうなると高い家賃収入を期待できる好立地物件ほど経費率を低く抑えられることになる。
経費率を下げるためにできること
購入後、キャッシュフローを高めるためにやるべき対策はいろいろある。それらを全て行ったうえで、最終的に経費率に目を向けたい。
経費率を下げるためには、以下のような施策を心がけると良いだろう。ただし、それぞれにメリットと注意点があるため、効果を見極めたうえで実行することが必要だ。
ローンを借り換える(支払い利息の減少)
支払利息を減らすためにローンの借り換えを行うことは、スタンダードな施策である。金利が1%下がるとどれくらい利息が減るのかシミュレーションしてみよう。
【計算例】借入額5,000万円、元利均等払い、返済期間35年、当初金利2.5%、10年経過後に1.5%で借り換えた場合と借り換えない場合の比較
毎月返済額 | 返済総額 | 利息総額 | |
---|---|---|---|
借り換えなし | 17万8,747円 | 7,507万3,795円 | 2,507万3,795円 |
借り換えあり | 15万9,351円 | 6,925万4,880円 | 1,925万4,880円 |
差額 | 1万9,396円 | 581万8,915円 | 581万8,915円 |
金利が1%低いローンに借り換えると11年目以降は毎月の返済額が約2万円減る。つまり経費になる利息部分が大きく減るため、経費率改善につながる効果は大きい。
ただしこの方法は「ローンの残債が相当ある」「金利が1%以上下がる」といった条件が前提となる。そのため「ローンの残債が少ない」「金利差がわずか」というケースで借り換えても借り換え時にかかる諸経費(司法書士、繰り上げ返済手数料、事務手数料等)のほうが高くなってしまい、メリットが生まれない可能性があるため、注意したい。
保険の内容を見直す(保険料の減少)
保険には、さまざまなオプションがあり補償内容を厚くすることも可能である。なかには「物件購入時に経費率への意識が低く手厚い補償を付けてしまったが、経営を続けていくうちに不要と思えるオプションが見つかった」というケースもあるかもしれない。保険は定期的に補償内容を見直すことで保険料を削減できる場合がある。
ただし保険は、万一のリスクに備えるために加入するものだ。過度な保険料の削減で補償内容が薄くなってしまうと災害に遭ったとき不足分を自腹でまかなうことになりかねない。そのため、あくまでもリスクをきちんとカバーできる補償は残しておくことが大切だ。
管理委託費の安い管理会社に変える(手数料の減少)
不動産管理会社に支払う管理委託費は、家賃の5%程度が相場だ。例えば1ヵ月の家賃が5万円、部屋数8室のアパートであれば毎月約2万円(40万円×約5%)の手数料がかかり、年間では24万円の出費となる。これを手数料3%の会社に変えることができれば、年間9万6,000円の経費削減が可能だ。ただし費用が安くなる分、サービスの質が悪化する可能性があることも考慮しておきたい。
例えば管理委託費が安いことを売りにするために、人件費の削減から少人数の営業部員で業務を行っている会社もあるだろう。通常は問題ないかもしれないが「空室が出た場合に人手不足から熱心に対応してくれない」という事態も考えられる。
もし空室が3ヵ月続いた場合は、空室損が1室あたり15万円となり、次の入居者から礼金5万円(1ヵ月分)を受け取ったとしても、マイナス10万円で手数料の削減分が相殺になってしまう。
より精度を高めるならROI・CCRで計算しよう
さまざまな利回りに他の指標を組み合わせることで、より高い精度で投資効率を判断できる。ここでは、アパート経営の投資効率を計る際に用いられる指標のROIとCCRについて解説する。
ROI:投資利益率
アパート経営に役立つ指標の1つ目は、ROI(Return On Investment:投資利益率)だ。不動産投資におけるROIは、「投資額(物件価格と購入時諸経費)に対してどれだけの利益を挙げられたか」を示す指標である。ROIが高いほど投資効率がよいと判断できる。
