富裕層と呼ばれる人たちは、一般層とは異なる資産運用に取り組んでいることがあります。例としては不動産やヘッジファンドへの投資がありますが、「プライベートバンク」の利用もその一つでしょう。

本記事ではプライベートバンクが提供しているサービスや、利用条件などの概要をまとめました。富裕層ならではの資産運用をチェックし、投資の考え方や選択肢を広げていきましょう。

プライベートバンクとは

富裕層御用達のプライベートバンクとは?気になる顧客層や利用条件
(画像=domoskanonos/stock.adobe.com)

プライベートバンクとは、一定以上の資産をもつ富裕層を対象にした銀行です。通常の銀行でよく見られる預金サービスの他、投資などの資産管理サービスを提供しています。

一方で、不特定多数(主に富裕層未満)の顧客にサービス提供をする銀行などは、「マスリテール」と呼ばれています。

顧客層

野村資本市場研究所のレポート(※)によると、プライベートバンクの顧客層は以下の3つに分けられます。

(※)1998年に出版された、「個人マーケット 注目集めるプライベート・バンキング」の一部。

<プライベートバンクの顧客層>
1.特に資産規模が大きく、資産保全を最優先に運用したいと考えている富裕層
2.資産規模が大きく、高いパフォーマンスでの積極的な運用を目指している富裕層
3.ストックオプションの行使などにより、富裕層の仲間入りを目指している層

プライベートバンクは規模が大きいほど、顧客層も広がる傾向にあります。例えば、中堅以上のプライベートバンクは新規顧客の獲得に積極的ですが、小規模なプライベートバンクには古くからの顧客が多く、企業オーナーなどはほとんどいないと言われています。

提供サービス

一般的なプライベートバンクでは、以下のようなサービスが提供されています。

<プライベートバンクのサービス例>
・証券や信託、保険などを対象にした資産運用
・不動産管理
・税務に関するアドバイス

プライベートバンクは資金管理だけではなく、安定的に資産を運用するためのサービスも提供しています。また、事業承継や遺産相続に関するアドバイスなど、税務関連のサービスを提供している銀行もあります。

なお、企業オーナーが少ない小規模なプライベートバンクでは、事業者への融資や投資銀行業務などは提供されていません。

プライベートバンクの利用条件

プライベートバンクの利用条件は、「不動産を除く保有資産が1億円以上」または「金融資産が100万ドル以上」が一つの目安です。ただし、銀行によって基準は異なり、数億円~数十億円の保有資産が基準になっていることもあります。

また、新規顧客の獲得に消極的なプライベートバンクでは、既存顧客や税理士などからの紹介が必要になるケースも見られます。

プライベートバンクの種類

プライベートバンクは規模や業務体制によって、「大規模なプライベートバンク」「中堅銀行のプライベートバンク」「小規模なプライベートバンク」の3つに分けられます。

<大規模なプライベートバンクの特徴>
・従業員数が多く、世界中に支店を構えている
・顧客層の幅が広い
・新規顧客の獲得に積極的
・機関投資家向けのアセットマネジメントを行っている
・中小企業に事業貸付を行う銀行も多い

<中堅銀行のプライベートバンクの特徴>
・大規模なプライベートバンクに比べると、従業員数や支店数がやや少ない
・富裕層を目指す層も顧客に含まれる
・新規顧客の獲得に積極的
・機関投資家向けのアセットマネジメントを行っている
・事業貸付を行っているものの、積極的ではない

<小規模なプライベートバンクの特徴>
・従業員数や支店数が少ない
・安定志向の強い富裕層が中心
・新規顧客の獲得に消極的
・機関投資家向けのアセットマネジメントは行っていない
・企業オーナーがいないため、事業貸付を行っていない

上記の他、プライベートバンクは種類によって運用体制も異なります。例えば、大規模なプライベートバンクは投資信託などの運用にあたって、自社のファンドマネージャーを担当者にする傾向が見られます。一方で、小規模なプライベートバンクは自社だけの運用に固執しておらず、外部のマネジメント会社を利用することもあります。

なお、上記の特徴はあくまで傾向であり、全てのプライベートバンクに該当するわけではありません。

プライベートバンクの歴史

プライベートバンクの形態は、11世紀のスイスで発祥したと言われています。もともとは秘匿性の高い決済・貸付のサービスが中心でしたが、1990年以降に富裕層のニーズが多様化した影響で、資産運用や税務などに関するサービスも提供されるようになりました。

現在では銀行業務の範疇を超えているため、プライベートバンクのサービスは「ウェルスマネジメント」と呼ばれることもあります。日本では、1986年に米国の銀行がプライベートバンキング業務を始めましたが、1996年の規制緩和後(金融ビッグバン)からは国内大手銀行も参入しています。

プライベートバンクは幅広いサービスを提供している

プライベートバンクは、一定以上の資産をもつ富裕層に向けて、資産管理に役立つ幅広いサービスを提供しています。銀行によっては厳しい利用条件があるので、これらのサービスは富裕層の特権の一つと言えるかもしれません。

これから富裕層を目指す人、すでにある程度の資産形成に成功している人は、プライベートバンクの利用も視野に入れてみましょう。

※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road