外為マーケットレポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

FRB.は市場との対話をより重要視すると言われており(何処かの中央銀行とは大分違う…)、
往々にして彼らの意向を直接自分の口で表さずに新聞やメディアにリークして市場の反応
を見る事が多々ある。

現在では経済専門紙のウォールストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者をあた
かもスポークスマンの様に利用している感が有り、彼の言う事はよく当たると言われてい
る。

先週の金曜日に発表になった注目の5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の+
19万人を大きく上回る+33万9千人となったが、平均時給の伸びは前月比で+0.3%、前
年比で+4.3%と前月の各々+0.5%、+4.4%から鈍化し、また失業率も前月の3.4%から3
.7%へと悪化した。

数字としてはまちまちの結果だったと言えるのであろうが、市場は来週開催のFOMC.では利上げ据え置きで7月のFOMC.で利上げ再開の可能性が有ると見た様である。

そこで前述のニック・ティミラオス記者の登場であるが、彼は“金曜日に発表された相反する結果となった雇用統計の数字は、6月のFOMC.においてゲーム・チェンジャーにはならないだろう。ただそれは利上げの一時停止(Pause.)ではなく、スキップ=飛ばす(Skip.)となる可能性が高まったことを明確にしている。”と述べた。
要するに良い数字(非農業部門雇用者数の増加)と悪い数字(鈍化した時給の伸びと悪化した失業率)が出た先週の5月の米国雇用統計は利上げ停止、或いは利上継続を確証させる程の事も無く、来週のFOMC.では取り敢えず利上げをPause.してデータ次第では(Data
Dependent.)7月から利上げ再開も有り得ると言う事なのであろう。

何だか分かった様な、分からない様な釈然としない解説となったがドル・円相場は買いで反応して発表前の138円台ミドルから再び140円台を回復することとなった。

しかし何と言ってもドル・円の上昇を助長しているのは日経平均株価の上昇であろう。

金曜日もシカゴの先物市場でニューヨーク株式市場の3指数の上昇につられる形で東京市場の終値31,524円を大きく上回る31,800円台で取引され、週明けの東京市場では33年ぶりの高値となる32,000円台を回復している。

日経平均株価上昇でリスク・オン(投資家がリスクを取る事を好む。)となって円が売られ、また海外投資家が為替リスクヘッジの為に先物の円を売っているので、こちらもドル高&円安を助長している。

では日経平均株価上昇と共にドル・円相場がどんどん上昇するかと言えば、そんなことはあるまい。

先々週鈴木財務相が“為替相場はファンダメンタルズを反映すべきであり、現在の為替相場を注視している。”と述べ、また5月30日には財務省、金融庁、そして日銀が国際金融資本市場に関する情報交換会(3者会合)を開催した為に当局による為替介入に対する警戒感が頭をもたげて来た。

約24年ぶりのドル売り&円買い介入に動いた昨年9月もその前にこの3者会談が開かれており、140円を超えるドル高&円安の進行に対して当局が神経質になっていることが計り知れる。

直ちに介入が出るとも思えないが、140円台を超えてからの野放図なドル買いは止めておいた方が良いかも知れない。

日米両金融当局のスタンスがもう少し明確になるまでは売ったものは買い戻し、買ったものは売り戻すと言う弾力的なトレードを心掛けたい。


今週のテクニカル分析の見立てはドルの買われ過ぎに注意。
先週の安値138.39を下切れば136円台への下落も有り得ると見る。