<ROIの計算式>
ROI(%)=手残り(利益)÷投資額(物件価格と購入時諸経費)×100
上記のようにROIの計算式自体は、シンプルなものだ。しかしROIを実際に出すときは「手残り」を計算しなければならない。はじめにアパート経営で発生する所得税・住民税を割り出し、それを用いて手残りを計算する。
- 所得税・住民税=(年間の家賃収入-諸経費-減価償却費・ローン利息)×税率
- 手残り=年間家賃収入-諸経費-ローン返済額-所得税・住民税
CCR:自己資本資金回収率
アパート経営に役立つ指標の2つ目は、CCR(Cash on Cash Return:自己資本回収率)だ。CCRは、物件購入に要した自己資金に対する年間キャッシュフローの割合を示す指標である。CCRを計算することで、自己資金における回収期間の目安の確認が可能だ。CCRが高いほど、短期間で自己資金が回収できると判断できる。
<CCRの計算式>
CCR(%)=年間キャッシュフロー÷自己資金×100
例えば年間キャッシュフローが200万円で物件購入に要した自己資金が2,000万円の場合、CCRは10%となる。つまり10年間で自己資金が回収できる計算だ。なおキャッシュフローとは、投資で生み出した使える現金の総額のことを指す。家賃収入から、諸経費、ローン返済額(元本+利息)、税金を差し引いて計算する。
<キャッシュフローの計算式>
キャッシュフロー(円)=家賃収入-(諸経費+ローン返済額+税金)
アパート経営の利回りを計算するときの5つの注意点
冒頭で紹介したように、表面利回りを見ただけで「経営効率の良し悪し」を簡単に判断すべきではない。次の5つの注意点に留意しながら実質利回りを計算し、有効活用しよう。
物件を絞り込んだら、実質利回りを算出する
表面利回りは、複数の物件を比較するときなどに便利な指標だ。しかし物件価格における年間家賃収入の割合を算出しただけの指標のため、実際のアパート経営による利回りとのギャップがある。そのため物件をある程度絞り込んだ状態や買付申し込みを入れる前段階では、実質利回りを算出して検討するのが安全だ。
実質利回りは、購入時諸経費や年間経費が反映されているため、実際のアパート経営に近い数値が出る。とはいえ不動産投資初心者の場合は、「購入時諸経費や年間経費を計算するのが難しい」というケースもあるかもしれない。その場合は、以下を目安に計算するとよいだろう。
・購入時諸経費:物件価格の7~10%程度
・年間経費:年間家賃収入の20~25%程度
修繕費を反映させて計算する
アパート経営の実質利回りを計算する際は、修繕費を年間経費に反映させることも大事だ。アパート経営では、10~15年程度に1回のペースで屋根や外壁の全面塗り替え・補修、防水処理、住宅設備の交換などの大規模修繕が必要となる。あわせて、その都度こまめな修繕に対応していかなければならない。
通常、大規模修繕やこまめな修繕の経費は、家賃収入の一部を積み立てたお金でまかなう。しかし積立金額が不十分だったり修繕費用の予測が甘かったりすると、必要なお金が足りなくなってしまうため注意したい。
例えば木造アパート(10戸/1K)を経営していて、30年間で必要となる修繕費は次のとおりだ。
・一戸あたり:約174万円
・一棟あたり:約1,740万円
空室率の上昇を想定して計算する
アパート経営の利回りは、満室を想定して計算されているケースも多い。満室を想定した利回りで収支を考えてしまうと現実との大きなギャップが生まれやすい。これを避けるため、現実的な空室率に基づき、年間家賃収入を自身で計算することが必要だ。
空室率をどれくらいに設定するのが妥当かについては、ケースバイケースだろう。以下の要素で空室率が変わってくる。
- 立地
- 物件のタイプ
- 築年数
- 住宅設備の充実度
- 設定家賃 など
参考までに公益財団法人日本賃貸住宅管理協会のレポートを参考にすると、各エリアの平均空室率(入居率)は次のとおりだ。
エリア | 入居率 | 空室率 |
首都圏 | 94.6% | 5.4% |
関西圏 | 95.4% | 4.6% |
その他 | 92.6% | 7.4% |
全国 | 93.6% | 6.4% |
なお空室率は、以下の計算式で算出できる。
<空室率の計算式>
空室率(%)=(空室部屋数×平均空室期間〈月数〉)÷(総部屋数×12ヵ月)×100
例えば全12室のアパートで空室が3部屋発生し、入居が決まるまでの平均空室期間が3ヵ月なら空室率は6.25%となる。年間家賃収入からこの空室率の分を割り引いて利回りを計算することが必要だ。
<空室率の計算例>
空室率6.25%=(空室部屋数3×平均空室期間3ヵ月)÷(総部屋数12×12ヵ月)×100
金利上昇を想定して計算する
アパート経営の実質利回りの計算式における「年間経費」には、不動産投資ローンの金利も含まれる。金利が上昇すると実質利回りが低くなるため、何パターンかの金利であらかじめ試算してみよう。
2023年4月の日銀総裁が交代以降、低金利が長く続いた日本でも金利上昇の可能性が取り沙汰されている。そのため今後は、金利上昇リスクに備えることが必要だ。
試算をする際に大事なことは、金利がある程度上昇しても「目標とするキャッシュフローや利回りを確保できるか」を確認することだ。例えば不動産投資ローンで5,000万円を返済期間20年で借りた場合、金利によって返済額が以下のように変わってくる。
金利 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
---|---|---|
3.5% | 28万9,979円 | 347万9,748円 |
4% | 30万2,990円 | 363万5,880円 |
4.5% | 31万6,324円 | 379万5,888円 |
なお不動産投資ローンの利回りは、一定期間固定金利特約型もある。しかしこれは、あくまでも一定期間が「固定金利」で、その後「変動金利」へ移行するものだ。この場合、計算が少々複雑になるため、金融機関に返済額の推移を試算するほうがよいだろう。
家賃下落を想定して計算する
アパート経営の実質利回りは、「直近の年間家賃収入をもとに計算する」ことが大半だろう。しかし現実のアパート経営では、築年数が経つほど家賃が下落していくため、これを想定して実質利回りを計算するほうが賢明だ。
総務省のレポート「借家家賃の経年変化について」によると、アパート(木造共同住宅)の家賃は年率0.86%のペースで下落していく(クロスセクション分析の結果)。仮に1年目の年間家賃収入が600万円だとして家賃が年率1%下落した場合、将来の年間家賃収入は次のように変化する。
経過年数 | 家賃収入 | 1年目との金額差 |
10年後 | 546万円 | 14万円 |
20年後 | 486万円 | 114万円 |
10年後、20年後……などの家賃収入をもとに、実質利回りがどのように変化していくかを確認するのがよいだろう。
アパート経営で利益を出すコツ
アパート経営で利益を出す(利回りを高める)ための鉄則は、「家賃収入を増やし、諸経費を抑えること」だ。これは簡単そうだが、実際には難しいことである。仮に収入を増やして諸経費を抑えることに成功しても、空室率が高まったり修繕費が増大したりといった理由で持続できないケースも多い。
また諸経費を抑えることは実現しても、家賃収入が落ち込んでしまい思ったように利益が出ないケースもある。そのため、あくまでも家賃収入と諸経費のバランスを見ながら長期的に利益を出す(安定的な利回りを実現すること)が大事だ。
アパート経営で利益を出すためのチェックポイントには、以下のようなものがある。
<家賃収入増を実現するためのチェック項目>
・入居率が高まるように万全の空室対策を行っているか?
・長く入居してもらえるように適切な修繕・設備交換を行っているか?
・入居者満足度が高まるように支持される設備を導入しているか?
<諸経費を抑えるためのチェック項目>
・不動産投資ローンの金利が低い金融機関を探したか?
・節税を意識し過ぎてムダな経費を算入していないか?
・漏れなく経費を計上しているか?
アパート経営の利回りをシミュレーション
アパート経営の利回りをいくつかの比較条件でシミュレーションしてみよう。
新築アパートと中古アパートの利回りの違い
新築物件か中古物件かで迷っている人は、両者の利回りを比較してみるのも一案だ。一例として、横浜市内の新築アパートと中古アパート(築17年)の利回りを比較すると以下のような差になった。
建物の種類 | 表面利回り | 実質利回り |
---|---|---|
新築アパート | 約6.92% | 約4.72% |
中古アパート | 約7.24% | 約4.99% |
上記2物件の場合では、表面利回りと実質利回りの差は2%以上開いている。やはり表面利回りだけでなく、実質利回りを計算してアパート経営をするか否かを判断するのが賢明だ。なお上記の利回りを計算する際の「設定条件」や「計算詳細」は、次のとおりである。
<設定条件>
・所在地:神奈川県横浜市
・構造:木造
・築年数:新築
・想定空室率:95%
<新築アパートの利回り計算内容>
・表面利回り
年間家賃収入630万円÷物件価格9,100万円×100
=表面利回り約6.92%
・実質利回り
(年間家賃収入630万円-年間経費170万円)÷(物件価格9,100万円+購入時諸経費640万円)×100
=実質利回り約4.72%
<中古アパートの利回り計算内容>
・表面利回り
年間家賃収入420万円÷物件価格5,800万円×100
=表面利回り約7.24%
・実質利回り
(年間家賃収入420万円-年間経費110万円)÷(物件価格5,800万円+購入時諸経費410万円)×100
=実質利回り約4.99%
都心アパートと地方アパートの利回りの違い
投資エリアで迷っている人は、候補物件の利回りを比較する方法もある。例えば「東京都新宿区」「大阪府大阪市」「神奈川県横浜市」のアパートの利回りを比較すると、以下のような結果になった。
エリア | 表面利回り | 実質利回り |
---|---|---|
新宿区アパート | 約4.44% | 約3.04% |
大阪市アパート | 約6.73% | 約4.58% |
横浜市アパート | 約7.95% | 約5.27% |
<設定条件>
・所在地:東京都新宿区、神奈川県横浜市、大阪府大阪市
・構造:木造
・築年数:10年程度
・想定空室率:95%
<新宿区アパートの利回り計算内容>
・表面利回り
年間家賃収入790万円÷物件価格1億7,800万円×100
=表面利回り約4.44%
・実質利回り
(年間家賃収入790万円-年間経費210万円)÷(物件価格1億7,800万円+購入時諸経費1,250万円)×100
=実質利回り約3.04%
<大阪市アパートの利回り計算内容>
・表面利回り
年間家賃収入660万円÷物件価格9,800万円×100
=表面利回り約6.73%
・実質利回り
(年間家賃収入660万円-年間経費180万円)÷(物件価格9,800万円+購入時諸経費690万円)×100
=実質利回り約4.58%
<横浜市アパートの利回り計算内容>
・表面利回り
年間家賃収入620万円÷物件価格7,800万円×100
=表面利回り約7.95%
・実質利回り
(年間家賃収入590万円-年間経費150万円)÷(物件価格7,800万円+購入時諸経費550万円)×100
=実質利回り約5.27%
アパート経営を始めるまでのステップ
アパート経営を始めるまでのステップは、土地を所有しているか否かで変わってくる。土地を所有している人は、土地の選定や購入のステップを割愛できる。この場合のステップは、次のとおりだ。
1.事業計画を立てる
2.金融機関に融資を相談、申し込む
※1と2を併行して行うケースもある。
3.新築の建て売りアパートを買う、あるいは中古アパートを買う
4.建築業者を検討する
5.建築業者と請負契約を交わす
6.工事着工~完成(不動産登記)
7.管理方式を選択する
8.入居者募集をする
9.入居者と賃貸借契約を交わす
上記のように、まずは「事業計画を立てること」が1つ目のステップになる。信頼性の高い事業計画(融資戦略)を立てなければ、アパート経営を始めることは難しい。金融機関の審査では、事業計画の内容や土地の資産価値、オーナーの属性などをもとに融資の可否を検討する。
アパート経営のよくある失敗事例
これからアパート経営を始める人は、失敗事例を知ることも大事だ。なぜなら、これにより事前の対策を意識・実行しやすくなるからだ。不動産投資家とのコミュニケーションや、彼らが発信する情報を通して、失敗事例に触れる機会を増やすよう心がけよう。
例えば、よくある失敗事例には次のようなケースがある。
・空室が埋まらないケース
地主の人は、建築業者などに「相続対策になる」といった理由でアパート経営を勧められることも多いだろう。しかし実際にアパート経営を始めてみると空室が目立ち、事業計画で想定していた家賃収入が得られないこともある。
こうなるとオーナーの手持ちのお金で赤字分を埋めていくしかない。このような失敗をしないためには、まず所有地に「賃貸ニーズがあるか」を確かめる必要がある。また「賃貸ニーズがあり」と判断してアパート経営をする場合でも「住宅設備を充実させる」「集客力のある仲介会社を選ぶ」などの空室対策は欠かせない。
・入居者同士のトラブルが発生したケース
適切な空室対策をしていても、入居者同士のトラブルによって退去が相次ぎ、空室率が高まってしまう失敗ケースもある。トラブルの原因は、さまざまだが「生活音がうるさいこと」が対立のきっかけになるケースが多い。
騒音トラブルを防ぐには、アパートを遮音性の高い設計にしたり、トラブル対応のノウハウを持つ管理会社に業務を委託したりするなどが有効だ。
・予期せぬ修繕費が発生したケース
アパート経営では、その都度発生する修繕や将来の大規模修繕に備えて利益の一部を積み立てていくことが重要だ。しかし修繕費を積み立てていても、想定以上の修繕費が発生してキャッシュフローが厳しくなるケースもある。
例えば建物の施工不良や台風・豪雨など自然災害による建物の被害だ。この場合、「評判の良い建築会社を選択する」「自然災害を補償する保険(火災保険のオプション)に加入する」といった対策が効果的である。
アパート経営の利回りに関するQ&A
Q.アパート経営の利回りの平均は?
一般的にアパート経営の利回りの平均は、8%程度(表面利回り)といわれる。ただし利回りとひと口にいっても表面利回りと実質利回りでは、数値が変わってくる点に注意が必要だ(実質利回りは諸経費が反映されるため2%~程度低くなる)。
またアパート経営の平均利回りは、エリアによっても変わってくる。一般的に首都圏は平均利回りが低く、地方圏は平均利回りが高い傾向がある。
Q.アパート経営の理想的な利回りは?
日本不動産研究所が公表している「不動産投資家調査(2023年4月現在)」によるとファミリー向けの賃貸住宅の理想的な利回りの目安は「4%程度」だった。しかしアパート経営の理想的な利回りは、エリアや物件タイプ、築年数などによっても変わってくる。
このことを踏まえると理想的な利回りの目安にこだわり過ぎず、競合物件や自身が目標とする家賃収入などをもとに理想とする利回りを設定するのがよいだろう。
Q.アパート経営 何年で黒字になる?
アパート経営で黒字に転換するまで(投資したお金を回収するまで)の年数の目安は「10年程度」といわれる。しかし黒字に転換するまでの目安となる期間は「土地を所有しているか」「新築物件か中古物件か」「エリアの競合状態(空室率)はどうか」などによって変わってくる。
投資資金を回収することを焦らず、長期的な視点で事業計画(融資計画)をチェックすることが重要だ。
Q.アパート経営者の年収はいくら?
国税庁の「令和3年分申告所得税標本調査」によると、2021年度におけるアパートやマンションを経営する人などの不動産所得者の平均所得金額は542万7,000円である。ここでいう所得金額とは、「家賃収入-諸費用」で計算した不動産所得を指す。
不動産所得者といっても、区分マンションのオーナーや小規模アパートの経営者なども含まれる。複数のアパートを所有している経営者であれば、平均よりも高額の年収を得ているケースもあるだろう。
宮路 幸人
会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
(提供:manabu不動産投資 )
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